5 7 社 会 Ⅲ 省察を捉え直し,次なる学びに生かす どもたち自身が学びを実感する省察 本校社会科では,単元の協働探究学習の最終段階 である「省察」において,主題に対する最終レポー ことも大切な要素である。ポートフォリオをもとに, 単元を省察することで,取っておくファイルから活 用するファイルへと変化していくのである トを書いている。このレポートは結論 だけでなく,単元においてどのような探究をしてき 2 たかを,子どもたち自身が振り返りながら書いてい く。最初考えていたことや,他者との主張の違いか 質の高い省察をす るためには,それまで ら考えたこと,そして自分の考えの変容を認識しな の探究のプロセスが, がら,最終自説を述べていくのだ。 子どもの思考の流れに 社会科におけるレポートは,1年生より段階的に 子どもの思考内容の可視化 沿っていないと難しい。 深まるようにしている。最初はわかったことや結論 また,多様な視点をも だけの記述から,プロセスや友だちと意見を聞いて って,他者と考えをぶ 考えがどうなったかを述べるなど,自分自身でレポ つかり合わせていくコミュニティがなければ,社会 ート内容の変容も感じられるようにしている。レポ 科が求める社会認識はついていかない。そこで,本 ートを書くために,学習物をファイリングしていく 校社会科では,コミュニティにおける思考の可視化 − 社1 6− 5 8 を大事にしている。話し合いでは,ホワイトボード これを活用することで,子どもたちの学びを見取り や付箋を使用するのはもちろんだが,思考回路図や ながら,視点と思考の広がりを過ぎを抑え,焦点を ダイヤモンドランキング,座標軸,マトリックスシ 絞った事実確認・価値判断へとつないでいくことが ートなどグループで話し合わなければならない場と できると考えている。 手法を活用して,話し合いの質を高めている。また, この学習物を教師が記録し,全班に印刷配布するこ とで,他の班との違いを認識し,クラス全体の交流 の必然性が出てくることになる。子どもの思考内容 の可視化をすることで,学ぶプロセスを子ども自身 が実感することができ,子ども自身の省察につなが っていくといえる。 3 省察から社会認識の深まりをつかむ 協働探究学習は子どもたちの視点や思考が広がり 単元の知識と流れを示した構造図 過ぎてしまうことが多々ある。特に,答えが1つで はない社会科にとって,思考が拡散してしまい,オ さらに,教師側の単元の振り返りとして,教師が ープンエンドで終息してしまうことも出てきてしま ねらう力が子どもたちについているかの省察ができ う。この広がりから焦点を絞り,子どもたちの考え る。単元の構造が子どもたちの協働探究学習に沿っ が絡み合うようにするために,概念的知識,説明的 ていたか,どこで変化したのかなどを読み解くこと 知識,基本事項など,この単元でつけさせたい力を ができる。この省察をもとに次の学びへとつなげて 教師が明確につかんでいることが必要である。子ど いくことで,探究がスパイラルにつながり,社会認 もの思考によって単元は弾力的に変化していく。だ 識を深めていくことになると考えている。今後もさ からこそ,単元の知識を教師が構造化する必要性が らに活用できる単元構造図について研究を進めてい ある。この知識構造を単元展開と合わせ,単元の展 きたい。 (森田 史生) 開を示す構造図を作成して,単元デザインしている。 参 考 文 献 福井大学教育地域科学部附属中学校『研究紀要』第36号, 2008. 福井大学教育地域科学部附属中学校『研究紀要』第40号, 2012. 福井大学教育地域科学部附属中学校『研究紀要』第40号別冊 福井大学教育地域科学部附属中学校研究会 社会科編, 2012. 『学びを拓く《探究するコミュニティ》4授業のプロセスとデザイン』 エクシート 2009. 北俊夫『社会科の学力をつくる“知識の構造図”−“何が本質か”が見えてくる教材研究のヒント−』 2011. − 社1 7− 明治図書出版
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