こどもの病気【号外①】 ペットボトル症候群 今年は、福島第一原発の事故のために、[節電]の重要性ばかりが騒が れており、そのために、エアコンの使用を控える傾向があります。そのた め、室内においても御高齢者や乳幼児などで、熱中症が多く報告されてい ます。熱中症の予防には水分や塩分の摂取が重要となります。そこで“ポ カリスエット”や“アクエリアス”などのスポーツドリンクを飲む機会が 増えるかと思います。他にもつめたい清涼飲料がほしくなりますが、スポ ーツドリンクや清涼飲料には糖分が多く含まれています。糖分の多いこれ らの飲料を多量に飲み続けていると、急激に血糖値が上がる「ペットボト ル症候群」に陥る危険性があります。近年、若年層を中心に患者数が増え ていますが、認知度はまだまだ低いままです。夏場の水分摂取方法に気を つけ、節電の夏を乗り切りましょう。 「ペットボトル症候群」の正式な名称は、「ソフトドリンク・ケトーシ ス」といいます。糖分の多いソフトドリンクを継続して多量に摂取するこ とで血糖値が上昇し、血糖値を一定に保つために必要なインスリンの働き が一時的に低下するために起こります。インスリンが足りなくなると、吸 収したブドウ糖をエネルギーとして上手に利用できなくなり、その結果と して、体の中に蓄えてある脂肪などを分解してエネルギーとして利用せざ るを得なくなります。そのときに「ケトン体」と呼ばれる代謝物が増えて しまい血液が酸性に傾きます。その結果、意識がもうろうとしたり、倦怠 感があったり、意識がはっきりしなくなったりします。 糖分の過剰摂取のために血糖が上がってしまうと、それを薄めようとし てさらに水分を欲してのどが渇きます。血液の浸透圧も上がり(濃くなり) 尿の量も増えます。カラダから水分がさらに出て行ってしまうためのどが 渇き、甘い飲み物をさらに飲んでしまうという悪循環に陥ってしまいます。 一般的清涼飲料水は 1 リットル当たり 100 グラム前後の糖分が含まれ ていると考えられます。一般的なスポーツドリンクには、1 リットル当た り 40~60 グラム程度の糖分が入っています。角砂糖やスティックシュガ ー1 個が 4~6 グラム前後なので、1 リットルの飲料を一気に飲んだとす ると、その飲料が清涼飲料水では角砂糖 20 個、スポーツドリンクでは角 砂糖 10 個をかじったのと同じと考えられます。 一般にスポーツ中は糖質に関しては 2.5%前後が一番吸収しやすいとも 言われていますので、糖質だけで考えれば、スポーツ飲料は 2~3 倍に希 釈したほうが良いことになります。ただ、激しい運動をする場合や、長時 間運動を続ける場合は糖分を増やしてエネルギーを補給する必要があり ます。塩分も汗をかくことで大量に喪失するため、多くとる必要がありま す。スポーツ飲料はこのような場合を考えて成分ができています。日常の 生活における脱水の予防には、2~3 倍に薄めたスポーツ飲料を用いたり、 スポーツドリンクや清涼飲料だけでなくお茶などの糖分の入っていない 飲み物と交互に摂ったりする。あるいはミネラルウォーターにレモンを搾 り、適度な糖分や塩分を加えたものなども摂取するなどの工夫が必要です。 自分で作るときは、水 1 リットルに対してティースプーン半分程度の食塩 (2g)と角砂糖(スティックシュガー)4~5 個を溶かしたものが良いと 思われます。 時と場合に応じた適切な水分摂取を行うことで「ペットボトル症候群」 と熱中症を予防しましょう。 参考:アクエリアスとポカリスエットの成分 アクエリアス ポカリスエット エネルギー 19 kcal 27 kcal 炭水化物 4.7 g 6.7 g ナトリウム 34 mg 49 mg カリウム 8 mg 20 mg カルシウム 0.8 mg 2 mg 1.2 mg 0.6 mg 糖分 高果糖液糖、トレハロース、はちみつ 砂糖、ぶどう糖液糖、果汁 とろみ、他 ローヤルゼリー、海藻エキス - 塩分 - 食塩 甘味料 スクラロース - 酸味 クエン酸 酸味料 マグネシウ ム アミノ酸 アルギニン、イソロイシン、バリン、ロイシ 調味料(アミノ酸他) ン (100ml あたりの成分) 行徳総合病院 小児科 佐藤俊彦
© Copyright 2024 ExpyDoc