82 心エコーにて右房内腫瘍を指摘され発見に至った腎腫瘍の一例 ◎小林 美佳 1)、三村 隆典 1)、山本 みどり 1)、上野 里奈 1)、髙場 広美 1)、忠地 花代 1)、樋口 佳代子 2) 社会医療法人財団 慈泉会 相澤病院 検査科 1)、社会医療法人財団 慈泉会 相澤病院 病理科 2) 【はじめに】腎細胞癌の特徴の一つとして静脈内に進展す <心エコー>右房内に 4.7×2.1mm の可動性のある高エコー ることが知られており、下大静脈内腫瘍塞栓を伴う頻度は 腫瘤を認めた。内部エコーは不均一、形状不整。下大静脈 4~10%、そのうち右房まで進展するのは 8~14%と報告さ は同定できなかった。右室は拡大し、三尖弁逆流は中等度 れている。今回、右房内腫瘍を契機に発見された腎腫瘍の あり、推定右室収縮期圧 75~80mmHg と著明な肺高血圧を 症例を経験したので報告する。 呈していた。 【症例】88 歳 女性 <胸腹部造影 CT>右腎上極から肝背側へ延び、右横隔膜を 【主訴】右側胸部痛、呼吸困難 挙上する 165mm の巨大な腫瘤がみられ、右腎静脈から下大 【既往歴】高血圧 静脈、右房内に延びる腫瘍塞栓を認めた。肺塞栓、多発肺 【現病歴】1 週間前より体動に伴う右側胸部痛を自覚し、 転移も認められた。 近医にて心疾患に対する処方をされたが、改善されないた 【経過】現状と年齢により積極的治療は行われず、組織診 め当院 ER を受診された。 断には至らなかったが、画像診断より右腎癌の下大静脈を 【来院時現症】血圧 138/75mmHg、脈拍 113 回/分、体温 介しての右房内進展が強く疑われた。ご家族の希望により 38.2℃、SpO2 91%、下腿浮腫軽度 【検査所見】<心電図検査>洞調律、HR104bpm、完全左 緩和療法のため近医に紹介となった。 脚ブロック <胸部 X 線検査>CTR 58%、右横隔膜挙上 大静脈内に腫瘍が進展した転移性腫瘍も考えられる。正常 <血液検査>GOT 49U/L、GPT 29U/L、LDH 357U/L、CRP 下大静脈エコー像が見られない場合は、腫瘍浸潤像を見落 2.3mg/dl、HGB 10.9g/dl、トロポニン T 0.043ng/ml とさないように慎重かつ迅速に検査することが重要と考え <胸部単純 CT>両肺野に多発性の腫瘤陰影を認めた。 られた。 【まとめ】心エコーにて右房内に腫瘤がみられた場合、下 連絡先:0263-33-8600 内線(1408)
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