建設工学実験(コンクリート実験) 第4回 プレストレストコンクリート(PC)はりの破壊試験 1. プレストレストコンクリート 1.1 特徴 ケーブル(曲げて設置するのは 支点上で負曲げを受けるため) a)RC に比べて長スパン化が可能 載荷 b)断面を有効利用でき軽量化が可能 除荷 c)除荷時にひび割れが閉じる ひび割れ発生 1.2 ひび割れは閉じる プレストレスの導入方法と有効プレストレス プレテンション方式 :緊張してから打設・硬化 緊張力 ―(付着力)→ 断面圧縮応力 ポストテンション方式 :打設・硬化してから緊張・固定 ボンド式 緊張力 ―(定着部反力)→ 断面圧縮応力 :グラウトあり(コンクリートと鋼材を一体化) アンボンド式 :グラウトなし ☆ 有効プレストレス ← PC 鋼材のリラクセーション,コンクリートのクリープ,定着部摩擦など :有効プレストレス, :導入プレストレス, :有効係数(一般に 0.8) 2. プレストレストコンクリートの曲げ耐力の算定 2.1 対象とする PC はり (ボンド式ポストテンション PC はり) 計算に用いる材料強度など コンクリート 圧縮強度 f’c (N/mm2) 引張強度 f t (N/mm2) PC 鋼棒 ヤング係数 Ec (N/mm2) 11 有効プレストレス 2.2 設計値: 実測値: 80.0 降伏強度 fpsy (N/mm2) ヤング係数 Eps (kN/mm2) 公称断面積 (mm2) 1210 200 95.03 ※ 有効プレストレスが左の値になるように, 導入プレストレスを調整してある. プレストレス導入時の断面初期応力分布 偏心軸圧縮力 心軸圧縮力 (有効プレストレス)が作用するときの断面応力分布は,曲げモーメント および中 が個別に作用した場合の応力分布の合成として表される。したがって,プレストレス導入時 の断面の上縁および下縁における初期応力 :断面積, および は以下の式で求められる(引張応力を正とする)。 :断面係数, :偏心量(図心から 鋼材までの距離) 1 建設工学実験(コンクリート実験) P + → M ( P e) P 1 引 圧縮 上式より,上縁応力は以下で表される(引張を正)。 e + したがって,上縁で引張応力が発生しないための条 件は,導入プレストレス → の大きさによらず 2 圧 軸力 曲げモーメント 初期応力分布 2.3 PC はりのひび割れ発生荷重 一般に,曲げモーメント によって生じる引張縁応力 力状態の断面に曲げモーメント は で表されるが,2.2 で求めた初期応 が作用した場合,結果的に引張縁応力は には,この引張縁応力がコンクリートの引張強度 に達する( となる。ひび割れ発生時 )ので, 1 圧 + 圧 → 2 2.4 PC はりの曲げ耐力 (曲げ引張破壊耐力) 圧 引 引 ft 初期応力分布 曲げモーメント ※ PC 鋼材が降伏する場合は,曲げ耐力に与えるプレストレスの '𝑐𝑢cu 効果はほとんどない。 0.85 0.85 f 𝑐'c 0.8x 0.8 x (1) 計算における仮定 PC 鋼材が降伏した後に圧縮縁コンクリートが圧壊 C d h f 𝑝𝑠s > 𝑝𝑠𝑦 sy (2) 中立軸位置 𝑝𝑠𝑦 sy ひずみ分布 T 応力分布 (3) PC 鋼材降伏のチェック PC 鋼材ひずみ 降伏ひずみ PC鋼棒の応力-ひずみ関係 𝑝𝑠 であることを確認する。 𝑝𝑠𝑦 明確な降伏点が 表れない (4) 終局曲げモーメントおよび曲げ耐力の算定 Eps 3. PC はりの載荷実験 3.1 実験の目的 O 0.002 𝑝𝑠𝑦 𝑝𝑠 ポストテンション式 PC はりの載荷試験を通じて,PC 部材の特性と破壊形式を把握し,RC はりとの相違につい て学ぶとともに,事前の耐力計算結果と比較して計算の妥当性を確認する。 実験の手順 (1) 試験体の準備(TA が実施) ① 5cm 間隔のマス目を試験体側面に記入する(ひび割れ観察)。 2 CL 200mm 150mm 3.2 建設工学実験(コンクリート実験) ② 側面上縁にひずみゲージを貼る(圧縮縁 2 枚:両サイド)。 ③ 試験体を載荷装置に設置し,計測機器を配線する。 ④ 所定のプレストレスを導入し,グラウトを注入する。 (2) 計測項目 ① 載荷荷重(ロードセル)とスパン中央のたわみ(変位計) ② 圧縮縁コンクリートひずみ(×2)→ 平均値とする ③ PC 鋼材ひずみ(スパン中央部,せん断スパン中央部×2) ④ プレストレス荷重(ロードセル) ※ 参考値 (3) 載荷方法 ・ひび割れが目視で確認できるまで荷重を漸増させ,試験体表面(載荷点間)を注意深く観察する。 ・ひび割れ発生が確認できたら,それをペンでなぞり,ひび割れ発生荷重を記録する. ・PC 鋼材の降伏前後で除荷して,ひび割れが閉口するのを目視で確認する。 ・載荷を再開し,破壊まで荷重を増加させる。 ・破壊後は,新しく発生したひび割れを全てペンでなぞる。 (4) 注意事項!! PC はり載荷時には,PC 鋼材を固定している定着部がはじけ飛ぶ可能性がある。万が一に備え,はりの長手 方向には絶対に立たないようにすること。観察は必ずはりの側面から行うように。 3.3 レポート (1) 計算結果と実験結果の一覧表(計算過程は不要) グラフは「折れ線」ではなく (2) 荷重-たわみ関係(縦軸:荷重,横軸:たわみ) 「散布図」で作成せよ! (3) 荷重-ひずみ関係(縦軸:荷重,横軸:圧縮縁コンクリートひずみ および 中央 PC 鋼材ひずみ) (4) ひび割れ図 (5) 実験結果に関する考察 <考察のポイント> ・ひび割れ発生荷重や耐力の計算値は,実験値と比べてどうであったか。 ・荷重-たわみ関係において,グラフの傾きが変化したときに何が起きたか(荷重-ひずみ関係やひ び割れ図とも見比べて考察せよ) 。 ・荷重-ひずみ関係において,計算における仮定(圧壊前に PC 鋼材が降伏)は成立していたか。 ・ひび割れ図において,梁中央の曲げひび割れはどの高さまで進展したか。その高さと計算上の中立 軸位置との関係はどうなっているか。 ・その他,気付いた点。 (6) 事後課題 有効プレストレスを 40 kN および 60 kN としたときの曲げひび割れ発生荷重を算定し,プレストレ スの導入レベルによってひび割れ発生荷重がどのように変化するかを確認せよ. (7) 感想 荷重 (kN) 計算値 実験値 ひび割れ発生荷重 終局荷重 3
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