住み慣れた地域での終活を支援する 癌終末期医療の

住み慣れた地域での終活を支援する
癌終末期医療の取り組みについて
富山労災病院 泌尿器科
石浦 嘉之
はじめに
人生の締めくくりを住み慣れた環境で身近な
方々と一緒に過ごしたいという気持ちを多くの
方が持っておられます。
本邦では癌患者の在宅死は7-8%。
当科では癌終末期患者が住み慣れた地域
(魚津)でより快適に過ごせることを「がん患者
への終活支援」と掲げ重点化しております。
患者背景
平成24年2月~25年4月の14カ月間で、当科の診
療を受け、癌死された患者 9名
全員魚津市在住でがん告知が行われている。
性: 男性 7名
女性 2名
年齢:62歳-91歳 (中央値 74歳)
疾患名: 前立腺癌 3名、 腎細胞癌 3名、
腎盂尿管癌 2名、 尿膜管癌1名
癌死患者9例のがん治療の内容
前立腺癌(全3例)
内分泌療法→エストラサイト→化療
内分泌療法→エストラサイト
腎細胞癌(全3例)
なし
分子標的治療薬
手術→インターフェロン
腎盂尿管癌(全2例)
手術
化学療法(GC)
尿膜管癌(全1例)
なし
1例
2例
1例
1例
1例
1例
1例
1例
癌死9例の緩和医療の内容
院内多職種疼痛緩和チームによる診療
鎮痛剤の投与
麻薬投与
8例
7例
8例
うちNSAIDs単独1例
血尿への経尿道的手術
症状緩和目的の照射
末梢血管荒廃へのCVポート留置
1例
3例
2例
他の医療機関とのかかわり
泌尿器科からの紹介
あり 3例
富山大学付属病院、 富山県立中央病院、 小
泉クリニック 各1例
訪問診療(含む多職種往診)による終末期診療
5例 船崎内科小児科医院、吉島内科クリ
ニック、浦田クリニック、みのう医科歯科クリニック
うち在宅での看取り
3例
浦田クリニック、みのう医科歯科クリニック
転帰
在宅死
3名
①癌死を受容(全例)。 ②主たる介護者は配偶者(全例)。
③血尿などの排尿異常なし(全例) 。 ④病院嫌い(2例)。
1例で娘が介護従事者。
病院死(労災病院) 6名
2例は在宅診療を利用し、再入院。
4例は在宅医療チームを利用せず。
在宅死3例,往診併用病院死2例,病院単独4例
影響しうる因子について
性 年 疾患 癌治療 死受容 配偶者 症状 病院
1,F 83 腎癌 手術,IFN ◎
86歳 痛み
2,M 71 腎癌 なし
◎
健在 痛み 嫌
3,M 81 腎癌 分標薬 ◎
健在 呼吸 嫌
4,M 71 腎盂癌 手術 ○~△ 健在 腹水
5,F 62 尿膜管 なし
◎ 死 独居 血尿 嫌
6,M 91 前立腺 内分泌 △
認知症 排尿痛
7,M 73 前立腺 内分泌 △ 死 息子 血尿
8,M 74 前立腺 内+化療×→○ 健在 痛み
9,M 75 尿管癌 化療
×
担癌 浮腫
在宅死3例 No1-3, 往診併用病院死2例 No4-5, 病院単独4例 No6-9
本邦
癌患者の
在宅死
7-8%
J.Natl.Inst.Public Health,2006; 55(3)225
患者は自宅で療養したいか入院したいか
当科
全9例
在宅死
3例 33%
病院単独
4例 44%
J.Natl.Inst.Public Health,2006; 55(3)225
遺族調査による死亡場所ごとの「望んだ場所で最期を
迎えられた」「自宅を希望していた」割合
Palliative Care Research 2012; 7(2): 403-407
望んだ場所での最期だったと
思わず
思う
自宅を希望
一般病院 241(36.1%) 244(36.5%) 182(27.3%)
(n=668)
緩和病棟 70(28.2%)
17(51.2%)
57(23.0%)
(n=248)
自宅
4(1.8%)
204(92.3%)
(n=221)
自宅死亡を希望される割合(本邦、推定)
31.2%
当科の方針
●適応となる癌治療、緩和医療を提示し、緩和医
療は積極的に行う。
●病状、心情、社会的要因について把握する。
●病状と在宅での終末期医療の有用性を本人や
家族に説明し、意向を尊重して方針決定する。
●家族が市外在住の場合は他院紹介も提示。
1
2
3
4
在宅(再入院可)
入院(外泊併用 もしくは 入退院の繰り返し)
長期入院(後方支援病院への転院も検討)
市外紹介(含むホスピス)
終末期患者に対する当院でのとりくみ
1、多職種で構成した緩和医療チームによる回診
(内科医師、精神科医師、薬剤師、看護師)
2、癌相談支援センターや医療相談室の常設化
3、がん診療連携拠点病院として、市内の医療福祉関係
者と連携した在宅医療
4、魚津市報での緩和医療や在宅診療の啓蒙
タイトル : がん患者への終活支援について
終末期患者に対する魚津市でのとりくみ
1、チーム「メディカルネット蜃気楼」
医師会が中心となり、医師、歯科医師、薬剤師、看護師、
介護士、ケアマネージャーなどといった医療福祉関係者が
顔の見えるコンパクトな関係で連携して在宅医療を提供。
2、定期的な勉強会
在宅医療サービスの向上を目的に市内の医療福祉関係
者が定期的に勉強会を開催。
「在宅で看取った終末期腎癌事例検討会」では 121名の関
係者が出席
3、在宅を強化する政策医療
魚津市職員も含めた勉強会を開始
普及啓蒙活動
1、がん患者の在宅療養支援事例検討会
(H24.7)
2、魚津市報(H25.1-2)
3、富山県泌尿器科医会(H25.4)
4、病診連携症例検討会(H25.5)
結語
これまで多くの先生方や医療福祉従事者にお世話
になったことをお礼申し上げます。
在宅死を希望される方は3割程度。
遺族の視点では在宅死が最も希望充足感が強い。
「住み慣れた地域での終活を支援する」という理念
を市内の医療福祉従事者と共有し、サービスの向上
に努めていきます。
今後もいっそうのご指導、ご協力をお願い致します。