設置校の事業活動の概要 1.成安造形大学 ■教育理念 − 芸術による社会への貢献 成安造形大学は、デザイン科、造形美術科で構成される造形学部1学部の単科大学で、「芸術による社 会への貢献」という理念のもとに、初心者を大切にし基礎芸術教育へのフォローを主体的に実行する、社 会で機能する今日的な専門教育を密度高く行う、その一環としてフィールドワークなどのキャンパス外の 活動を通して学生が地域社会における多くの実体験を積み、芸術と社会の有り様を具体的に模索する機会 をより充実させていくという精度の高い芸術教育を徹底して実践し、社会に即応する人材の養成をめざし ています。 本学では、建学の精神と教育理念を再点検しつつ、少子化時代に見合った大学像を再構築するため、平 成22年度より現行の1学部2学科14クラス制から1学部1学科5領域制への移行を柱とする学科再編 を行うべく、平成20年度から準備作業を行っています。 ■学びたいことを自由に選んで学ぶ 卒業に要する124単位は、大きく分けて、必修科目であるクラス専門科目が64単位、選択科目であ る学部共通基本科目が60単位です。クラス専門科目は、本学の芸術教育の中枢で美術・デザイン分野を 14分野(クラス)に分け、各々の専門分野を基礎からじっくり学べるシステムです。一方、選択科目は、 幅広い科目群(造形基本科目群・教養科目群・社会実践科目群)の中から、どの専門分野(クラス)に在 籍していても、どの学年でも自由に選択できる科目です。 特に社会実践科目群には、大学の教育理念である「芸術による社会への貢献」を実現するべく平成20 年度から導入したもので、学内外での様々なプロジェクトに参加する現場体験を重視したものや、卒業後 の進路を自分自身で考え、豊かにするための学生のキャリア・アップを重視した科目があります。 本学は開学当初より、講義・実習は少人数制をとっており、教員と学生間のコミュニュケーションの高 さには定評があります。また、在学中に専門分野(クラス)を変えたい学生もでてきます。本学ではそれ を若きクリエーターの卵である学生には当然起こり得ることとして捉え、転クラス制度を設け対応してい ます。 ■卒業制作展、進級制作展 卒業制作展は、本学で学んだ4年間の成果を集大成として広く学内外へ発表するため、毎年1月に京都 の文化ゾーンで開催しています。平成20年度も近隣の芸術系大学のトップをきって、平成21年1月2 1日(水) 25日(日)の5日間、京都市美術館(本館+別館)で300点を超える作品を展示して開 催しました。会期中には、約6,000人の方々にご来場いただきました。 また、3年生が出品する進級制作展においては、4年生での卒業制作展に繋げようと力を入れています。 平成20年度も滋賀県立近代美術館においては平成21年2月10日(火) 博物館他においては2月13日(金) 19日(木)の会期で開催しました。 15日(日)、大津市歴史 ■物心両面で学生を支える 景気が後退する中での平成21年度の奨学金は、経済的支援を必要とする学生、約100名のほとんど が貸与を受けることができました。その内容は「成安造形大学学内奨学金」「日本学生支援機構奨学金」「成 安造形大学同窓会奨学基金」からの貸与です。今後は給付制の奨学金制度の創設等を検討する必要があり ます。 学生生活を送るうえでいろいろな悩みを抱える学生に対して、学生相談室を設けています。学生相談室 では、平日の午後、臨床心理士の資格を持った相談員が真摯に対応しています。また、本学の少人数教育 のメリットは、シスマティックにならない分、個人を見据えた支援ができるところにあると考え、相談室 外においても、学内の教職員の連携を図っていきます。なお、保健センターには看護師が常駐しており、 体調不良や負傷に対応しています。 学生のイベント等は、4月に新入生歓迎会、6月にリーダースキャンプ、7月に成安音頭(盆踊大会)、 10月に響心祭(大学祭)、12月にクリスマスパーティー、3月に卒業パーティーを毎年実施していま す。成安音頭と大学祭は地域住民も多数参加し、地域の年中行事の一部となり親しまれています。 ■地域に開かれた大学 − 活発な産官学連携事業と公開講座 本学は、その教育理念に照らして、従来の芸術系大学の創作・表現という枠を越え、芸術を通して地域・ 社会・文化に貢献をしなければならないと考えています。また教育理念を実践すべく、開学以来、積極的 に産官学連携事業に取り組み、社会から高い評価を受けています。産官学連携事業は、教員自身の研究・ 専門性をより高めるとともに、学生にとっても「社会に即応する人材」を育成するための実践教育の場で あると考えています。 すなわち学生にとっては将来のクリエーターへの第一歩としての経験と実績を積む場であり、それは教 育理念の実践につながる重要な場であると捉えています。附属芸術文化交流センターは産官学連携事業に おいて、地域・社会・企業と大学を結ぶ窓口としての役割を担っています。 ここ数年、プロダクトデザイン、グラフィックデザイン、キャラクターデザインをはじめ数多くの相談 を受けています。平成20年度は、108件の相談を受け、その中から受託研究を行い、成果物として研 究成果を提案しました。地元企業や地域に対し本学の特色を活かした貢献が出来たと同時に、受託研究に 参加した教員、学生にとっても貴重な経験と実績につながったと考えます。 今後は、研究・教育を今以上に深める受託研究を中心に取り組んで行きます。 スペシャリストと若き 感性を社会へ をキーワードに、今後も産官学連携事業に取り組んで行く所存です。 本学の公開講座は、多様化・専門化する地域住民の学習ニーズに応える教育内容を提供するものとして 期待も高く、生涯学習の機会の一つとしても有意義であると考えています。附属芸術文化交流センターと 附属近江学研究所が窓口となり、芸術系大学の特色を活かし、国内外の芸術家、デザイナーを招いた企画 や、本学教員の研究内容を提供する講座、モノづくりの楽しさが体験できるワークショップなど、子ども から大人までを対象に多種多様な企画を提供しています。 平成20年度は、附属芸術文化交流センター主催公開講座、附属近江学研究所主催公開講座あわせて延 べ656名の方々に参加をいただきました。附属近江学研究所としては初めての公開講座の開催で、近江 (滋賀県)を対象に研究をされている様々なジャンルの研究者を講師にお招きしました。 参加者からは、公開講座に対する期待、要望、今後企画する際に参考となるご意見も多数寄せられてい ます。今後も地域や社会のニーズに応えるため、地域に開かれた大学を目指し、本学の特色を活かした公 開講座を企画・提供し続けたいと考えています。 ■入学試験制度の改革 平成21年度入試においては、AO入試の全クラスでの実施や後期推薦入試の導入など、入学試験制度 を改めました。また、入試課が広報戦略を担当することなり、大学案内やホームページ、募集対策ツール などの検討、制作も行いました。 しかしながら、他の芸術系大学がAO入試によって早期に、大幅に入学者を確保した影響を受け、公募 推薦入試以降の志願者を大きく減少させることとなりました。そのため、平成21年度の入学者数は 213名となり、開学以来初めて募集定員を下回わる結果となりました。また、クラス間の志願者数の格 差が大きいのが現状で、平成22年度から実施する学科再編による改善が望まれます。 募集広報に特化した広報戦略としては、ツールを見直し、ホームページを充実させて、学内外の情報を 早期に伝達することに力を入れました。また、平成21年度に向けて、大学案内も一新いたします。 今後は、「情報量やスピード」を意識する広報から、学生や保護者のニーズに合致するものを探り制作 することに重点を移し、本学の特色や魅力を周知することに努めます。 ■高い「就職率」を支えるキャリア支援プログラム 本学では、各専門分野での少人数教育と同様に、4年間でプログラムされたキャリア教育を一人ひとり に対し徹底して実践することで、個性や専門性を生かしながら、経済的にも自主独立していくことのでき る人材育成に取組んでいます。 各学年で達成目標を置いたキャリアデザイン科目群は正規科目としてプログラムされ、90%以上の学 生が履修しています。また、インターンシップ(就職体験)制度も独自で準備しており、平成20年度も 20%(61名)の学生が参加しました。更に、産業界との交流の一環として、企業との「産学連携」に も全学で積極的に取組んでいます。学生ならではのフレッシュな発想を生かしつつ、現場レベルの高い専 門性を発揮し、商品やプロジェクトの企画立案・実施などを提案しています。 本学では、定義が曖昧な「内定率」ではなく、その年度の卒業生のうち何人が就職したのかという「就 職率」を重視しています。この数年間は、全国の芸術系大学の平均就職率49%(内定者数/卒業者数: 平成19年度文部科学省発表)を常に5 10ポイント上回る就職率となりました。景気後退の逆風の中、 平成20年度の就職率は61%(内定者数/卒業者数)であり、特に全てのキャリアデザイン科目群の修 了者は、就職率100%と更に高い結果を残しました。 デザイナーなどの実力本位の職種への就職戦線において、本学の高い「就職率」は社会の第一線が認め た実力の証でもあります。 2.成安幼稚園 ■教育目標 − 心豊かな子どもを育てる 成安幼稚園は、長年にわたる保育経験から、子どもは様々な遊びの体験から学び成長するという信念に たち、「自主・自立」の精神を萌芽させる土壌として、遊びの要素が大変重要であると考えています。 教育目標である「心豊かな子どもを育てる」ため、ひとりひとりの子どもを大切にする教育に取り組み、 「いのちを大切にする、元気に遊べる、協調性を大切にする、話をよく聞く」という人になって欲しいと 願いつつ、様々な遊びの体験から学べるよう、家庭と緊密に連携しながら、園児の個性と能力を存分に引 き出すきめ細やかな教育を実践しています。 ■タテの関係の重視、子育てサポートへの取り組み 核家族化や少子化が進展する中で、兄弟姉妹が少ない、また、近隣にも同年代の子どもがいないなど、 社会の状況が急速に変化しています。異なる年齢の子どもとの関わりの中で、いわゆる「タテ」の関係の 中で醸成される様々な感情や育ちは、幼児期において育まれる重要なものです。本園では、家庭や地域の 中で年々困難になりつつある「タテ」の関係を大切に保育をしています。 一方、幼稚園は地域性がきわめて強く、地域社会と積極的に関わることを意識し、様々な行事を通して、 幼稚園を広く地域に開放することに努めています。運動会や発表会など園の通常の活動についても近隣住 民に広報し参観を呼びかけるなど、保育活動全般にわたる交流を通して、今では失われつつある家庭と地 域・幼稚園が協力をして子どもを育てるという、我が国の古き良き風習の実践も行っています。 本園は京都府から、幼稚園機能を活用して子育てを支援する「子育てサポートセンター事業」という補 助事業の助成を受けており、地域に密着した幼児教育支援の拠点としての役割も担っています。園庭や教 室などを開放した未就園児と在籍園児の交流、未就園児保護者どうしの交流、保護者と教員との懇談を目 的とした「ようちえんであ・そ・ぼ」という取り組みは年間10回開催し、600名を超える参加があり ました。また、絵本の読み聞かせなどを親子で一緒に学び、また、未就園児の保護者どうしの交流の場と している「絵本の会」は年3回、110名を超える参加がありました。本園では、子育てサポートのなか でも親子関係支援に重点を置いた取り組みを行っており、地域に根付いたものとなっています。 保護者、特に母親が安心して仕事や社会活動に参加できるように、子育てサポートの一環として実施し ている預かり保育についても、家庭との連携を密にすることに留意しつつ取り組んでおり、年間180名 以上の保護者が利用されています。 ■併設校、成安造形大学とともに 本園は、芸術系大学である成安造形大学を併設校に持っており、大学の教員や学生たちによる芸術の香 り豊かな活動を教育に取り入れています。これには保護者の参加もあり、園児・保護者・学生・教員が一 体となる他園にはないユニークな活動となっています。地理的には少し離れていますが、園児が大学のキ ャンパスを訪れる行事も行っており、大学の広いキャンパス内で同じ学園の兄弟として園児・学生の交流 も盛んに行っています。 ■安全管理への取り組み 幼稚園教育現場において発生する事故や災害に備え、園児の安全を確保するため、様々な想定下での訓 練や交通安全指導など基本的な安全管理計画を策定し、実施しています。園児を取り巻く危険の除去と迅 速的確な対処のため、日常の安全点検を確実に行うことはもとより、警備会社に直結している非常通報装 置や防犯カメラ、AED(自動対外式除細動器)も設置しています。 また、保護者の利便性もさることながら、通園時の安全の確保を図る観点から2ルートの通園バスも運 行しています。 ■幼稚園の「場」の実体験をとおした園児募集の取り組み 本園では、保護者と子どもに幼稚園という「場」を実体験してもらい、保護者に対しては幼稚園教育の 重要性、子どもには幼稚園の楽しさを知らせることこそが園児募集の基本であると考えています。先程述 べた「ようちえんであ・そ・ぼ」や「絵本の会」も、子育てサポートと併せて未就園児とその保護者を幼 稚園と結びつけるという側面も持っています。また、本園が継続的に取り組んでいる「お母さんと一緒」 (年間10回開催)という行事も、未就園児や幼稚園保育年齢に達する子どもを対象とし、遊びや制作な どの活動を母親と子どもが一緒にすることを通して幼稚園教育に対する理解を深めてもらうことを目的と しています。 平成20年度の入園者数は72名(中途入園を含む)、平成21年度は75名でした。本園の募集定員 は104名ですが、少子化など募集環境が厳しい中でも毎年概ね70名前後の入園者を確保できています。 このことは、園児の保護者で組織する保護者会や地域をはじめとして、本園を支えていただいている多く の方々のご尽力により本園の様々な取り組みが地域社会に浸透してきたものと考えております。同時にこ のことは、地域社会から一定の役割を果たすことを要請されている証左であるとも認識しております。 現在本園は、専任教員4名、常勤講師7名、非常勤講師4名、事務職員2名体制で運営しています。教 職員の日々の研鑽と絶え間のない自己点検により、何よりも園児の安全を第一義としつつ、幼稚園教育の 質の維持向上を期すとともに、時代や地域社会のニーズに敏感な幼稚園となるべく、努力を重ねてまいり ます。 トピックス 大学附属近江学研究所を開設 全国的に各地域の文化を総合的に研究する地域学が、はじめて提唱されたのは、およそ十数年前といわ れています。その後全国で地域名を冠した地域学が誕生しています。「近江学」では、先人たちの営みの 足跡だけを検証するだけでなく、現代における近江の文化の意義を解明し、将来を展望するために提唱す るものです。 「近江学」は滋賀県(近江)のもつ固有の豊かな文化資源を芸術・文化をはじめとする各分野からの視 点で、それぞれを深く検証し、新たな価値観を見出し、再生し創造しようとするものです。 その取り組みを具体的に実践するために、平成 20 年 4 月、本学に「成安造形大学附属近江学研究所」を 設置しました。 この研究所の研究成果や調査報告ならびに、関係情報を発信することを目的に、研究紀要『近江学』創 刊号を平成21年1月11日に発刊いたしました。発刊に関する記者発表を平成21年1月22日に行い、 新聞各社において大々的に取り上げていただき、多くのご意見、ご感想が寄せられました。 研究紀要『近江学』を通して、多くの方が近江の文化に触れていただく機会になること、そしてそこから 多くの方に研究の輪を広げていきたいと考えています。 研究紀要『近江学』は研究成果の論文を中心に文化情報などを掲載していますが、気軽に楽しんでいた だけるようできるだけ図版を豊富に使用した、ビジュアルな紀要づくりを目指していきます。 年1回発刊をいたします。現在、研究紀要「近江学」第2号の企画を進めています。ご期待ください。
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