複合トラス格点部の実物大耐荷力実験 -白 虹 橋 -

複合トラス格点部の実物大耐荷力実験
はっこうばし
-白虹橋-
大阪支店
土木工事部
越島広次
大阪支店
土木工事部
佐藤拓也
技術本部
技術部
中井聖棋
大阪支店
土木技術部
堀内達斗
1.はじめに
下床版二次ケーブル
1
S2
8
.
6
本橋梁は京都府宇治市に位置する橋梁で,吊床版工法を用
いた PC 複合トラス橋である.この構造形式は珍しく,国内
での道路橋の実績も少ない.建設地点周辺には天ケ瀬ダムが
床版横締め
1
S
2
8
.6
斜材
S
M5
7
0
W
あり,宇治市の観光スポットの一つでもある.そのため,景
下床版二次ケーブル
1
2
S
15
.
2
観との調和を重視した橋梁構造形式が採用された経緯がある.
本報告は,実施工に着手する前に実物大格点部耐力確認実験
吊床版一次ケーブル
1
9
S
1
5
.
2
を行った際の内容を報告するものである.
図-3 主桁断面図
3.実験目的
本実験は,格点部の耐荷性能を確認することが目的である.
PC 複合トラス橋における鋼斜材とコンクリート床版の格点
部は,構造を成立させる上で重要な部位であるが,格点構造
の形式は標準化されていないのが現状である.このため,既
図-1 完成予想図
往の実績橋における格点構造は,既に耐荷性能が確認された
2.工事概要
形式を採用するか,新たな形式の場合には格点部を模擬した
本工事は,天ケ瀬ダム再開発事業の一環で既設白虹橋を下
流へ移設する工事である.国内に建設された PC 吊床版道路
実物大,あるいは縮小モデルによる載荷実験を実施し,耐荷
性能を確認した後に採用を決定している.
橋としては,本橋の支間長は 72.8m で,90m を越えるこれま
本橋梁では,格点構造が類似となる橋梁があるが,支圧プ
での実績に比較して小規模であるが,支間長に対してサグが
レートの補強リブがコンクリート内に埋設されることや,ビ
小さいことや,架設ステップにおいて自碇構造への構造系変
ルトアップによる角鋼管が使用されているなど相違箇所があ
換を行うことなどの特徴を有している.
るため実物大の載荷実験を行うこととした.これらの相違箇
橋梁概要を下記に,橋梁一般図を図-2 に,主桁断面図を図
-3 に示す.
所は景観を考慮して決められている(図-3)
.
実物大実験にした理由は,縮小部材の製作(溶接)が困難
工 事 名:白虹橋上部工架設工事
であること,および実物大にしたことにより格点部の組立,
工事場所:京都市宇治市宇治
斜材製作の施工性試験を兼ねることができるためである.
発 注 者:国土交通省近畿地方整備局
定着プレート
定着プレート
せん断抵抗鋼材
琵琶湖河川事務所
せん断抵抗鋼材
支圧プレート
補強リブ
(引張抵抗)
(引張抵抗)
支圧プレート
構造形式:自碇式 PC 吊床版橋
支圧プレート
+斜材
補強リブ
(吊床版工法を用いた PC 複合トラス橋)
支圧プレート
斜材四角形
斜材円形
橋長:77m,支間:73m,幅員:9.23~22.8m
支圧プレート
斜角:90°,荷重:A 活荷重
軸力
軸力
主要材料:PC 鋼材 19S15.2 12S15.2,斜材 SMA570W,
曲げモーメント
既往の形式
コンクリートσck=40N/mm2
橋長 7700
0
A
1
補強リブ
支圧リブ
曲げモーメント
白虹橋
図-3 格点部構造概要
A
2
3500
サグ量
橋軸方向
橋軸方向
4.試験体の形状
実験対象は,斜材が標準断面(250×250mm)で,設計荷重時
M
F
計画 H
.
W.
L
に最大軸力が作用し,コンクリート部材寸法が小さい下床版
の格点部とした.図-4 に供試体の概形及び格点部の構造を図
図-2 橋梁一般図
示する.
引張・圧縮斜材の支圧プレート周辺には,ひび割れが確認でき
8
0
0
3
20
0
1
0
06
0
01
0
0
たが,試験体側面には,ひび割れは観察されなかった.コンクリー
80
0
80
0
載荷方 向
1
5
5
0
引張
斜材
圧縮
斜材
ずみの 1.2 倍程度であった.これは,終局ひずみに対して十分な
余裕を有していた.
984
100
0
45゚
ト表面で測定された圧縮ひずみ最大値は,設計荷重時の許容ひ
2
5
0
×2
5
0
補強鉄筋の応力は 100N/mm2 以下であり設計荷重の許容値
を超える応力は発生しなかった.格点部には大きな損傷が認
められないことから,この格点構造は設計上必要とされる耐
引張斜材
圧縮斜材
定着プレート
力を有していると判断された.
定着プレート
4000
PC鋼棒
支圧プレート
補強リブ
PC鋼棒
3500
1.7×設計荷重 2926KN
支圧プ
レート
引張力
曲げモーメント
圧縮力
曲げモーメント
図-4 試験体概要
5.載荷方法
載荷実験は 20000kN フレーム(大阪工業大学所有)を用い,
圧縮斜材軸力(kN)
3000
補強リブ
2500
L2 地震 1969KN
2000
設計荷重(温度)1758KN
1500
1000
500
水平変位
0
0
5
10
15
20
25
30
水平変位量(mm)
図-5 および写真-1 のように試験体を寝かした状態で載荷した.
図-6 斜材軸力と水平変位の関係
格点部のコンクリート部を水平移動させるため,コンクリ
ート部と支持架台の接触面にはテフロンシートを設置し,コ
ンクリート部の両端付近にピン支持の水平鋼材を配置した.
5
0
0
0
kN
ジャッキ
試験体
載荷方向
A
1
20
0
0
20
0
0
0
kN
載荷フレーム
水平サ
ポー
ト材
テフロンシート
支持架台
A
1
4
00
0
平面図
A-A 断面図
図-5 載荷装置概要図
写真-1 実験状況
7.まとめ
載荷は,3 段階の漸増載荷とし,斜材の軸力が引張斜材およ
設計荷重,および終局荷重相当(設計荷重の 1.7 倍)の軸
び,圧縮斜材の設計荷重に達した段階でそれぞれ除荷し,そ
力を斜材に載荷した結果,近接目視,および,ひずみ測定値
の後,斜材に作用する設計荷重圧縮軸力の 1.7 倍の荷重(終
の結果より,構造物の耐力は確保されていることが確認でき
局荷重)まで載荷した.また,実験時には斜材のひずみを測
た.また,実物大供試体としたことで斜材の施工性確認もで
定することにより斜材の軸力を確認した.
き,今後の製作にも反映させていきたい.試験実施にあたっ
6.実験結果
6.1 圧縮斜材軸力が設計荷重時に達した時
て,施設利用及び助言を頂いた大阪工業大学関係者には深く
感謝いたします.
格点部には,大きな変状や,ひび割れは認められなかった.
コンクリート表面のひずみの測定値は,設計荷重時の許容ひ
Key Words:複合トラス,耐力確認実験
ずみ以下であった.補強鉄筋の応力は 100N/mm2 以下であり
設計荷重の許容値を超える応力は発生しなかった.そのため,
格点構造は使用性の要求性能を満足するものと判断できた.
軸力が L2 地震時相当に達した時も同様であった.
6.2 縮斜材軸力が設計荷重時の 1.7 倍に達した時
越島広次
佐藤拓也
中井聖棋
堀内達斗
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