平成 26 年 11 月 17 日 No.480 平成 27 年 1 月 1 日以後に相続等が開始した場合の小規模宅地等の選択について 平成 27 年 1 月 1 日以後に相続等が開始した場合の小規模宅地等の特例の適用については、特定居住用宅地等と特定 事業用宅地等の完全併用が認められることとなりますので、特例選択には注意が必要となります。 1.設例(前提条件) ①被相続人:父(平成 27 年 1 月死亡) 、②相続人:長男、③父の遺産:下記の土地のみ 小規模宅地等の特例の適用を受けることができる宅地等が以下のとおり3つあります。 地積 相続税評価額 評価減割合 小規模宅地等の区分 減額対象限度面積 A 宅地 180 ㎡ 5,400 万円 50% 貸付事業用宅地等 200 ㎡ B 宅地 165 ㎡ 1,650 万円 80% 特定居住用宅地等 330 ㎡ C 宅地 250 ㎡ 3,000 万円 80% 特定事業用等宅地等 400 ㎡ 限度面積調整後の 1 ㎡当たりの減額の金額は以下のようになります。 ①A 宅地 (5,400 万円÷180 ㎡)×50%=150,000 円 ②B 宅地 (1,650 万円÷165 ㎡)×330 ㎡÷200 ㎡×80%=132,000 円 ③C 宅地 (3,000 万円÷250 ㎡)×400 ㎡÷200 ㎡×80%=192,000 円 2.小規模宅地等の特例選択 ①B 宅地(特定居住用宅地等)及び C 宅地(特定事業用宅地等)を併用選択する場合の A 宅地(貸付事業用宅地等) の限度面積の計算 200 ㎡-(165 ㎡×200 ㎡÷330 ㎡+250 ㎡×200 ㎡÷400 ㎡)<0 ㎡ ∴A 宅地(貸付事業用宅地等)から小規模宅地等を選択することができません。 ②限度面積調整後の 1 ㎡当たりの減額の金額が大きい宅地から選択する場合(C 宅地⇒A 宅地)の A 宅地(貸付事業 用宅地等)の限度面積の計算 200 ㎡-(250 ㎡×200 ㎡÷400 ㎡)=75 ㎡ ∴A 宅地(貸付事業用宅地等)から 75 ㎡小規模宅地等を選択することができます。 3.上記 2①②のそれぞれの場合における相続税 B宅地とC宅地の併用を選択 C 宅地と A 宅地を選択 A 宅地 5,400 万円 (注) 4,275 万円 B 宅地 330 万円 1,650 万円 C 宅地 600 万円 600 万円 6,330 万円 6,525 万円 課税価格 特定居住用宅地等と特定事業 基礎控除 3,600 万円 3,600 万円 用宅地等の併用を選択したほ 相続税 359 万円 388 万円 うが有利となります。 (注)A 宅地 5,400 万円 -(5,400 万円×75 ㎡÷180 ㎡×50%)= 4,275 万円 4.検証 平成 26 年以前に開始した相続等の場合では、限度面積調整後の 1 ㎡当たり最も減額される宅地等(設例の場合には、 C 宅地→A 宅地)から、小規模宅地等の特例選択することが有利でしたが、平成 27 年以後に開始した相続等では、特定 居住用宅地等(B 宅地)と特定事業用等宅地等(C 宅地)の完全併用が認められますので、それらの宅地等と貸付事業用 宅地等(A 宅地)を選択する場合には、適用限度面積の調整が必要となります。その結果、設例の場合には、 「B 宅地と C 宅地」を選択することが有利となります。 以上のように、従来の規定では、最も減額される宅地等から特例選択することが有利となりましたが、平成 27 年 1 月 1 日以後開始の相続等からは、併用する場合についても試算し、有利選択する必要がありますので、注意が必要です。 (担当:河野 哲也)
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