3 径間連続箱桁橋(V 脚構造)における柱頭部の施工 -新富岡 大橋-

3 径間連続箱桁橋(V 脚構造)における柱頭部の施工
しんとみおか
-新富岡大橋-
1.はじめに
東京土木支店
土木技術部
藤本謙太郎
東京土木支店
土木技術部
中村淳一
東京土木支店
土木技術部
坂本拓麻
東京土木支店
土木工事部
冨田正典
2.工事概要
新富岡大橋は,群馬県富岡市の国道 254 号バイパスの 4 車
2.1 橋梁諸元
線化に伴い架設される橋梁(II 期線)であり,下り線 2 車線
本橋の橋梁諸元を表-1 に,全体一般図を図-1 に示す.図-1
の I 期線が暫定供用されている.構造形式は「3 径間連続 PC
に示すように,新富岡大橋は一級河川鏑川との交差条件によ
箱桁橋(V 脚構造)」が採用されており,主桁部が PC 構造,V
り,85°00′の斜角を有している.主鋼材の配置は,内外併
脚部が RC 構造からなる.柱頭部は主桁と V 脚から構成され
用ケーブル配置であり,内ケーブルが 12S15.2,外ケーブル
ており,本橋の構造を成立させる上で重要な部位である.
が 19S15.2 である.また,支承形式は水平力分散ゴム支承が
I 期線の上部工及び上下線一体型の下部工は,竣工後約 20
採用されており,各支点に地震時の橋軸直角方向固定装置が
年経過しており,II 期線の施工にあたり,I 期線の現況や定期
配置されている.
点検結果を考慮し,上部工の品質・耐久性を向上させるため
2.2 主桁断面形状
の各種検討を実施した.本稿では,本橋梁の特徴である V 脚
V 脚部の構造一般図を図-2 に,主桁断面図を図-3 に示す.
構造の構造特性をふまえた,品質向上対策について検討した
主桁断面は柱頭部の V 脚間では斜ウェブ,標準部では鉛直ウ
結果について報告する.
ェブの箱桁断面となっており,主桁と V 脚の交差部において
なお,本橋は 3 径間連続 PC 箱桁橋(橋長 189m)であるが,
断面形状が変化する.また,張出床版とウェブ付根のハンチ
発注が 3 分割されており,本報告では当社施工範囲の P2 橋脚
形状に R ハンチを採用するなど,細部のデザインまで考慮さ
の施工で実施した検討内容について報告する.
れており,景観に配慮された橋梁である.
平 面 図
表-1 橋梁諸元
189.000m(施工範囲 69.0m)
64.750m + 69.000m + 53.750m
有効幅員
10.750m
架設工法
張出し架設(仮固定構造)
側 面 図
図-2 V 脚部の構造一般図
1
890
00
1
886
80
6
900
0
支間 537
50
590
当社施工範囲(分割2号)L=6
9.0
m (分割3
号)
P2
(鉛直W
e
b)
2
0
A2
3
8
0
HWL135
.241
2)
:
(1
斜We
b
鉛直Web
橋長
95
°
00
′
2
.0%
1
890
00
桁長 1
886
80
16
0
支間 6
900
0
支間 537
50
590
当社施工範囲(分割2号)L=6
9.0
m (分割3
号)
公
新富岡大橋
アスファルト舗装
t=
80mm
2.0%
アスファルト舗装
t=
30m
m
1
.5%
V
脚
1
38
.5
0
2.
0%
2
6
0 2
1
30
I期線(
暫定供用中)
アスファルト舗装
t
=30
mm
1
.5%
2
.0%
E 絹3
49
付
園
6
0
0
0
2
94
020
0
I
R
85
°
00
′
一
級
河
川
(分割1号)鏑
川
85
°
00
′
6
4750
アスファルト舗装
t=8
0mm
2
20
0
平 面 図
160
59
0
支間
(分割3号)
5
00 3
00
0 40
0
a
s
II
期線
駐車場
1
00
0
2
6
0 2
13
0
図-1 全体一般図
33
0
0
鉛直W
eb
7
2
50
33
0
0
斜Web
11
5
30
3
8
0
1
00
鉛直We
b
5
0
0 30
0
0 40
0
V脚
支承
現地盤線
断面タイプ
7
2
50
250
計画河床 12
7.441
(1
:2)
(
斜W
e
b)
2
0
11
5
30
25
0
P1
A1
柱頭部
標準部
25
0
6
4750
支間
(分割1号)L=6
6.0
m
16
0
25
0
橋長
桁長
160
59
0
支間
(分割3号)
P2
2668 3000 2671
3832
8339
3
829
20
00
6250
3500
6250
20
00
P2
4168
4171
83
39
49391912668
26
7118
84867
964
7798
3000
7726
512
6
250
3500
62
50
2262
160
00
173
8
1
00
長
支 間 割
100
00
5500 650
5
002403300
3203
橋
7700
3850 3850
6600
3 径間連続 PC 箱桁橋(V 脚構造)
20
000
10
000
650 550
0
1790
3300
1
510
構造形式
側 面 図
316
2
5002
362300
群馬県 富岡土木事務所
00
′
発 注 者
1107
0
2
940
6
000
2130
500 5
000 5
00
新富岡大橋(上り線)上部工工事(分割 2 号)
160
00
2
262
625
0
3
500
625
0
7
837
30
00
7762
100
0
4
9781
91266
8
2
6711
884903
833
9
4
168
41
71
85
°
工 事 名
40
1
500 5
000 5
00
2
940
6
000
2130
1107
0
補助公共 社会資本総合整備(広域連携)
6902620690
1
00040
00100
0
17
38
図-3 主桁断面図
40
0
0
60
0
0
1
00
0
2
94
020
0
3.品質向上対策
内部温度計測用熱電対
クーリング用パイプ
3.1 3D 配筋モデルの活用
柱頭部は,一般的に過密な鋼材配置となり,鋼材同士の干
渉や鋼材同士のあき不足に起因するコンクリート充填不足な
どが懸念される.本橋では,更に V 脚部の D32 軸方向鉄筋が
85°00′の斜角なりに 125mm 間隔で配置される.また,主
桁と V 脚の交差部において主桁断面形状が斜ウェブから鉛直
ウェブに変化しており,極めて複雑な配筋となることが想定
された.
写真-2 クーリングパイプ設置状況
3.3 架設時の地震時水平力に対する対策
張り出し施工では,架設中のアンバランスモーメントおよ
そこで,施工にあたり 3D 配筋モデルを作成し,鋼材同士の
び架設地震時の水平力に抵抗させるため,仮固定鋼棒および
干渉チェック,鉄筋の組立て順序,バイブレーターの挿入位
水平力伝達用の H 形鋼が配置されている例が多い.本橋も同
置の確認などの検討を実施した.3D 配筋モデルを図-4 に,鉄
様に,上下線一体の下部工として I 期線施工時に配置済みで
筋組立て状況を写真-1 に示す.
あった.しかし,耐震基準の変遷に伴い,下部工施工時に想
定していた支承形状より II 期線の支承形状が大きくなり,水
平力伝達用の H 形鋼と支承の干渉が問題となっていた.
本橋は地震時の橋軸直角方向固定装置としてストッパーが
採用されており,この固定装置を用いて架設地震時の水平力
を伝達する方法を提案した.計画図を図-6 に,固定装置の設
置状況を写真-3 に示す.これにより,水平力伝達用の H 形鋼
図-4 3D 配筋モデル
を V 脚基部の横桁内に埋込む必要がなくなり,横桁内の鋼材
の過密配置を改善することにも寄与した.
(
橋軸方向)
反力受梁
1
2
2
0
(
上沓)
ゴム板
受梁と上沓境界面
支圧板
P
C
鋼棒
該当箇所の 3D 配筋モデル
ラ
イ
ナ
ー
フ
゚
レ
ー
ト
写真-1 鉄筋組立て状況
3.2 初期ひび割れ防止対策
ナット
1
0
5
0
(
下沓)
ゴム板
下沓とラ
イ
ナ
ー
境界面
図-6 ストッパー固定計画図
写真-3 設置状況写真
柱頭部は 1 回のコンクリート打設量や支保工計画等も検討
にいれ,約 450m3 のコンクリートを 3 分割施工とした.柱頭
部横桁は,横桁厚さが 5.5m とマスコンクリートであること,
4.おわりに
本橋梁は,写真-4 に示すように,現在張出し架設中である.
V 脚と主桁の 1 層目を打ち重ねた時点で V 脚と主桁によりト
本稿が今後,同様な構造を有する橋梁の施工に少しでも参考
ラス構造が形成され,水和熱による主桁の伸縮が V 脚に拘束
になれば幸いである.
されることから,その影響を把握するため,温度応力解析を
実施した.
品質向上のため,V脚部および柱頭部の1層目は普通セメ
ントを使用し,乾燥収縮によるひび割れの発生を低減させる
ために全て膨張コンクリートを使用した.更に,横桁部はク
ーリングを実施しひび割れ指数の改善を図った.図-5 に対策
前のひび割れ指数分布図を示す.また,写真-2 に横桁部のク
ーリングパイプ設置状況を示す.
<凡例>
:改善前
:改善後
1.28
⇒
1.14 ⇒ 1.72
0.74
写真-4 架設状況
Key Words:V 脚構造,3D 配筋モデル,初期ひび割れ防止対
策,張出し架設,架設地震時水平力固定装置
3Lot
エアークーリング
2Lot
水冷クーリング
+ 普通セメント
⇒
1.74
0.84
1Lot
1.26 ⇒ 2.51
普通セメント使用
1.19 ⇒ 1.54
図-5 対策前のひび割れ指数分布図
藤本謙太郎
中村淳一
坂本拓麻
冨田正典