2015年5月号 相続税の調査状況と 申告時の留意点 PDFを開く

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2015.
5
Business Column
相 続 税 の 調 査 状 況と申 告 時 の 留 意 点
国税庁は、平成26年11月に
「平成25事務年度における相続税の
調査の状況について」
を、12月に
「平成25年分の相続税の申告の
状況について」
を公表しました。相続税の税務調査は所得税・法人
税などの税務調査と比較して高い頻度で行われていることを鑑み、
調査の状況と申告時の留意点を以下にまとめます。
平成25年分の相続税の申告の状況
平成25年中の被相続人数(死亡者数)は約127万人、このうち
相続税の課税対象となった被相続人数は約5万4千人、課税価格
では11兆6,253億円、被相続人1人当たりは2億1,362万円と
なっています。税額は1兆5,367億円で、被相続人1人当たりでは
平成25事務年度における相続税の調査の状況
1 実地調査件数及び申告漏れ等の非違件数
相続税の実地調査については、平成23年中及び平成24年中に
発生した相続を中心に、国税局及び税務署で収集した資料情報を
基に、①申告額が過少と想定されるもの、②申告義務があるにもか
かわらず無申告となっていることが想定されるものに対して実施
したものです。実地調査の件数は11,909件、
このうち申告漏れ等
の非違があった件数は9,809件、非違割合は82.4%であり、追徴
税額
(加算税を含む)
は539億円となっています。
平成24事務年度 平成25事務年度
① 実地調査件数
② 申告漏れ等の非違件数
④ 重加算税賦課件数
⑥ 申告漏れ課税価格(※)
⑦ ⑥のうち重加算税賦課対象
本税
申告漏れ
(⑥/①)
課税価格(※)
追徴税額
(⑩/①)
97.5%
9,959件
9,809件
98.5%
81.6%
82.4%
0.8ポイント
1,115件
1,061件
95.2%
10.8% ▲0.4ポイント
11.2%
ためのチェックシート」
を活用することも一つの方法です。
2 預貯金等の推移の確認
きを追うことによって、財産の購入事実や有価証券等の財産の存
在の確認、債務の存在の確認ができます。
3 不動産の現地確認
不動産は必ず現地確認を行い、登記簿等に記載の内容と実際が
合っているか否かの検討を行う必要があります。現地調査を行うこ
とで、誤った財産評価の算定を防ぐことができます。
3,087億円
92.2%
436億円
360億円
82.5%
4 同族会社への貸付金等の確認
527億円
467億円
88.8%
83億円
71億円
85.2%
被相続人の同族会社への債権は相続財産となります。被相続人
610億円
539億円
88.3%
2,741万円
2,592万円
94.6%
500万円
452万円
90.5%
※「申告漏れ課税価格」は、申告漏れ相続財産額(相続時精算課税適用財産を含む。)
から、被相続
人の債務・葬式費用の額(調査による増減分)
を控除し、相続開始前3年以内の被相続人から法定
出典:国税庁
相続人等への生前贈与財産額
(調査による増減分)
を加えたものである。
2 海外資産関連事案に係る調査事績
海外資産に係る申告漏れ等の非違件数は124件(前事務年度
113件)
。申告漏れ課税価格は163億円
(前事務年度26億円)
と前
事務年度の6倍を超える金額となっています。
3 申告漏れ相続財産の金額の内訳
申告漏れ相続財産の金額の内訳は、現金・預貯金等1,189億円
が最も多く、続いて土地412億円、有価証券355億円の順となって
います。
資料を収集するためには国税庁が発表している
「相続税の申告の
3,347億円
加算税
合計
対前事務年度比
11,909件
(④/②)
⑤ 重加算税賦課割合
⑪ 実地調査
1件当たり
⑫
相続税の申告においては、資料収集が重要です。漏れがないよう
財産に該当するのか、等の検討を行う必要があります。預貯金の動
12,210件
(②/①)
③ 非違割合
⑩
1 資料収集
年の預貯金の取引を確認し、家族名義預金であるのか、生前贈与
事務年度
項目
⑨ 追徴税額
相続税申告時の留意点
過去の預貯金の動きを把握するために、金融機関等で3年から5
【相続税の調査事績】
⑧
2,824万円です。
が同族会社を経営しているような場合、貸付金等の存在があるか
否かの確認が必要となります。
5 海外資産の確認
海外資産の存在については、国外財産調書制度が開始されたこ
とや海外資産関連事案に係る調査事績の推移からも、税務当局が
注目していることが容易に推測できます。
6 書面添付制度の活用
税理士法第30条に規定する税務代理権限証書と税理士法第33
条の2に規定する書面を添付した申告書を提出しているという二
つの要件を満たしている場合、税務当局は調査の通知前に、税務
代理権限証書を提出している税理士に、添付書面に記載された事
項に関する意見を述べる機会を与えなければならないこととされ
ています。書面添付制度を活用することも有益な方法の一つと考
えられます。
※本記事に記載の情報は平成27年4月現在の法令・税制に基づいて作成しています。今後の改正等により取扱いが変わる場合がございます。個別の取扱い等につきましては、所轄の税務署へ必ずご相談・ご確認ください。