長期間の粒子摩耗現象解明のための回転ドラム実験

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H - 06
第 50 回地盤工学研究発表会
(札幌) 2015 年 9 月
長期間の粒子摩耗現象解明のための回転ドラム実験と DEM 解析
バラスト
個別要素法
筑波大学大学院
学生会員
○伊藤 伸晃
筑波大学大学院
国際会員
松島 亘志
鉄道総合技術研究所
国際会員
河野 昭子
1. はじめに
バラスト軌道は日本の鉄道の約 9 割を占める最もオーソドックスな軌道形式である. 粗粒の砕石からなるバラスト軌
道の道床バラスト層は, 列車通過時の荷重を, 枕木を介し分散させる役割を有する. 一方でバラスト層はその走行荷重に
より劣化することが避けられない.
バラストの劣化については, マクロな視点からバラスト集合体としての変形特性や沈下特性について様々な検討[1]が
なされてきたが, ミクロな視点からバラストの摩耗についての検討はあまり行われていない. これは現場レベルでの摩耗
の測定が困難であること, 供用環境によって摩耗に大きな違いがあることなどが原因として挙げられる. しかしマクロな
特性を検討する上で, ミクロな視点での検討も避けることはできない.
本研究では長期間の粒子摩耗現象のメカニズム解明に向けた基礎的検討を目的とし, 粒子形状がどのような影響を与
えるかについて回転ドラム実験と DEM 解析を行った.
2. 回転ドラム実験
2.1 試料
本実験には図 1, 図 2 に示す単純な形状をもつ試料と図 3 に示す実際のバラストを
スライスした試料の計 9 個を用いた. 図 1 には左からエッジ加工を施していない試料
1, 2, 3 の頂点角度の異なる六角柱試料, 図 2 には左からエッジ加工を施した試料 4, 5, 6
の頂点角度の異なる六角柱試料を示す. 図 3 には実際のバラストをスライスし試料 4,
5, 6 同様エッジ加工を施した試料 7, 8, 9 を示す. 試料はすべて安山岩で厚さ 10 mm, 表
図 1 エッジ加工なし試料
面はなめらかに加工してある.
(左から試料 1, 2, 3)
2.2 実験方法
図 4 に本実験のようすを示す. 回転ドラムは 300 mm, 内径 260 mm, 奥行き 11 mm
のアルミニウム製である. このドラムは厚さ 10 mm の試料を 2 次元的に摩耗させるこ
とができ, 側面はアクリル板になっており回転状況を観察できる. 内部には縦 35 mm,
横 10mm の突起が取り付けられてあり, 図 4 において反時計回り 1.2π rad/s で回転す
る. 摩耗前後の変化を測定するため摩耗前の各試料をレーザスキャナで測定し, 試料
を 1 個ずつ一定数回転させた後再び形状を測定した. 試料 1, 2, 3 についてははじめに
図 2 エッジ加工あり試料
回転ドラムで 1000 回転させたあと形状測定を行い, その後 6000 回転, 12000 回転と
(左から試料 4, 5, 6)
6000 回転ごとに同様の測定を行い 30000 回転まで, 試料 4, 5, 6 についても始めに 1000
回転させた後に形状測定し, 2000 回転, 4000 回転と 2000 回転ごとに同様の測定
を行い 6000 回転まで, 試料 7 から試料 9 についても始めに 500 回転させた後に
形状測定し, 1000 回転, 1500 回転と 500 回転ごとに同様の測定を行い 2000 回転
まで実験を継続した. また実験時の様子を高速度カメラで撮影し, 試料回転の様
子も記録した.
図 3 実バラストをスライスし
エッジ加工した試料
(左から試料 7, 8, 9)
2.3 実験結果
図 5 に各試料の角度の異なる頂点に対する平均摩耗量と近似直線を示
す. なお平均摩耗量は 1000 回転あたりの各試料重心から頂点の距離の減
少比であり, 頂点に欠けが観察されたものについては除外してある. 試
料 7 から試料 9 については頂点角度の測定が困難なため偏角関数を用い
て算出した. 偏角関数φ(x) は図 6 左図に示す各変数において(1)式で表現
図 4 回転ドラム実験のようす
される. 偏角関数は物体外周上の任意の直線と物体外周上の点の接線が
なす角𝜃D (𝑥)からその接点までの距離𝑥を引いた値を意味する. したがって図 6 右図のように半径関数の値が大きく変化
Rotating drum experiment and DEM analysis for elucidatin of
ITO, Nobuaki University of Tsukuba
grain abrasion phenomenon over a long time
MATSUSHIMA, Takashi University of Tsukuba
KONO, Akiko Railway Technical Research Institute
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する𝜃i (𝑥)から𝜃D (𝑥)では幾何的特性から(2)式に示す関係が得られる. (2)式においてαは頂点の角度を表す.
φ(x) = 𝜃D (𝑥) − 𝑥
(1)
𝛼 = 180 − {𝜃D (𝑥) − 𝜃i (𝑥)}
(2)
図 5 より頂点角度が小さい角度ほど摩耗量が大きいことがわかる. エッジ
加工を施した試料 4~6, 試料 7~9 の近似曲線を比較すると, 傾きはよく一致
しているが, 切片に差がみられる. これは偏角関数の特性上, 同一頂点角度で
も頂点がなめらかな曲面であると, 試料 1,2,3 のような尖った頂点角度周りの
長さと差が生じるためだと考えられる.
3. DEM 解析
3.1 実験のモデル化
回転ドラム実験をモデル化するにあたり, 棒状のセグメント要素を用い, ド
ラムは正 180 角形で円近似し, 試料は図 1, 2 で示したものと同様の大きさに
図 5 各試料の摩耗量と角度の関係
なるように 2 次元モデル化を行った.
表 1 に解析に用いた密度, バネ定数, 摩擦角, 時間刻みを示す. 表 2 に解析に用
いたダッシュポット定数を示す. 試料 1~3, 試料 4~6 でダッシュポット定数が大き
く異なっているのは辺と稜を再現したエッジ加工の違いによるものである.
3.2 解析結果
図 6 偏角関数
回転ドラム実験をモデル化し解析を行った結果,
図7に示す平均衝突力と頂点角度の関係が得られた.
図7より衝突力はおおよそ10 N前後であることがわか
るが, 角度と衝突力の関係は一定になるのか, 角度が
表 1 解析に用いた密度、バネ定数、摩擦角、時間刻み
試料
大きいほど衝突力が大きくなるかは判断できず, 更に
ダッシュポット定数
(N・s/m)
1
ダッシュポット定数
(N・s/m)
2.13 ×
107
4
5.50 × 106
107
5
5.52 × 106
6
5.42 × 106
検討を行っていく必要がある.
2
2.08 ×
3.3 衝突頻度の比較
3
2.12 × 107
実験と解析との整合的を確かめるため試料2, 3, 5, 6
試料
表 2 解析に用いたダッシュポット定数
での各頂点の衝突頻度の比較を行った. 試料1, 4ではす
密度
べての頂点角度が等しく, 区別を行うことが難しかった
ため除外した. 各試料の頂点を,他の頂点より相対的に尖
試料 1~6
った同じ角度の頂点A, Dとし、その他の角度の等しい頂
バネ定数
摩擦角
(kg/m2)
時間刻み
(N/m)
(deg)
(s)
27
1.0 × 1011
38.7
1.0 × 10−5
点を頂点B, C, E, Fとした. また衝突頻度はドラム30回転分を比較対象とし, 同じ角度の
頂点を区別せず, その頂点の衝突回数を全衝突回数で除した値とした.
図8に実験の衝突頻度, 図9に解析の衝突頻度を示す. 実験ではアクリル板と回転ドラ
ムの奥の面との摩擦があり, 解析ではそれを考慮していないため結果にわずかな差が
見られるが, 試料3以外でよく似た傾向を示した. 試料3については試料落下時の回転
が再現出来ておらず, 今後詳細なパラメータの検討が必要だと考える.
4. おわりに
本研究では単純な形状をもつ試料と実際のバラストをスライスした試料を用いて2次元
的な摩耗実験を行い, 頂点角度の小さい頂点ほど摩耗が大
図 7 衝突力と角度の関係
きくなることがわかった. また実際のバラストをスライス
した試料については偏角関数の適用が可能であるが, 単純
形状試料とはわずかに差が生じると考えられる.
DEM 解析より単純な形状の試料については頂点角度の違い
による衝突力の差について, また詳細なパラメータを更に検
討を行っていく必要があると考える.
参考文献
[1]
河野昭子:繰返し荷重下のバラスト粒子層の沈下挙動に
図 8 実験の衝突頻度
与える急速載荷の影響と微視的考察、11,2010
[2]
Kono, A., Ito, N., Matsushima, T., Abrasion Law of Irregularly-shaped
Ballast Grains in a Rotating Drum, COMPSAFE: Computational Engineering and
Science for Safety and Environmental Problems, 671-673, 2014.
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図 9 解析の衝突頻度