修 士 論 文 の 和 文 要 旨

修 士 論 文 の 和 文 要 旨
大学院
電気通信学研究科
氏
論
名
文
題
目
博士前期課程
荒木
量子・物質工学専攻
秀夫
学籍番号
0433003
分子内S…S,S…O接触を持つジスルフィド化合物の
トポロジカル解析
これまで本研究室では、特に硫黄原子を含む超原子価化合物に注目し、ファン
デルワールス半径の和よりも短い分子内接触を持つ化合物の電子密度分布に関し
て研究を行ってきた。そこで、本研究では、短い分子内接触を持つジスルフィド
化合物に注目し、その分子内S…S、S…O接触に関して電子密度分布について検
討を行った。また、2003年に機器分析センターに導入された、CCD型単結晶X線
回折装置の評価も行った。
bis[8-( p -methoxy-phenyl-sulphanyl)naphthyl]-1,1’-disulfide (A)は、S原子4つ
がほぼ直線的に並び、S S結合と2つの短いS…S接触(約2.99Å)を持っており4中心
6電子結合を形成していると考えられる。また、bis(2-nitrophenyl)-disulfide (B)
は、S原子2つとO原子2つがほぼ直線的に並び、S S結合と2つの短いS…O接触(約
2.60Å)を持っている。これら化合物の分子内相互作用について検討するために、
X線回折データを多極子展開法で解析を行い、電子密度分布を検討した。
化合物A及びBのModel deformation mapから、内側のS原子のホールに外側の
S原子(A)及びO原子(B)の孤立電子対が伸びている様子を確認し、さらに電子密度
分布のトポロジカル解析から、分子内の2つのS…S間(A)、S…O間(B)に静電的な
相互作用がある事が表1中の H ≥ 0である事から分かり、化合物Aにおいては4中心
6電子結合の特徴を確認した。さらに、トポロジカル解析の結果から、これら分
子内接触の解離エネルギー(表1中の D 値)を求め、この比較からS…O接触がS…S
接触よりも強い相互作用であることが明らかとなった。また、化合物Bは分子構
造がほぼ同様で2種類の結晶形を持つ、多形であることが明らかとなった。
CCD型単結晶X線回折装置に関しては、標準試料とされるcytidine、化合物Aお
よびB( 形)でX線回折実験を行い、多極子展開法による電子密度分布の精密化に
成功した。回折強度の誤差の見積もりに不安を残すものの、新しい回折装置でも
電子密度分布解析を行うに十分な精度の測定が可能である事を明らかにした。
H3CO
S S
OCH3
S S
表 1.
分子内接触に関するトポロジカルパラメータ
図 1. 化 合 物 A
化合物A
NO2
S
S
O2 N
図 2.
(eÅ -3 )
化合物B
2
(eÅ -5 )
D (kJ/mol)
H (kJ/mol)
S(1)… S(2)
0.140
1.382
18.382
0.000
S(3)… S(4)
0.122
1.222
15.756
2.626
S(1)… O(121)
0.178
2.519
28.886
5.252
S(2)… O(221)
0.155
2.442
26.260
7.878
化合物B
S(1)… O(121)
0.158
2.217
24.947
5.252
形
S(2)… O(221)
0.199
2.320
31.512
0.000
化合物B
形
な お 、本 研 究に 関連 し て (1)2005年 日 本 化学 会年 会 (講 演 予稿 集 4F5-05),
(2) 2005年 日 本 結 晶 学会 年 会 (講 演要 旨集 P111)に て 報 告を 行 った 。