2015年度給付奨学生特別入試 筆記試験問題 以下の著書の抜粋を

2015年度給付奨学生特別入試
筆記試験問題
以下の著書の抜粋を読み、下記の設問1・2に答えなさい。
「しかし危機的な状況が生じて、生き残ること(サバイバル)さえおぼつかなくなると、
利他主義はどこかへ消えてしまう。そして、人々は、「自分が第一」という、生物学的原則
ともいうべき利己主義をむきだしにするのである。
生態学者ガレット・ハーディンが『地球に生きる倫理』
(1972年)で示している仮想
例を借りて考えてみることにしよう。
問題 C 今、船が沈没して、大勢の人が海に投げ出され、助けを求めているが、救命艇は小
さくて、ごく一部の人しか収容することができない。さて、どうすればよいか。
これが「救命艇状況」である。ここでは「必要に対して何かが足りない」という「稀少
性」の制約がこれ以上はないほど明確な形をとって現れている。
ハーディンは、この状況に対する問題解決の原則として、次の四つを挙げて、順次検討
している。
① ヒューマニズムの立場から、助けを求める人々を全員救命艇に乗せるように努める。
② 定員一杯までは乗せる。
③ 利他主義の立場、あるいは全体の利益という立場から、人々の良心に訴える。つまり、
生き延びるに値する人を助けるために、そうでない人は譲って犠牲になってくれるよ
うに、と訴える。
④ これ以上一人も乗せない。」
(中略)
「非常事態ではない場合でも、人々の利害が根本的に一致せず、しかも稀少なものの分
配についてのルールが確定しがたい場合の唯一の解決は、利己主義の原則による競争であ
る。結果は力(能力)と努力と運によって決まる。それは「弱肉強食」的なものになるで
あろうが、やむをえないことである。ただし、
「救命艇状況」から遠ざかるにつれて、この
「ルールのない競争」を「ルールのある競争」すなわち「ゲーム」に近づけるだけの余裕
が出てくるので、現実には「他人を死に追いやってでも自分が生き残る」という極限的な
競争になることはめったにない、と言ってよい。」
竹内靖雄『経済倫理学のすすめ』(中公新書、1989年)16~19頁
設問1
上記①~④について、どのような結果が予想されるか、簡潔に述べなさい。
(60点)
設問2
上記①~④のうち、最も愚劣だと思われるものはどれか。理由を付して説明しな
さい。また、これしかないと思われるものはどれか。理由を付して説明しなさい。
(40点)