ヒ ト血管に対するACE 阻害剤の作用

臨床 薬 理 Jpn J Clin Pharmacol
第18回
Ther
29(1,2) Mar
1998
309
日 本 臨 床 薬 理 学 会1997年12月11∼12日
東 京
ヒ ト血 管 に対 す るACE阻
害 剤 の作 用
木
村
雅
彦*1梅
村
和
夫*2小
菅
和
仁*1
西
本
雅
彦*1大
橋
京
一*1中
島
光
好*2
上 の 間 隔 を あ けて 行 わ れ た 。
I. は じめ に
Angiotensin II(AT II)は交 感 神 経 系 に作 用 し
2、上 記 実 験 で 得 られ た 血 管 反 応 性 の 変 化 が 、α受
norepinephrine(NE)の 放 出 を 増 大 させ 、 血管 に お い
容 体 感 受 性 の特 異 的 な 変 化 に よ る もの で あ る こ
て はa受
と を確 認 す る た め、5名を 対 象 にPま た はQ(10mg)
容体 の 感 受 性 を 高 め る こ とが知 られ て
い る。ACE阻
害 剤 はAT IIの 産 生 を 抑 制 す る こ と
に よ って 交 感 神 経 系 に抑 制 的 に働 くこ とが 知 ら
れ て お り、 ヒ トに お い て も血 中NE濃
度 を低 下 さ
せ る こ と が認 め られ て い る。 しか し、ACE阻
害剤
を 同様 に投 与 し、prostaglandinF2α(PGF2α)に 対 す
る血管 の収縮 反応 の変 化を 同様 の方法 で比較 し
た。
3、 手 背 静 脈 にお け るACE阻
害 剤 のbradykininに
に よ る血 管 の α受 容 体 感 受 性 の 変 化 に つ い て は 明
よ る血 管 拡 張 に 対 す る 増 強 効 果 の 程 度 を 評 価 す
らか で な い 。ま た、ACE阻
るた め 、6名 を対 象 にPま
害 剤 の 作 用 は組 織 中 の
た はEを 上 記 実 験 と 同
AT II濃 度 と密 接 な 関係 が有 る こ とが 知 られ て い
様 に投 与 し、PEに よ って前 収縮 させ た手 背 静 脈 に
るが 、よ り組 織 中 のAT II濃 度 を低 下 させ る こ との
お け る、bradykinin(BK)によ る拡 張反 応 の変 化 を比
出 来 る脂 溶 性ACE阻
較 した。
害 剤 と水 溶 性ACE阻
害剤の
III. 結 果
作 用 の 差 につ い て も確 認 され て い な い 。 よ って ヒ
トにお け るACE阻
害 剤 の血 管 α受 容 体 感 受 性 に
た いす る作 用 につ いて 、 水 溶 性ACE阻
溶 性ACE阻
害 剤 と脂
害 剤 の効 果 を 比較 検 討 した。
ACE阻
し、 用 量 反 応 曲線 は 右 に 偏 位 した。(Fig.1)、PE
の 血 管収 縮 反 応 に対 す るED50は
度 はEよ
II. 対 象 ・方 法
水 溶 性ACE阻
1、ACEIの 投 与 後 、PEに よ る血 管 収 縮 反 応 は 低 下
害 剤 と してenalapril(E)、 脂 溶 性
害 剤 と してquinapril(Q)を使 用 し、健 常 成 人
増 加 し、 そ の程
りQに お い て有 意 に 大 き か っ た。(Table
1)
2、QはPGF2α
の用 量 反 応 曲線 に影 響 を及 ぼ さな か
男 子 を対 象 と して行 った 。
った 。(Fig.2)
1、 6名 を 対 象 に、placebo(P)、E(10mg)、Q(10mg)
3、 Eは 静 脈 に お け るBKに
を22お
BKの 用 量 反 応 曲線 を左 に偏 位 させ 、ED50を5.9土
よ び3時 間 前 に投 与 し、phenylephrine(PE)
に対 す る手 背 静 脈 の 収 縮 反 応 をdorsal
hand vein
compliance techniqueを 用 い て 比 較 し た 。 投 薬 は
2.2ng/minか
ら3.1±1.64ng/血1に
IV. 考 案
実験1お
〒431-3192浜
松 市 半 田 町3600
*2 浜 松 医 科大 学 薬 理学
減 少 させ た
(p<0.05)。
singleblindcrossover法 で行 い 、各 投 薬 は10日 以
*1 浜 松 医 科大 学 臨床 薬 理 学
よる血 管 拡 張 を増 強 し
よ び2よ
り、ACE阻
害 剤 はPEに
よ る血
管 収縮 を抑 制 し、PGF2α の 作 用 に は影 響 を 与 え な
か った 。よ ってACE阻
害 剤 に よ る血 管 α受 容 体 感
受 性 が 低 下 す る事 が 明 らか とな った 。 しか し、 こ
310
一 般 演題
の 作 用 は 水 溶 性ACE阻
害 剤 で あ るenalaprilで は
有 意 で は な く、quinaprilで 有 意 に大 きか った 。 脂
溶性ACE阻
害 剤 は、 そ の 組 織 中ATIIに
下作 用 が大 き い た め 、水 溶 性ACE阻
対 す る低
害 剤 よ りもα
受容 体 感 受 性 に対 す る作 用 が 大 きい と推 察 され 、
血 管 α受 容 体 感 受 性 には 組 織 中ATIIの 関与 が 大 き
い こ とが 確 認 され た 。
また 、 以 上 の 結 果 よ り、 脂 溶性ACE阻
溶 性ACE阻
害 剤 と水
害 剤 で臨 床 効 果 に差 が 出 る可 能 性 も
示 唆 され る 。
ACE阻
Fig.1 ACEIの
投 与 に よ っ てphenylephrineに
る 血 管 収 縮 のdose-response
し、 そ の 程 度 はquinaprilで
よ
curveは 右 に 編 位
大 きか っ た。
BKに
害 剤 はBKの
代 謝 を 阻害 す る こ と に よ り
よ る血 管 拡 張 を増 強 す る事 が 知 られ て い る。
しか し、 本 研 究 で はPGF2α
ACE阻
に よ る血 管 収 縮 に は
害 剤 は影 響 せ ず 、BKを 介 す るACE阻
害剤
の 血 管 拡 張 作 用 は 、静 脈 にお い て は 小 さい の で は
な い か と考 え られ 、実 験3を 行 った 。ACE阻
に よ るBKの
害剤
血 管 拡 張 作 用 に 対す る増 強 は 、手 背
静 脈 に お いて も観 察 され たが 、 そ の程 度 は従 来 の
動 脈 にお け る 同様 の 報 告 よ り小 さか っ た。 これ が
Table1 ACE阻
害 剤 投 与 後 のα受 容 体 感 受 性
の変化。
ACE阻
害 剤 に よ るα受 容 体 感 受 性 の 特 異 的 変 化 が
本研 究 で確 認 され た理 由 で あ る と考 え られ た 。
ACE阻
V.結 語
害剤 は ヒ ト血 管 に お い て もα受 容 体 感 受 性
を低 下 させ 、 そ の 作 用 は 水 溶性ACE阻
も脂 溶性ACE阻
受 容 体 感 受 性 に は 、組 織ATII濃
こ とが確 認 され た。
Fig.2 QuinaprilはPGF2α
に よ る血 管 収 縮 反
応 に影 響 を 与 え な か っ た。
害剤 よ り
害 剤 にお い て 大 きか った。血 管α
度 が 関 与 して い る