平成 27 年 9 月 14 日 No.511 相続発生後でもできる相続税の負担軽減 1. 遺産分割別・納付相続税額の増減 相続税の軽減対策は、生前中にできるだけ長い時間をかけて行うことで、 「リスクとコスト」を小さくして対策の効果を挙 げることができます。しかし、その必要性を認識していても結果として何もしないまま亡くなられてしまうことも珍しくあ りません。多くの人は、亡くなられたら相続税の軽減対策はできないと誤解されていますが、共同相続人間で仲良く遺産分 割協議などができる場合に、相続税法等の特例を上手に活用すれば相続税の負担を軽減することができます。 設例で確認してみましょう。 【設例】 1. 亡くなった人 父(平成 27 年 5 月死亡) 2. 相続人 母・長男(父母とは別生計で持家に居住している) 3. 父の遺産 ① 居住用不動産(土地(330 ㎡)3,000 万円・建物 500 万円) ② 現預金 2,500 万円 ③ 有価証券 2,000 万円 遺産分割別相続税の計算一覧表 (単位:万円) ④ その他 1,000 万円 母は不動産と現預金、 法定相続分どおり相続 すべて母が相続 4. 母固有の財産 2,000 万円 長男は有価証券とその他 5. 遺産分割 母 長男 母 長男 母 長男 ① すべての財産を法定相続分 土 地(注 1) 300 1,500 600 - 600 - どおり相続する 建 物 250 250 500 - 500 - ② 母は居住用不動産と現預金 現預金 1,250 1,250 2,500 - 2,500 - を、長男は有価証券とその他の 有価証券 1,000 1,000 - 2,000 2,000 - 財産を相続する その他 500 500 - 1,000 1,000 - ③ すべての財産を母が相続す 課税価格 3,300 4,500 3,600 3,000 6,600 る 基礎控除額 4,200 4,200 4,200 課税遺産総額 3,600 2,400 2,400 相続税の総額 440 260 260 各人の算出税額 配偶者の税額軽減(注 2) 納付税額 186 254 142 118 260 - △186 - △142 - △260 - 0 254 0 118 0 - (注 1)居住用不動産の土地については、母が相続する場合には、 「特定居住用宅地等」に該当し小規模宅地 等の特例の適用を受けて 80%減額して評価することができます。しかし、長男が相続した部分の土地につ いては、この特例の適用を受けることができません。 (注 2) 配偶者の税額軽減は、配偶者が相続した金額のうち、法定相続分(設例の場合は 1/2)又は 1 億 6 千万円までのいずれか多い部分までの相続税については軽減措置を受けることができます。そのため、母 がすべて相続することとすると納付税額はゼロとなります。 2. 母の相続(平成 27 年 6 月) 設例の場合、父の相続(第一次相続) の際に、納付税額を最も少なくするた めに母がすべての財産を相続すると、 母の相続(第二次相続)のときには、 相続税の負担が重くなりますので、そ れらのことも踏まえて第一次相続の遺 産分割を考えなければなりません。 父からの相続(注) 4,500 万円 6,000 万円 母固有の財産 2,000 万円 2,000 万円 2,000 万円 課税価格 6,500 万円 8,000 万円 11,000 万円 納付すべき相続税額 385 万円 680 万円 1,520 万円 (注)長男は、母と別生計で持家に住んでい 第一次相続の相続税 254 万円 118 万円 0 るため、居住用不動産の土地については、小 通算相続税 639 万円 798 万円 1,520 万円 父の相続の遺産分割 法定相続分どおり相続 規模宅地等の特例の適用を受けることができません。 母は不動産と現預金、 長男は有価証券とその他 すべて母が相続 9,000 万円 (担当:山本 和義)
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