前立腺癌に対する放射線治療予定の患者様へ SpaceOAR のご案内 臨床使用:前立腺癌放射線治療前 SpaceOAR 注入のご案内 〜前立腺癌放射線治療における副作用軽減のための、新手法〜 当院ではこの度、前立腺癌の放射線治療を開始される患者様を対象に SpaceOAR(日本で の保険収載前使用)を行います。この臨床使用は、前立腺癌の放射線治療による副作用を より簡便で効果的に軽減することを目的としたもので、現在日本では行われていない新手 法を導入する足がかりになるものです。 現在、募集枠に若干名の余裕があります。また、通常の治療に関する費用はかかりますが、 本臨床使用に参加されることによる費用は一切かかりません(放射線治療痔帯の費用は別 です) 。対象となる患者様で、参加、あるいは詳細の説明をご希望の方がいらっしゃいまし たら、後述の連絡先までご連絡ください。 臨床使用の内容 ○前立腺癌の放射線治療 当院も含め、最新の前立腺癌に対する放射線治療は IMRT(強度変調放射線治療)と呼ばれる 技術を用いて行っています。IMRT では、放射線を腫瘍(前立腺)に集中させ、周囲の臓器(直 腸、膀胱)の被ばくを減らすことで、副作用を減少させることができます。しかし、前立腺 と密着している直腸に対しては線量を下げることが難しく、副作用として直腸出血は一定 の割合で起こってしまうのが現状です。(当院放射線治療部門ホームページ「手術との成績 比較 前立腺癌」 「設備紹介 IMRT」参照) ○SpaceOAR による直腸出血予防 今回試みる SpaceOAR 法は、直腸出血のリスクを軽減するために考案されました。前立腺と 直腸の間にポリエチレングリコール素材 (SpaceOAR)を注入し、SpaceOAR が前立腺と直腸の 間に隙間を作ることで直腸への被ばくを減らす方法です。 ・SpaceOAR の主成分はポリエチレングリコールエステル化合物です。注入時は液体状で、 細い針を使ってエコー下で前立腺と直腸の間に注入します。 ・液体状の SpaceOAR が前立腺と直腸の間に広がり、両者の間に隙間を作ることによって、 直腸への被ばくを減らします。米国の臨床試験では、SpaceOAR 10 ㏄の注入によって 97.3% の患者様で直腸への照射量が 25%以上減少したと報告されています。 ・約 3 か月間体内で形状を保ち、6 か月程度でゆっくりと自然吸収されます。 ・SpaceOAR は海外ではすでに臨床的に使用されており、原料であるポリエチレングリコー ルエステル化合物は、脳外科手術における硬膜開頭時の補填剤などとしても臨床現場で使 用されているため、安全性は問題ないといえます。 対象と日程 対象:前立腺癌(低~中リスク)と診断されており、これから放射線治療を行う予定の患者 様 日程:12 月 2 日の 15:30-16:30、3 日の 11:00-12:00 と 13:30-14:30、4 日の 11:00-12: 00 と 13:30-15:30 ・上記日程のいずれかの日に、東京大学医学部付属病院にお越しいただきます。 ・放射線治療外来の処置室にて SpaceOAR の注入を行います。CT/MRI の撮影、注入と測定を 含め、所要時間は 2-3 時間です。 ・当院で処置を行うのはこの 1 日のみで、その後の治療はかかりつけの病院で通常の放射 線治療を受けていただきます。もちろん、当院での治療もご希望があれば可能です。 ・留置された SpaceOAR は 6 ヶ月程度で自然に吸収されるため、除去のための処置は必要あ りません。 ・個人情報の保護を徹底し、臨床使用の結果は匿名化の上、参加者の皆様にご報告します。 対象となる患者様で参加、あるいは詳細の説明をご希望の方がいらっしゃいましたら、下 記連絡先までご連絡ください。 東京大学医学部附属病院 放射線科 講師 山下英臣 (Tel: 03-5800-8667、内線 37408) 2015 年 10 月 29 日作成
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