企業倫理の実践に取り組む経営者と担当者へのメッセージ 中小企業実践

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№02/2009.04
企業倫理の実践に取り組む経営者と担当者へのメッセージ
中小企業実践取組の基本的な考え方(その1)
-いまこそすべき大企業と違う企業倫理の実践-
BEIビジネス倫理研究所 代表 山口謙吉
<基本的な取組姿勢>
○「経営目標」のなかに「企業倫理の実践」
会社が企業倫理を導入するということは、当然のことだが、組織的に取り組むというこ
とが前提にある。このことを勘違いしている経営者や経営陣、特にオーナー経営者にはま
だ多いのではないだろうか。
会社の中にあっても倫理というのは個人のことと捉えてしまい、従業員がどのようになれ
ばいいのかその視点での対応が中心で、組織として従業員などの実践へのフォロー対策が
不十分なというところにそれが現れてくる。
当然のことだが、目標を達成するにはそれなりの仕組みが必要になる。経営目標を達成
するために長年にわたり築いてきた現在の組織、体制がそれといえるだろう。ここで考え
なければならないのは、
「経営目標」のなかに「企業倫理の実践」という目標が増えたこと
である。
この目標は、一般的に利益目標達成とは相反する概念で捉えられている傾向が強ようだ。
だが、今の時代は利益目標達成と一体のものであると考えるのが正しい方向となっている
ことを認識しなければ進まない。
○ポイント1「目標だけでは動けない」
役員、従業員など働く人は、目標とともに組織、制度などの仕組みがあって初めて組織
のなかでいきいきと活動することが出来る。ここがひとつ目のポイントである。
利益目標を達成するために社内でどのようなことが行われているかを考えれば分かること
だろう。一方、企業倫理の実践という目標のためには社内に何があるだろうか。実践を支
える組織、制度などの仕組みの状況だ。当然ながらそれらの充実の程度で目標達成の成否
が自ずと決まってくるのはいうまでもないことだろう。
つまり、社内には利益達成のための仕組みと経営倫理実践の仕組みの両方があり、その充
実度においてバランスが取れていることが、あるいは取れるようにしていくことが、これ
からの企業のあるべき姿だということだ。
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○ポイント2「役割を自覚する」
次に、会社の中では「組織」も「働く人」も役割を自覚することだ。人間は組織の中で
は弱く、上司などの指示、命令には容易に異議を申し立てられないものだということはみ
な一葉に理解していることだ。ここがふたつ目のポイントである。
組織の中の人は弱いものだからそれなりの仕組みが必要になる。だが、それも働く人全員
が企業倫理の実践で何を利用し、何をすべきかなどの具体的なことが分かっていなければ
画に描いた餅に終わってしまう。二つの立場から考えればこれらは明確になってくる。
ひとつは、企業経営を担っている経営者、経営陣が「組織」運営をしていく立場で果たす
べき役割だ。予算編成、内部規程類の制定など事業運営のための仕組み作りと同じく、こ
の場合、企業倫理実践のための仕組みとして「企業倫理実践プログラム」を構築、運営す
る施策を決定、推進することだ。だが、
「形」を無理に作れということではない。この点に
ついては次回以降に触れていく。
「働く人」の立場からは、整備された「企業倫理実践プログラム」に従いうことが望まれ
る。それは決められたとおりにしていればいいということを意味するものではない。それ
ぞれに任された業務の遂行を通じて、会社の施策、職場での目標達成のための企業活動な
どについて、自分の良心に照らしておかしく感じることなどを見逃さず、改善あるいは改
善提案していくという行動が、「働く人」の役割だ。
役割の意味することは、自分の職場をよくしていくという行動が会社全体をよくしていく
ということにつながるということであって、このことを自覚されていていることが最良で
ある。組織としてはこのことを十分伝えていかなければならない。
○ポイント3「地味な活動」であり「継続性」が全て
最後に、企業倫理の実践は大変「地味な活動」であり、
「継続性」が必要なことを、特に
経営者、経営陣は自覚して欲しい。成果が営業のように目に見えて確認できるものではな
いからだ。何も起こらない当社の状況は、大変良いから、また、苦しいから一時中断して
もよいのではないかと考えられ、無駄なコストと思われやすくなるものだ。
そのため、その前提として「企業倫理実践プログラム」の維持、運営を必要コストとして
位置付けるのではなく、持続的発展のために必要な利益を生むための一方の重要な経営投
資として認識しておかなければならない。
一方、不都合な事態など、何も出なくても、起こらなくても当たり前と思われても困る。
もともと企業は、社会に何らかの形で責任があり、社会に貢献していく、社会との共生を
考えていくということなどが前提にあるはずだ。とすれば、企業経営の立場からすれば、
これらのことに留意しながら運営されているのならば、社会に対してや従業員などのステ
ークホルダーに対して不都合なことなど、そうそう発生することは無いとうことだ。
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しかし、そうは行かないのが人間というものであり、その集まりである組織、会社だ。説
明するまでもないことだが、いつの時代でも繰り返されてきた組織としての不祥事、従業
員としての不祥事の数々がそこにはある。継続することが最も賞賛されることといえるだ
ろう。
(了)
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