回復期リハビリテーション病棟での褥瘡発生状況調査とその対策 社会医療法人財団 慈泉会 相澤病院 回復期リハビリテーションセンター 筆頭演者 橋口彬典 共同演者 西村 直樹、関谷 俊一 【はじめに】 日本褥瘡学会実態調査委員会によると、平成 24 年度の一般病院(療養型病床を除く)褥瘡 発生率は 1.6%であった。一方、回復期リハビリテーション病棟での褥瘡発生状況に関する 報告は多くない。 【目的】 回復期リハビリテーション病棟に入棟した患者の褥瘡発生状況調査と原因分析を行い、多 職種合同で褥瘡予防対策を行った結果、一定の成果を上げたため報告する。 【対象と方法】 平成 27 年 4 月から平成 28 年 3 月に退院された 446 例のうち、DESIGN の D の項目にて 深さ d1 以上である 10 例を対象とした。調査項目は、疾患、部位、入棟から褥瘡発生まで の期間、基本動作に要する介助量、排泄形態、血清アルブミン値(以下 ALB 値) 、治癒に 要した期間とし、診療録より後方視的に調査した。調査後に原因分析を実施、多職種で検 討を行い、平成 28 年 7 月以降の入棟患者に対し新たな予防対策を講じた。なお、本報告は 個人を特定できる情報を含まないよう最大限に配慮を行った。 【結果】 疾患は中枢疾患 7 例、骨・関節疾患 3 例、部位は骨盤周囲 6 例、その他 4 例、入棟から褥 瘡発生までの期間は転棟後 1 週未満 5 例、1 週以上 2 週未満 4 例、2 週以上 3 週未満 1 例、 基本動作に要する介助量は全例監視ないし介助、排泄形態はオムツ使用患者 5 例、正常値 3.8g/dl の ALB 値は 9 例が低値を示した。治癒に要した期間は発症後 2 週未満 3 例、2 週 以上 1 ヶ月未満 6 例、転院まで遷延 1 例であった。予防対策開始後の褥瘡発生は 0 例であ った。 【考察】 先行報告では褥瘡発生の危険因子として、尿便失禁を伴う皮膚浸潤、栄養状態低下、自力 体位交換・座位保持の可否が含まれ、一般病院の褥瘡保有部位は骨盤周囲が半数以上を占 めるとしている。本調査においても、先行報告と同様の結果であった。また、新たな知見 として、入棟後 2 週以内の早期褥瘡発生が全体の 90%を占めている事実から、入棟初期か ら褥瘡予防対策を講じることの重要性が示唆される。
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