第1回実施報告(ビジネス・マーケティングの考え方)

市場戦略のプロセスをつくる
~ビジネス・マーケティングの場合~
㈱MPC代表取締役 岡本正耿
1.ビジネス・マーケティングの考え方
(1)マーケティングとは
マネジメントを管理と訳していた時代には、その対象は作業や業務であり、標準化・単
純化・専門化やPDCAサイクルなどが中心だった。しかし、1954 年のドラッカー教授の
『現代の経営』から、マネジメントが経営と訳されるようになる。その辺りからマーケテ
ィングが一般のビジネスマンにも知られるようになる。
『現代の経営』でドラッカーは、
「経
営とはイノベーションとマーケティングをすることだ」とはっきり言ったのである。イノ
ベーションとマーケティングが経営と言うことになれば、それは計画通りに管理する仕事
ではなく、むしろ変化に対応して自己を変革していくことになる。
さてそのマーケティングの定義だが、アメリカ・マーケティング協会でも何度か定義を
書き換えてきた。例えば2004年の定義では、
「マーケティングとは、顧客に対して価値
を創造し、伝え、提供し、良好な関係をつくるために行う組織的なプロセスである」とな
っている。これは以前の定義に比べてより明瞭になっているかというと、必ずしもそうは
言えない。消費財だけでなくビジネス財、有形製品だけでなくサービス、民間企業だけで
なく非営利組織、大企業だけでなく中小企業などと、マーケティングの主体組織はどんど
ん広がっている。
マーケティングそのものも販売だけでなく、
「売った後」のサービスやサポート、製品・
サービスだけでなく社会貢献や倫理性なども自らの領域として認識するようになってきた。
それだけ要素が増えてしまえば、焦点が曖昧になってしまうことは防ぎようがない。そう
いうことで、定義はむしろ漠然としてきたというのが正直なところである。さて、マーケ
ティングではコンセプトを大事にするが、一般にはこれは事業コンセプトとか製品コンセ
プトとして受けとめられている。しかし、まず最初に明らかにしたいのは、マーケティン
グそのもののコンセプトである。これは、歴史的に生産志向経営に対する市場志向経営へ
と、経営の軸と考えるものが大きく転換したということを指している。鉄道事業を生産志
向で考えるならば、重視することは駅、列車、線路という鉄道自体をつくりだす要素に関
心が集まる。だが、顧客はそれらに関心があるのではなく、人や物を運びたい、輸送とい
うニーズを持っているわけである。こちらを中心に考えると、たとえばスピード、便利さ、
あるいは快適さという機能や心理に意識が向く。この後者に焦点化することを市場志向と
いうのである。
また、マーケティング・コンセプトはそれが複合的な組み合わせ、ミックスであるとい
うことも意味している。製品開発と価格設定、売るための様々な施策を別々にやっている
と、大衆品なのに高価格などと整合性のとれない、矛盾することがたくさん出てきてしま
う。そうならないために、プロダクト(製品開発)
、 プライス(価格設定)
、 プレイス(チ
ャネル政策)
、 プロモーション(広告、パブリシティ、販売促進、人的販売)を大きなマ
ーケティングという枠でズレのないようにしようというのである。そのズレを予防するた
めに、必要となるのが製品やサービスのコンセプトでもある。
(2)マーケティングの実務
マーケティングを実務として行う場合に、基本となる考え方や手法がある。こうした基
本については、最低限のものを知らなければ、考えることも話し合うこともできない。そ
の一つがSTPである。これは、セグメンテーション→ターゲティング →ポジショニング
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というものである。
セグメンテーションとは、
「お客様には色々おられるので…」としていると、たとえば商
品開発は子供向けなのか大人対象なのか、それとも高齢者向けなのか判然とせず、それこ
そコンセプトが明確にならない。だから、まずは市場をいくつかに細分化しようというも
のである。もっとも一般的なのはデモグラフィック細分化であり、性別・年齢別・地域や
職業・収入別などによる細分化である。
次のターゲティングだが、ターゲットというのは標的という意味だから、対象とする顧
客層を絞りこむことをいう。絞り込んだら、今度はポジショニングだが、これは色々な意
味で使われる。例えばA社は高級品に強く、B社は中級品に強いという場合、後発のC社
が低級品市場に自社製品を位置づける場合にポジショニングという。一方、消費者の心の
なかに「早めのパブロン」などと深く記憶されてしまえば、その人の心にパブロンが位置
づけられている訳で、そういう場合にもポジショニングは使われる。
特に消費財において、トップ・ブランドの多くは、消費者の認知率が高く、愛用者比率
も高い。こうしたブランドはUSPを持っているなどと言われる。USPとはユニーク・
セリング・プロポジション の略だが、独特の提案という意味である。今まで他社が言って
いないインパクトのある表現で、自社しかそういうメッセージを出していない、さらに他
社は言えない場合などは、強いUSPを持っているという。
PLCもよく使われる考え方である。これは、製品の出生死滅過程のことであり、プロ
ダクト・ライフサイクルの略である。市場に導入されてから、最後には衰退してしまうま
でを、導入期、成長期、成熟期、衰退期の4ステージに分けて、それぞれのステージ毎の
特徴や傾向を見たり、自社製品や事業ごとに、それぞれどのステージにいるのかを検討す
る。
PLCに関連して「イノベーション採用セグメント」というものがある。これは、新製
品などイノベーションの結果をいち早く買う人もいれば、慎重に周りの人を見ながら、な
かなか買わない人もいる。人々をイノベーター、初期採用者、前期多数者、後期多数者、
遅滞者の5つに分け、PLCのステージ毎にどのタイプが中心なのか、あるいはそれぞれ
のタイプが別のセグメントではどのように分けられるのかを検討するなど、色々な分析に
用いられる。
(3)ビジネス・マーケティング
さて、この辺でビジネス・マーケティングに話を移さなければならない。昔は生産財マ
ーケティングと呼ばれており、ただそれだと生産されるものだけのようになってしまうの
で、ビジネスで使う物すべてを意味することから、ビジネス・トゥ・ビジネス、略してB
toB・マーケティングなどと呼ばれてきた。しかし、最近ではそれはビジネス・マーケ
ティングと呼べばいいということになってきた。
ビジネスで使うものすべてが入るので、様々なものがあるが、学者など専門家は設備用
機器、業務用品、用度品、加工原材料、サービスなどと分類している。それぞれによって、
価格レベルや購入サイクル、購入理由などが異なり、従って顧客の購入プロセスや意思決
定者も異なるので、本当は業界別に子細な分析検討が必要である。
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