砂質土の定圧一面せん断試験における供試体高さと強度

第 35 回地盤工学研究発表会 , pp. 825∼826, 2000.6
砂質土の定圧一面せん断試験における供試体高さと強度・変形特性
大阪市立大学工学部 正 大島昭彦 高田直俊
同 大学院 学 ○池田靖宏
まえがき 一面せん断 試験は,一次元圧密・ 平面ひずみ条件の下で, せん断面上の応力を直 接測定するため,実用 的
に優れた試験法である。 しかし,せん断変形の 不均一性が強度に与える 影響,およびそれによ ってひずみの定義がで き
ない問題点が残っている 。この問題に対して, 前報で,砂質土の定圧一 面せん断試験における 供試体は上下せん断箱 の
1)
隙間の大きさによらず,レンズ状にすべり面が生じて不均一な変形となる が,レンズ状の変形領域の最大高さを基にせ
2)
ん断ひずみを定義すれば,単純せん断試験による応力−ひずみ関係とほぼ一致することを示した 。しかし,前報では一
つの供試体寸法(直径 120×高さ 40mm)に対してのものであり,供試体高さが変わった場合にもそれが成立するかどう
か確かめる必要がある。ここでは「真の定圧」条件で供試体高さを 10∼80mm に変えてせん断し,供試体変形を測定し
た試験と同条件の単純せん断試験を行い,供試体高さと強度・変形特性の関係および単純せん断との比較を報告する。
実験方法 試料は,三隅砂(島根 県三隅町で採取した海砂,Dmax = 0.425,D50 = 0.17mm ,
ガイド板
φ8mmパイプ
Fc = 5.8%,ρdmax = 1.52g/cm ,ρdmin = 1.28g/cm )を用いた。一面せん断試験機は,供試体 直
3
3
径φ 120 mm,下面垂直力載 荷・上箱可動型で, 上箱の反力板側でせ ん断面上の垂直応力 を
直接測定できるものである。供試体高さ H は 10,20,30,40,60,80mm の 6 種類に設定
した。せん断は反力板側垂直応力σU が一定になるように加圧板側垂直応力σL を制御する真
の定圧条件で行っ た。また,定圧一 面せん断試験結果 と比較するために ,定圧単純せん 断
2)
試験 (供試体寸法:φ 12 0 ×H40mm)も行った。
H
φ120mm
<側面図>
供試体は wopt = 19%の試料を締固め法によって作製した。ただし,供試体の内部変形を見
るために,図-1 に示すように供試体中央部にガイド板を用いてパイプを設置した後,周り
に試料を入れて供試体直径に等しい半円底板を持つランマー(質量 1.25kg)で締固め,そ
の後パイプ内に同 一試料を油性イン クで着色した色砂 を入れ,同一密度 になるように突 き
棒で突固めて作製した。供試体密度は圧密後の相対密度 Drc = 25,75%の 2 種類に設定した。
圧密応力σc = 1kgf/cm2,上下せん断箱の隙間 d= 0.5mm である。
16mm
<できあがり上面図>
図-1 色砂柱の設置方法
実験 結 果と 考 察 写真 -1 に代 表 例と し て, Drc = 75%,
H= 40mm において最終せん断変位δ = 16mm までせん断した
後に,色砂柱位置の中央部を鉛直に切り出して撮影した変 形
状態を示した。すべり面が供試体の左右の端部からレンズ 状
に生じており,供試体全体としては不均一な変形になって い
る。各試験条件ともこのような写真から外形,色砂柱の境 界
写真-1 供試体中央部の変形状態(Drc =75%, Η =40mm)
をトレースして供試体中央部の変形状態を捉えた。
図-2 に Drc = 75%における H= 10,20,30,40,60,80mm の応力−変位関係を示した。図には同じ密度の単純せん断
試験(H= 40mm)の結果も示した。Drc = 75%では正のダイレイタンシーを示すため,τ −δ 関係は各 H ともτ にピークが生
じている。H= 10,20mm のピーク強度はやや小さいが,H= 30mm 以上ではほぼ一致している。∆ H−δ 関係は H が大きく
なるにつれて膨張量が大きくなるが,H= 40mm 以上ではほぼ収束している。単純は一面に比べてτ −δ 関係の立ち上がり
が緩く,ピーク強度を発揮する変位が大きく,∆ H の膨張量はかなり大きいため,単純の応力−変位関係は一面とかなり
異なるが,ピーク強度は一面(H= 30mm 以上)と大差ない。図-3 にそれぞれの H におけるせん断終了時の供試体中央
部の変形状態を示した。図は変形が生じる領域を点線で示し,その最大高さを H'(mm)として示している。いずれもレン
ズ状に変形領域が生じているが,H=10mm では供試体の上面,下面付近までせん断面が生じている(H'=9mm)
。H が大
きくなると変形領域は広くなるが,H= 40mm 以上ではあまり変わらず,H'=14mm 程度となる。
図-4 に Drc = 25%における H= 10,20,30,40,60,80mm の応力−変位関係を示した。Drc = 25%では負のダイレイタ
ンシーを示すため,τ −δ 関係は各 H ともτ に明確なピークが生じていない。τ −δ 関係の立ち上がりは H が大きいほど緩
い傾向が見られるが,ピーク強度は各 H ともほぼ一致している。∆ H−δ 関係は H が大きくなるにつれて収縮量が大きく
なり,収束傾向は見られない。同図に示した単純はやはり一面に比べてτ −δ 関係の立ち上がりが緩く,同じδ に対して τ
はかなり小さく,応力−変位関係はかなり異なるが,最終せん断変位δ = 16mm での強度はほぼ一面と一致している。図
-5 にそれぞれの H におけるせん断終了時の供試体中央部の変形状態を示した。Drc =75%に比べてレンズ状の変形領域
Effect of specimen height to strength and deformation characteristics of sandy soil on constant pressure direct box shear test
Akihiko Oshima, Naotoshi Takada and Yasuhiro Ikeda (Osaka City University)
1.0
H (mm)
10
20
30
40
60
80
単純
0.6
0.4
(2) H=20mm
8
δ (mm)
12
(3) H=30mm
1
H'=14
H'=14
0
σ c=1kgf/cm 2 , φ =120mm
4
(5) H=60mm
H'=12
∆H – δ
0.2
0
H'=14
H'=10
∆ H (mm)
τ (kgf/cm2 )
0.8
0
AAAAAA
AAAA
AAAA
AAAAA
A AAAA
AAAA
AAA
AAAAAA
AAA
AAAAA
AA
AAAA
AAAAAA
AAAAAAA
AAAAAAA
AAAA
AA
AAAAA
AAAAA
AAAA
AAAAA
AA
AAAA
AAAA
AAAA
AAA
AAAA
AAAAA
AAAA
AAAA
AAAA
A
A
AA
AAAAA
AAAA
AAAAAA
AA
AAAAAA
AAAAA
A
AA
AAA
AAAA
AAAAAA
AAAAA
AAAA
AAAAA
AAA
AAAAA
AAAA
AAAAAA
AAAAAAAAA
AAAA
AAA
AAAAAA
AAAA
AAA
AAA
AAAA
A
AA
A AA
AAAA
AAAA
AA
AAAA
AAAA
AA
A
AAA
AAAA
AAA
AAAAAA
AAAAAA
AAA
AAAA
H'=9
(1) H=10mm
τ –δ
16
(4) H=40mm
(6) H=80mm
図-2 Drc = 75%の応力−変位関係 図-3 Drc = 75%の供試体中央部の変形状態 (δ =16mm)
1.0
H'=9
σ c=1kgf/cm 2 , φ =120mm
H'=13
τ –δ
H'=10
(2) H=20mm
0.6
H (mm)
10
20
30
40
60
80
単純
0.4
0.2
(5) H=60mm
H'=12
∆H – δ
0
0
4
8
δ (mm)
(3) H=30mm
1
∆ H (mm)
τ (kgf/cm2 )
0.8
(1) H=10mm
H'=14
H'=13
0
12
16
(6) H=80mm
(4) H=40mm
図-4 Drc = 25%の応力−変位関係 図-5 Drc = 25%の供試体中央部の変形状態 (δ =16mm)
1.0
1.0
τ –γ
体が収 縮する ためと 考えら れる。 や
0.8
H'=13∼14mm 程度となっている。
H (mm)
10
20
30
40
60
80
単純
0.6
0.4
以上の 結果か ら,一 面と単 純の 違
いは変 形領域 による ものと 考え, 一
面における変形領域の最大高さ H' を
基に,せん断ひずみをγ = δ /H',垂直
ひずみを ε = ∆ H/H'で定義 した(単 純
0.2
0
τ –γ
τ (kgf/cm2 )
H= 40mm 以上ではあまり変わらず,
0.8
ε –γ
σ c=1kgf/cm 2 , φ =120mm
0
10
20
γ (%)
30
5
ε (%)
くなると変形領域は広くなるが,
τ (kgf/cm2 )
はり H=10mm では供試体の上面,下
面付近までせん断面が生じ,H が大き
σ c=1kgf/cm 2 , φ =120mm
0
40
0.6
H (mm)
10
20
30
40
60
80
単純
0.4
0.2
5
ε (%)
が明確 でない のは, せん断 中に供 試
ε –γ
0
0
10
20
γ (%)
0
30
40
では H'=40mm)。これらによって図-
図-6 Drc = 75%の応力−ひずみ関係 図-7 Drc = 25%の応力−ひずみ関係
2,4 の応力−変位関係を応力−ひず
み関係に書き直したものが図-6,7 である。Drc = 75%では,H=30mm 以上の一面が単純とほぼ一致している。Drc = 25%で
は,ε −γ 関係は単純の方が小さいが,τ −γ 関係は H によらず単純にほぼ一致している。
まとめ 一面せん断試 験における供試体高さ は強度,ダイレイタンシ ー挙動および変形領域 に影響するが,今回の 用
いた試料では直径 120mm に対して高さが 40mm 以上(直径/高さが 3 以下)あれば,ほぼ一致する。また,変形領域の
最大高さでひずみを定義 すれば単純せん断試験 による応力−ひずみ関係 とほぼ一致する。ただ し,変形領域は試料粒 径
に依存すると考えられるため,今後,試料の粒径を変えた実験を行い,この結果の妥当性を検証したいと考えている。
参考文献
1) 定圧一面せん断試験における上下せん断箱の隙間と供試体変形, 第 34 回地盤工学研究発表会, pp. 417∼418, 1999.
2) 大島, 他:定圧一面,単純せん断試験の供試体変形と強度特性の比較, 第 34 回地盤工学研究発表会, pp. 419∼420, 1999.