成人病センター 医師だより№30 問合せ先095-861-1111 内線210 尿のでき方と腎機能 成人病センター 院長 田所 正人 「ろ過 工場」である糸球体でろ過 された○○の一部 平成27年4月15日 が「選別回収工場」である尿細管と集合管を通って□ として排泄されます。 自分のろ過工場の能力をご存じですか? 1. 血液と腎臓 血液は全身をめぐり、細胞に酸素や栄養を届け、また細胞から不要になった物質を受け取る役目 があります。成人の心臓は1分間に約5Lの血液を全身に送り出すポンプの役割をしていますが、この うち1L程度の血液が腎臓をめぐっています。 2. 糸球体と尿細管・集合管 大量の血液が通過する腎臓には、血管が非常に発達しています。大きな血管が枝分かれして、次 第に小さな血管になり、細い動脈が糸玉のようになった「糸球体」を通過します。糸球体は直径が 血○ 液 が糸球体を通るとき、血液の 約0.2mmで、一つの腎臓におよそ100万個あると言われています。○ 圧力により血管から血液の一部がろ過されます。 糸球体からろ過された液には体に必要なものも含まれています。腎臓機能が正常であれば、全部 の糸球体合わせて、1日当たり150Lくらいがろ過されます。ろ過液がすべて尿になって排泄されれ ば、多量のミネラルや水分が体から失われてしまうので 生きていけません。 糸球体からろ過された液は「尿細管」やそれに続く「集 合管」という管を通過します。ろ過液中の大部分の水分 や必要なミネラルはこれらの管を通る間に吸収されて再 び血液に戻ります。こうして、体にとって本当に不要な 尿 として排泄されるのです。 ものだけが□ つまり、糸球体はとりあえず必要なものも含めて多量の 材料を尿細管に送り込む「ろ過工場」の役割を、尿細管 や集合管は必要なものと不要なものをより分けて再び体 にもどす「選別回収工場」の役割を果たしています。 24時間休むことなく働いている心臓ですが、血液が流れ 込む全身の臓器も休みません。腎臓も血液がめぐってく る限り尿を作り続け、体をきれいに保つ働きをしています。 3. 腎機能の評価 糸球体からろ過量が少ないと、体にある物質の尿細管・集合管での処理量が不足し、老廃物が体 に残るようになります。もちろん、ろ過量が十分でも、尿細管や集合管の選別回収する能力が低下 すれば体にとっては大きな障害になることがあります。しかし、腎機能と言えばもっぱら糸球体の ろ過能力で評価します。つまり「ろ過工場」である糸球体でのろ過量の多少により、腎機能の良し 悪しが判断されるわけです。 外来診療でお渡しすることがある検査結果のプリントですが、その中にある「eGFR」の値はまさ にこのろ過量を表しています。男女別・年齢別が考慮された日本人の標準的な体格として推定計算 された値です。単位は「mL/分」、つまり糸球体ろ過量が1分間に何mLかを表したものです。基準値 と比較して、ご自身の腎機能がどの程度か確認しておきましょう。
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