月刊 HRタイムズ Monthly Human Resource Times 株式会社アヴァンティスタッフ ニュースレター 26号 / 2015年3月 (毎月第2水曜日発行) HRタイムズでは、人材活用や人事労務に関する旬な情報を毎月お届けします。 人事労務ニュース ◆介護休業取得で離職率低下 労働政策研究・研修機構調査 介護が必要な家族を持つ従業員が介護休業を取った場合は、取らない場合より離職の割合が低いことが分かった。労働政 策研究・研修機構の調査によると、介護休業制度を利用した従業員の離職率は4.8%、転職率は11.9%と、それぞれ利用し なかった従業員より10ポイント以上低かった。(2015/3/1 日本経済新聞電子版) 昨年、明治安田生活福祉研究所が、親を介護した経験のある全国の正社員約2千名を対象に「「仕事と介護の両立と介護離 職」に関する調査」を実施し公表しています。それによると、介護と仕事を両立できた(できている)人の約3割が、介護に対する 上司や同僚などの理解・支援を得ていることがわかります。一方で介護に専念するため離職した人では、わずか8%です。 多くの企業で人手不足が問題となるなか、介護による離職を防ぐためには、休暇や休職制度のみならず、社員の理解をいかに 広めていけるのかが重要です。 ◆ 「派遣法改正案」もし廃案なら10月以降の派遣現場は大混乱に陥る 政府は、派遣労働のあり方を大きく見直す労働者派遣法改正案について、3月中旬に今国会に提出する準備を進めている。 改正案は、過去2度提出されたが、厚生労働省の凡ミスもあって、いずれも廃案に追い込まれた。厚労省は今度こそ成立させた いと必死だ。今年10月までに成立していないと、派遣業界が大混乱に陥りかねないからだ。しかし、「格差是正」解消を旗印に 掲げる民主党など野党は「派遣労働者が固定化する」として3度目の廃案を狙っており、成立は容易ではない。(2015/3/3 産経ニュース) 混乱が予想される理由は、今年の10月に「労働契約申込みみなし制度」の運用開始が決まっているからです。 詳しくは、4ページのQ&Aをご覧ください。 ◆マイナンバー制度への対応準備のお願い マイナンバー制度(社会保障・税番号制度)の導入に向け、本年10月より、マイナン バー(個人番号)の市区町村から全国民への通知が開始されます。 企業においては、給与所得の源泉徴収票の作成、社会保険料の支払・事務手続きな どでマイナンバーの取扱いが必要となり、対象業務の洗い出しや対処方針の決定等、マ イナンバー制度への円滑な対応に向けた準備を行う必要があります。 各社におかれましては、政府の事業者向けマイナンバー広報資料や特定個人情報保護 委員会「特定個人情報の適正な取扱いに関するガイドライン(事業者編)」を参照の 上、実務上の対応準備を進めていただきますよう、お願いいたします。(2015/3/9 一般社団法人日本経済団体連合会) まだまだ未確定の要素が多いマイナンバー制度ですが、運用開始は着実に近づいていま す。経団連では、準備事項の一番目として、マイナンバーの記載が必要な書類の確認とマ イナンバー収集対象者の洗い出しを挙げています。その他、システム改修や社内規程の見 直し、従業員への周知など対応しなければならないことは多岐にわたります。貴社ではどの 程度準備が進んでいらっしゃいますか? 1 目次 • 人事労務ニュース • 「社会保険の適用拡大が 短時間労働に与える影響 調査」結果より • 特集① 社会保険の加入 条件が拡大します。 • 特集② 施行直前!改正 パートタイム労働法の対応 は完了しましたか? • ワンポイントチェック -民法改正案、通常国会 提出へ- • 人事総務 Q&A 実務相談 <労働契約申込みみなし 制度について> • 編集後記 「社会保険の適用拡大 が短時間労働に与える 影響調査」結果より 今月号は、少し古い調査ですが 右の特集から、労働政策研究・ 研修機構の掲題の調査結果より お伝えします。 ・調査時期:2012年7~8月 ・有効回答: 3,951社、5,317人 <事業所調査> 1)社会保険が適用拡大される 場合、短時間労働者の雇用管 理を見直すか(n=2,242) ・既に見直した 3.8% ・今後見直す(と思う) 53.9% ・特に何もしない(と思う) 42.1% 2)雇用管理等の具体的な見 直し方法 (n=1,294) (複数回 答) ・適用拡大要件にできるだけ該 当しないよう労働時間を短くし その分より多くの短時間労働者 を雇用 32.6% ・短時間労働者の人材を厳選し 一人ひとりにもっと長時間働いて もらい雇用数を抑制 30.5% ・適用拡大要件にできるだけ該 当しないよう、賃金設定や年収 水準設定見直し 24.3% ・労働時間や賃金水準等での見 直しは難しいので、短時間労働 者の雇用管理に係る全体的にコ スト削減を検討 14.4% <労働者調査> 1)現在の会社で短時間労働 者という働き方を選んだ理由 (n=5,317) (複数回答) ・自分の都合の良い時間帯や曜 日に働きたいから 41.2% ・勤務時間や日数が短いから 30.1% ・育児・介護等の事情があるから 26.0% 2)会社から労働時間の短時間 化を求められた場合の対応 (n=働く時間を増やして適用される ようにしたいと回答した労働者423) (複数回答) ・現在の会社を辞めて、適用対象に なることのできる会社を探す29.6% ・受けいれる 26.7% ・分からない・何とも言えない 29.3% 特集① 社会保険の加入条件が拡大します。 3月8日付の日経新聞朝刊1面記事(「短時間勤務で人材確保」)に便乗し、来年 10月に迫った社会保険(厚生年金・健康保険)の加入対象範囲の拡大についてご紹 介します。 まずは、この改正が行われることとなった背景は次のとおりです。 ①厚生年金等に加入できない非正規労働者が多いことから、セーフティネットを強化するこ とにより、社会保険の格差を是正する 。 ②働かない方が有利になる仕組みを取り除き、特に女性の就業意欲を促進する。 加入条件の変更点は、次のとおりです。 現行:週の所定労働時間が30時間以上 変更後(2016年10月~) ①週の所定労働時間が20時間以上 ②月給8万8,000円 (年収ベースで106万円)以上 ③勤務期間の見込みが1年以上 ※1 学生は対象外 ※2 従業員501人以上の企業に限って範囲を拡大 続いて、当改正に関する調査結果を確認します。 「平成25年版パートタイマー白書」(アイデム 人と仕事研究所)より、現在の週所定労 働時間別に、社会保険の加入要件が引き下がった場合、どのような働き方を望むのかを聞 いた結果です。 すでに社会保険に加入していると考えられる週30時間以上の層では、「特に気にせず働 く」が多くなっています。一方、加入条件の狭間に位置する週20~30時間未満の層で は過半数が、「保険料を支払わなくてすむように、時間や日数を調整して働く」と回答してい ます。 保険料を支払わなくてすむように、時間や日数を調整して働く 特に気にせず働く わからない 週10~20時間未満 60.0% 54.5% 週20~30時間未満 週30~40時間未満 22.6% 週40~50時間未満 11.1% 0% 20% 20.6% 29.3% 67.9% 77.8% 40% 60% 19.4% 16.2% 9.4% 11.1% 80% 100% 最後に、同白書から企業側の意向を確認します。 紙面の関係で詳しくは紹介できませんが、パート・アルバイトの雇用比率が高い企業ほど、 「労働時間を適用基準未満の時間に設定する」の割合が高くなっています。 「保険料負担が増えても、特にパート・アルバイトの 労働時間の調整は行わない」 「保険料負担が増えないよう、パート・アルバイトの 労働時間を適用基準未満の時間に設定する」 「パート・アルバイト雇用を減らし、正社員雇用を増やす」 「パート・アルバイト雇用を減らし、派遣や請負等の外部戦力を増やす」 39.2% 34.4% 4.4% 3.5% ご覧いただいた社会保険の加入条件拡大以外にも、無期転換権を始めとする労働契約 法改正(2012年改正済み)やパートタイム労働法改正(次ページ参照)など、非 正規・短時間労働者を取り巻く環境は大きく変わりつつあります。幅広い観点から、今後の 人材活用を考えることが求められていると言えます。 2 特集② 施行直前!改正パートタイム労働法の対応は完了しましたか? 4月1日の改正パートタイム労働法施行を間近に控え、あらためて改正法の概要をご覧いただくことで、企業として必要な対応を 確認します。特集①とあわせて、今後のパートタイム労働者を含む人材活用検討の参考にしていただければ幸いです。 ~主な改正内容~ 1.正社員との差別的取扱いが禁止されるパートタイム労働者(以下、パートタイマー)の範囲が拡大されます。 職務内容や人材活用の仕組みが正社員と同じにも関わらず、待遇は正社員に比べて差別することをパートタイム労 働法では禁止しています。今回の改正により、以下の2つが正社員と同じであるパートタイマーは、正社員と比べて待遇 面で差別してはいけないことになります。労働契約が無期であることが3つ目の要件とされていましたが、改正によって削 除され、範囲が拡大します。 ①業務内容・責任・・・・ 仮に正社員とパートタイマーでは周辺業務が異なっていたとしても、メインの業務が同じであれ ば業務内容は同じと判断します。責任は、権限の範囲や求める成果や期待、トラブル発生の 際に求める対応が、「著しく」異なるかどうかで判断します。 ②人材活用の仕組み・・ 転勤の有無(過去実績だけでなく、将来見込み含む)と範囲によって判断します。例えば、 正社員は全国転勤の可能性あり、パートタイマーはエリア限定での転勤可能性ありであれば 人材活用の仕組みは同一ではないこととなります。転勤の有無と範囲が同一の場合には、続 いて職務内容の変更の有無や昇進の範囲について比較し判断します。 2.「短時間労働者の待遇の原則」が新設されます。 正社員とパートタイマーの待遇を異なるものとする場合、その相違は、職務の内容(業務内容・責任)、人材活用の 仕組み、労使慣行などのその他の事情を考慮して、不合理なものであってはならないとの原則が新たに規定されます。 正社員とパートタイマーの待遇が相違していればすぐに不合理とされるのではなく、前記1の要素を考慮した上で、不合 理かどうかを判断します。 3.パートタイマーを採用したとき、説明義務が新設されます。 ①説明の時期・・・入社時に速やかに行うことが必要です。 ②説明の方法・・・口頭での説明が原則ですが、説明すべき内容が漏れなく記載され、簡単に理解できる内容の文書 を渡すことでの説明も可能とされています。 ③説明の内容・・・パートタイム労働法に基づいて実施している以下の各種制度。 具体的には、待遇の差別的取扱いの禁止(9条)、賃金の決定方法(10条)、教育訓練の 実施(11条。職務内容が正社員と同じパートタイマーには、正社員に実施する教育訓練を実施 しなければならないとの規定)、福利厚生施設の利用(12条)、正社員転換を推進するための 措置(13条)-です。 また、パートタイマーから説明を求められた場合には、③で説明した内容などが、なぜそのような制度となっているのかを 説明することが必要です。例えば、どの要素をどのように勘案して賃金を決定したのか、(パートタイマーには利用できな いものがある場合)教育訓練や福利厚生施設がなぜ使えないのかなどが考えられます。 4.パートタイマーからの相談に対応するための体制の整備が義務付けられます。 体制の整備とは、苦情を含めた相談に応じる窓口などを整備することで、個人が窓口となることも可能です。 パートタイマーを採用したときには、この相談窓口を文書により明示することが必要となります。労働条件通知書や締結 する労働契約書等に、窓口を記載することが考えられます。 ワンポイントチェック-民法改正案、通常国会提出へ- 2月24日、法制審議会(法務大臣の諮問機関)は、民法改正の要綱案をまとめ法務大臣に答申しました。今通常国会へ の提出が予定されています。民法の債権に関する規定の大幅改正は、1986年の制定以来初めてとなります。 一般法(民法)の大幅改正が、労働分野の特別法(労基法や労契法等)に与える具体的な影響は、今後の議論が待たれ ます。なお、日本労働組合総連合会(連合)は、民法改正要綱案に関する談話の中で、「労働政策審議会において民法改正 を踏まえた関係する労働法の改正の検討に速やかに着手するよう、政府に求めていく」としています。 3 人事総務 Q1 A1 Q&A 実務相談 <労働契約申込みみなし制度について> 派遣法改正に関するニュースの中で、たびたび目にする「労働契約申込みみ なし制度」について、派遣法改正案との関係などポイントを教えてください。 「労働契約申込みみなし制度」(以下、みなし制度)について説明します。 <ポイント1> みなし制度は前回の派遣法改正(2012年改正)によって成立した項目 です。同制度のみスタートが3年間先送りされました。そのため、現在議論され ている派遣法改正案(以下、改正案)が成立するか否かに関わらず、10月 になればみなし制度が施行することは決定しています。 <ポイント2> 派遣先(発注企業)が、労働契約を申し込んだとみなされてしまう要件(違 法派遣の種類)は次の通りです。 ①派遣の受入期間制限に違反して派遣を受け入れた場合 ②業務委託契約等が、いわゆる偽装請負の場合 ③派遣禁止業務に派遣を受け入れた場合 ④無許可・無届の派遣会社から派遣を受け入れた場合 ※①~④それぞれに該当することを知らずに、かつ、知らなかったことに過失がな ければ、この制度は適用されないこととなりますが、無過失であることを派遣先が 証明することは難しいのではないかとの見解もあります。 <ポイント3> 改正案では、専門26業務と自由化業務の区分が撤廃されています。仮に現 行法のままで、みなし制度の施行を迎えた場合、専門26業務としての契約に も関わらず、実態が自由化業務と判断されてしまうと、受入期間によっては上記 ポイント2の① 「派遣の受入期間制限に違反して派遣を受け入れた場合」にあ たることになります。このことから、派遣スタッフの申し出がなされるなど、派遣受入 の現場は混乱するというのが、1ページで紹介したニュース記事の見解です。 改正案が今国会で成立し、9月中に施行されたとしても、経過措置として専門 26業務と自由化業務の線引きが残ることも考えられます。派遣スタッフの業務 内容や請負・業務委託契約について、点検されることをおすすめします。 編集後記 株式会社アヴァンティスタッフ 本社 東京都中央区日本橋兜町6-7 ヒューリック兜町ビル 今月もお読みいただきありがとうございます。 先日、サードウェーブ(3度目の波)コーヒーとして話題のブルーボトルコーヒー清澄白 河店に行ってみました。青山店のオープン直後だったので、淡い期待を抱きながら外出の ついでに寄ってみたのですが、まあすごい行列。とても小さい子供連れで待てる状況では なくあきらめました・・・青山やもうすぐオープン予定の代官山に人が流れてくれるのを待つ ことにします。 本社代表 03-6703-8337 横浜支店 045-325-0211 大宮支店 048-645-6464 3度目と言えば(強引ですが)、「派遣法改正案、3度目も暗雲」との記事をご覧に なった方も多いのでは。民主党が、厚労省課長が「派遣はモノ扱い」と発言したことを批 判しているとのこと。実際の発言内容は次のとおり。「派遣労働というのが、期間が来たら 使い捨てというモノ扱いだったが、ようやく人間扱いするような法律になってきた」。 明らかに問題の多い現在の派遣法の改正を肯定的に捉えた趣旨の発言の一部のみを 取り出しての、あげ足取りとしか思えないのですが・・・これ以上議論を停滞させることな く、本質的な審議がなされることを望みます。(N) 九州支店 4 名古屋支店 052-229-1521 大阪営業部 06-6131-0602 092-711-2181 Web サイト www.avantistaff.com HRタイムズに関するご意見、 ご要望はこちらまでお願いします hrtimes@avantistaff.com
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