BEIビジネス倫理研究所/2009 企業倫理の実践に取り組む経営者と担当者へのメッセージ - 中小企業のための企業倫理実践の整備 №03 - 原点は「経営理念」にある <基本的な考え方(その2)> BEIビジネス倫理研究所 代表 山口謙吉 ○持続的実践に必要な「魂」 企業倫理実践の制度や仕組みは円滑に運用されなければ意味がない。そのためには「魂」 を入れる必要がある。ここでいう魂とは、実践する意義を理解し「わが社の企業倫理の実 践を持続的なものにするもの」のことである。 魂というと多分に精神的なものと思われがちだが、それでは営利企業が成り立たない。働 く全ての人が容易に想像できる会社のあるべき姿、活動について経営数値目標と同じよう に具体的に示されたものでなければならない。その元となるのが経営者の理念(ここでは 信念、信条、持論なども含めたもの)である。そこに企業倫理実践の円滑な組織的運営実 現のカギがある。 自分の事業、仕事に対して理念を持っていない経営者はいないだろう。それを明文化し ているか、具体的になっているかなどの問題はあるにせよ、うちの会社には経営理念が無 いと聞くことがあるが、決してないということではない。無いのだとすれば、経営者が経 営の中で経営理念が持つ本質を理解していないということだろう。明文化してこそ会社の 「経営理念」となる。 今の企業経営では、業績目標を達成するだけの企業活動では企業倫理軽視の誤解を受けや すいため、企業倫理に配慮していることを何らかの形、または方法で示す必要がある。既 に導入しているがうまく機能していないというところは、 「形」や「実践のルール」などの 整備にとらわれ、実態が伴っていないという会社だろう。それは多分に経営者の理念を起 点として取り組んでいないことが大きな原因と考えられる。 企業倫理実践の推進で重要なポイントのひとつは、従業員が実践しないと嘆くのではなく、 経営者自身が出来ているのかということが従業員に影響を与えていることを経営者が自覚 することだ。人間は自分の理念から発していないものには、理性として分かっていても普 段の言動にはなかなか反映されにくいからだ。 うまく機能していないという場合もそうで、「経営者自身の理念から発している経営理念」 を元にした企業倫理の実践ではないのだから無意識のうちに考えや言動にズレが生じてく る。それが従業員に疑義を与えることとなり、その結果、実態が伴わない企業倫理実践の 仕組みだけが従業員の負担として残るということになる。 -1- Copyright (c) BEI Business Ethics Institute 2009. All rights reserved BEIビジネス倫理研究所/2009 ○「経営理念」の確認、見直し 経営者の中には、信念、信条、持論など思うところはあるが、これといった文章にはま とめていない。また特段公表していないが、従業員には思うところを頻繁に話している。 あるいは、会社には前任の社長から受け継いだ「経営理念」が既にあり、引き続きこれを 基本としているという方などいろいろあるだろう。 従業員が経営者の本意を言動だけで理解してくれればよいが、最近の社会的傾向として 難しくなっているのではないだろうか。また本意は同じだが、その言動に一貫性が見られ ないとか、従業員数も多く経営者が直接話す機会が少なくなれば、聞いた従業員が第三者 の取引先や部下、後輩、それに家族などに明確に伝えられるとは限らない。 特に利害が絡む企業活動における従業員の意思決定において、どれだけ影響力を保てるの かは疑問が残る。経営者の理念を明文化、公表し、会社経営の根本的な方向性を示す意義 がここにある。 受け継いだ「経営理念」があるという会社は多い。しかし、それが今の経営者である自 分の理念とどうなのかということは検証しているだろうか。自分の理念と相容れないもの があれば、それは無意識のうちにでも言動となって従業員に違和感を与え、組織に悪影響 となる可能性がある。実態のない企業倫理実践の根っこのひとつがここにある。 経営理念の確認、見直しの基本は、経営者自身の経営、事業、従業員、仕事、社会など に対する思いを検証するということで、それには、根本的なことには余人を交えずに考え、 具体的な表現には社内の叡智を活用することである。 ○経営理念実現の両輪 企業倫理の実践と事業目標(業績)達成活動とは一体のものであり、それらの推進の背 景となっているのが「経営理念」である。現代社会においてこの二つを相反するもののよ うに考えることは、会社の永続的発展にマイナスの影響を与えるものとなってくる。これ らは経営理念実現の両輪と自覚することが必要だ。(下記概念図参照) 企業倫理の実践整備の基本は、経営理念を倫理綱領あるいは行動基準(規範)などにど のように具体的に表現して、事業目標(業績)達成活動にどう影響を与えていくか、役員 をはじめ従業員にどのように理解、実践してもらうのかということにある。またこれらの ことは、経営理念を実現していく上で欠かせないものであることを関連づけておかなけれ ばならない。 (了) -2- Copyright (c) BEI Business Ethics Institute 2009. All rights reserved BEIビジネス倫理研究所/2009 <経営理念実現の両輪> 経営理念 企業倫理の実践 事業目標達成活動 経営戦略 社内制度 ・経営方針 ・社内規程 ・企業倫理綱領 ・経営計画 ・マニュアル ・企業行動基準(規範) ・予 算 ・ガイドライン ・企業倫理プログラム ・施 策 ・社内通達 ①考え、②意思決定 ③行動、の際に常に 基本にあるもの 役員・従業員の言動 実 践 ・ 達 企 業 活 動 成 業 績 積み重ね 経営理念の実現 Copyright (c) BEI Business Ethics Institute 2009. All rights reserved -3- Copyright (c) BEI Business Ethics Institute 2009. All rights reserved
© Copyright 2024 ExpyDoc