土木学会第64回年次学術講演会(平成21年9月) Ⅰ-356 鋼少数主桁橋のフルプレストレス場所打ち PC 床版に関する課題と検証(その 2) -斜角 60°で生じる主桁撓み差による床版付加応力の影響検証パシフィックコンサルタンツ㈱※1 正会員 東京コンサルタンツ㈱ ※2 ○濤川 正会員 功 正会員 金子 傑 坂井田巌 正会員 村西隆之 岩城達思 正会員 小村辰彦 1.はじめに 本橋は,鋼道路橋のコスト縮減を目的に,高耐久性 PC 床版を用いた 2 主 I 桁橋とした.床版形式は,場 所打ち PC 床版を採用し,凍結防止剤散布による塩害 対策が求められる地域であったことから,フルプレ ストレス構造とした.対象橋梁は鋼 5 径間連続非合成 2 主 I 桁([email protected]+32=181m)で端支点部 60°, 図-1 撓み差による床版付加応力(概念図) 中間支点部 65°の斜角を有する構造である.また中間 支点部・端支点部の横桁は面外方向の桁剛性確保,騒 A2 部検証断面 音の低減等の観点からコンクリートを巻き立てた構 造を採用した.これらの構造特徴を踏まえ,以下の 2 点に着目した検証を行った。なお検証手法は有限要 素法(以下,FEM 解析と称す)を用いた解析手法を採 用した. 図-2 解析モデルと検証箇所 (1)剛な横桁を有する部位での場所打ち PC 床版のプ じる活荷重撓みによる影響を検証することから全橋 レストレスロスに対する検証 をモデル化した.なお,床版には弾性変形等による (2)斜橋に起因する同一断面内での主桁の撓み差から プレストレス減少量を見込んだ有効プレストレスを 生じる PC 床版付加応力に対する検証 与えた.検証部位は 1)図-2 に示す斜角が 60°である 本論文では(2)斜橋に起因する同一断面内での主桁の A2 部と 2)中間支点部の中で発生曲げモーメントが 撓み差から生じる PC 床版付加応力に対する検証結 最大である P1 部(斜角 65°)の 2 箇所を選定した. 果を報告する. 表-1 対象橋梁諸元 橋長 総幅員 斜角(最小値) 181m 11.39m 端支点60°,中間支点65° (2)荷重条件 3.斜角に起因する主桁撓み差に対する検証 に示す 3 ケースを設定し L 荷重を載荷した. 同一断面上で G1・G2 桁の撓み差が得られるように 「1)A2 部着目時」と「2)P1 部着目時」について表-2 3.1 解析の目的 上部構造が斜橋の場合は,同一断面内で主桁に撓 み差が生じるため,この捻り力(図-1)が床版に付加 応力と有害なひび割れを発生させることが懸念され 表-2 床版付加応力解析の荷重載荷パターン 1)A2部着目 2)P1部着目 CAS E1 る.よって,主桁撓み差による床版への影響検証を CAS E2 FEM 解析により実施した. 3.2 解析モデル CAS E3 (1)解析モデルと検証部位 本解析では図-2 に示すように, G1 桁・G2 桁に生 キーワード 連絡先 斜角 60°,鋼 2 主 I 桁, フルプレストレス場所打ち PC 床版 ,主桁撓み差,床版付加応力 ※1 〒163-0730 東京都新宿区西新宿 2 丁目 7 番 1 号 ※2 〒168-0063 東京都杉並区和泉 3 丁目 1 番 8 号 -711- パシフィックコンサルタンツ㈱ 東京コンサルタンツ㈱ TEL03-3344-0932 TEL03-3325-7581 土木学会第64回年次学術講演会(平成21年9月) Ⅰ-356 3.3 解析結果 図-3 に A2 部着目時における,主桁活荷重撓み差 最 大 時 (CASE1- 主 桁 撓 み 差 15mm) と 最 小 時 (CASE2-主桁撓み差 4mm)で各々床版断面に発生し た応力図(D+L+PS) を示す.本図は横桁 C18-C19 間の断面での応力図である.図-3(1)は主桁活荷重撓 み差最大時の場合であり,床版上面のコンクリート (1)主桁撓み差15mm(荷重載荷CASE1) 応力度は-2.6~-3.0N/mm2 程度であった.図-3(2)は主 桁活荷重撓み差最小時の場合であり,床版上面のコ ンクリート応力度は-2.0~-3.5N/mm2 程度であった. また P1 部着目部についても同様な照査を行った結 果,主桁活荷重撓み差が最大時(CASE2-主桁撓み差 12.4mm)と最小時(CASE1-主桁撓み差 0.6mm)での床 版上面のコンクリ-ト応力度は,各々-0.9~-1.8N/mm2, -1.0~-1.6N/mm2 であった. 以上より,A2 部,P1 部に生じる主桁撓み差の違い (2)主桁撓み差4mm(荷重載荷CASE2) 図-3 床版応力状態(A2部位) による床版コンクリート応力度に明確な差異は認め られなかった. 図-4 に各着目部での床版上面に発生している応力 コンター図を示す.コンター図による概観において も主桁撓み差による応力状態に明確な差異は認めら (1)荷重 CASE1 れなかった. 図-4.1 床版上面応力コンター図(A2 部着目) (2)荷重 CASE2 図-5 に A2 部検証断面における活荷重のみによる 床版応力図を示す.主桁撓み差最大時と最小時を比 較した結果,床版上面コンクリート応力度の差異は (1)荷重 CASE1 (2)荷重 CASE2 図-4.2 床版上面応力コンター図(P1 部着目) 0.1N/mm2 程度であった.以上より本橋の橋梁諸元で は活荷重自体による応力度の差異が 小さかったことが,主桁撓み差によ る床版付加応力の影響を小さくした 一因として考えられる. 4.まとめ 本橋梁では,斜角 60 度での主桁の 撓み差による床版への付加応力度の 影響は小さく,安全性を確認できた. (1) 主桁撓み差15mm (荷重載荷CASE1) 図-5 謝辞:場所打ち PC 床版の検証を行 うにあたり,ご協力頂いた(社)日本橋梁建設協会各 位,(社)プレストレスト・コンクリート建設業協会 各位,および検証結果にご意見を頂いた長岡技術科 学大学 丸山久一副学長に,謝意を示します. (2)主桁撓み差 4mm (荷重載荷 CASE2) 活荷重による床版応力状態(A2 部位) 参考文献 1)PC 床版設計・施工マニュアル(案)平成 15 年 5 月 (社)プレストレスト・コンクリート建設協会 2)PC 床版施工の手引き・場所打ち PC 床版編 平成 16 年 3 月,(社)日本橋梁建設協会 -712-
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