広幅員でバチ形状を有する中空床版橋の施工 -石手 川 橋-

広幅員でバチ形状を有する中空床版橋の施工
い し て がわ
-石手川橋-
大阪支店
土木技術部
藤原孝司
大阪支店
土木工事部
圓尾直信
大阪支店
土木工事部
深澤俊雅
大阪支店
土木工事部
森石英信
1.はじめに
第三施工区間
P
2
8
P
29
第四施工区間
E
E
P
30
第 五施工区間
E
第六施工区 間
E
19
00
250
0
190
0
石手川
傍 示川
プ橋が接続するため,広幅員であるうえ,幅員が複雑かつ大
P
31
E
190
0 1
2200
P
27
2500
13
00
7
5
第二施工区間
E
200
600
2
7900
18
300
P
26
250
0
2860
0
18
500
第一施工区 間
E
3300
NO.
63+79
.000
平成2425年度 石手川橋上部 工事
6径間連続PC中空床 版橋 L=1
73100
31
000
28700
3100
0
1
250
0
P
2
5
2
4800
126
00
の平面線形上にあり,P31 支点の終点側には ON,OFF ラン
200
500
124
00
版橋である.本橋は,R=600m とクロソイド曲線(A=300m)
NO.6
2+5.5
00
11
900
石手川橋は,松山外環状道路に架かる PC6 径間連続中空床
300
0
推定支持層 線
きく変化する.また,傍示川および石手川の 2 河川を跨ぎ,
石手川 橋
その交差条件から斜角が 90°3′55″~69°51′27″となる
6径間連 続PC
中 空床版橋
25500
31
000
L=173
500
28
700
28600
28
700
傍
手
示
川
川
などの構造的な特徴を有している.このように複雑な構造で
3100
0
石
あることから,詳細設計では想定されていない挙動が蓄積さ
第一施 工区間
第二施 工区間
れ,構造物完成時には想定外のたわみが主版に発生すること
第三施工 区間
第四施工 区間
第五施工区間
第六施工区間
が考えられた.
本稿では,施工前および施工中に実施した対策の中で,①
架設用トラスのたわみ測定,②コンクリート打設時荷重の偏
載荷対策,③主版への影響を最小とする緊張順序の決定,の 3
項目について報告する.
図-1 橋梁一般図
P26支点部
24022
445
橋梁概要を下記に,完成写真を写真-1,橋梁一般図を図-1,
断面図を図-2 に示す.
640
13256
13241
445
道路中心線
1300
900400
200
2.工事概要
9875
9250
4.047%
φ
13001038
300
50
10
4.047%
13@1400=18200
20822
15841300
300
工 事 名:平成 24-25 年度 石手川橋上部工事
工事箇所:愛媛県松山市市坪西~出合
P30支点部
34615
445
16793
16168
発 注 者:国土交通省四国地方整備局
橋
長:173.500m(CL 上)
支 間 長:24.8m+2×31.0m+28.7m+28.6m+27.9m(CL 上)
16931
16916
445
道路中心線
1300
900400
200
構造形式:PC6 径間連続中空床版橋
640
1.859%
φ
50
10
19@1400=26600
31415
1300 2339
300
有効幅員:22.566m~34.500m
2.000%
2476 1300
300
図-2 断面図
3.たわみ対策
3.1 架設トラス梁のたわみ測定
本施工に使用した架設トラスは,
支間長が 26m と長いため,
たわみ量も大きくなることから,架設トラス梁の正確なたわ
みを把握することが重要である.そのため,カウンターウエ
イト(水タンク)を用いた事前の試験載荷を実施した.
(図-3)
写真-1 完成写真(終点側から)
図-3 架設トラスのたわみ計測
事前試験により実測値と解析値を比較すること,支保工梁
のトラス部材接続部や支点部での敷材のなじみ等,たわみ以
外に生じる変位を事前に把握することで,たわみ管理の精度
鉛直変位差は,1mm 程度であったことから,本橋では横断方
向の変位差の影響はないものとして,たわみ管理を行った.
・一般的な緊張方法
(N/mm2)
を向上させた.
3.2 コンクリート打設時荷重の偏載荷対策
レーザー距離計による変位計測システムにより,架設トラ
最大=2.30N/m
m2
ス梁の変位を横断方向 8 ヵ所同時に監視し,打設中のたわみ
差が設定した制限値の 10mm を上回らないよう,コンクリー
P26
ト投入箇所を調整した.計測状況を写真-2 に示す.
計測した結果は,直接パソコンに取り込み,常時変位差を
確認できる体制を整えた.打設箇所には,たわみ差が 8mm を
超えると警告できるように,専用マイクと回転灯を設置した.
P25
図-4 FEM 結果(橋軸直角方向応力度)
図-5 緊張順序
・緊張装置を 4 台使用した緊張方法
(N/mm2)
写真-2 計測状況
3.3 主版への影響を最小とする緊張順序の決定
最大=1.24N/mm2
<1.38N/mm2
本橋は,広幅員でバチ形状を有しているため,一般的な緊
張順序(1 組の緊張装置を用いて断面の中央から外側に向かっ
て順次緊張)でプレストレスを導入すると,主桁の変形量(上
P26
向きのそり量)が横断方向で不均衡となることが考えられた.
その場合,設計で想定していない主桁横断方向の変形や支間
P25
中央部に橋軸方向のひび割れが発生する懸念がある.
そこで,3 次元 FEM を用いて緊張作業中に主版に発生する
図-6 FEM 結果(橋軸直角方向応力度)
応力が最小となるように,緊張方法や緊張順序を決定した.
FEM の入力値には,試験練りにて実測したコンクリートの
単位質量と静弾性係数を使用し,精度の向上に努めた.
一般的な緊張方法を実施した場合,図-4 に示すとおり,主
ケーブルの約半数を緊張した状態で,2.0N/mm2 を超える引張
4.おわりに
本橋では,これらの対策を実施した結果,ひび割れの発生
は確認できなかった.本報告が今後の同種工事の参考となれ
ば幸いである.
応力が発生することが確認できる.そこで,本橋では,複数
の緊張装置を使用することで,発生応力の低減を図った.
解析の結果,4 組以上の緊張装置を使用すると,引張応力が
Key Words:斜角,広幅員,たわみ
改善されることが確認できた.4 組の緊張装置を使用した第一
施工区間である P25-P26 径間の緊張順序を図-5 に,橋軸直角
方向応力度が最大となる緊張順序-2 の段階での FEM 結果を
図-6 に示す.このように,緊張作業時に発生する引張応力度
が低減され,曲げひび割れ強度以下となることを確認した.
たわみについては,自重+プレストレスによる断面方向の
藤原孝司
圓尾直信
深澤俊雅
森石英信