原 子 力 発 電 電力中央研究所報告 報告書番号: N 0 7 0 1 7 数値標高モデルを用いた段丘面形状の定量化 と段丘対比への応用 背 景 高レベル放射性廃棄物地層処分場建設地の選定ならびに設計において考慮される 第四紀後期の隆起量は,段丘面の標高または比高およびそれらの年代から見積もら れることが想定されるため,段丘の対比・編年には十分な信頼性が要求される.段 丘対比の一手法である空中写真による地形調査では,段丘の侵食の程度や層位関係 等を判読し,慣習的に高位・中位・低位の段丘に区分する.これは段丘の地形発達 史に則した合理的な方法ではあるものの,観察者の定性的な評価に依存している. 地形調査による段丘対比の信頼性を向上させるためには,定量的なアプローチを適 用し,客観性を与えることが必要である. 目 的 数値標高モデル(DEM)から求めた地形量 1)により,段丘面の侵食の程度を定量化 する手法を提案するとともに,これを河成段丘の対比に適用し,既知の段丘形成年 代のデータとの比較により,段丘対比指標としての信頼性と精度を検証する. 主な成果 (1)段丘面の侵食の程度を定量化する手法の提案 4 種類の地形量 1)(平均傾斜量,ラプラシアン 2) の平均値,残存面積率 3),平均 侵食高 4))を高品質な DEM を用いて算出し,段丘面が受けた侵食の程度を定量化す る手法を提案した.信頼性の高い編年情報が得られる河成段丘を対象として,地形 量と形成年代を比較した結果,地形量が示す経時的な変化傾向は段丘の地形発達過 程(侵食の進行)と調和的であったことから,地形量により段丘面の侵食の程度を 定量的に表現できることが示された. (2)段丘対比指標としての信頼性と精度 重回帰分析法により地形量から段丘の形成年代を推定したところ,空中写真判読 による地形調査の結果と矛盾のない層位関係を回帰結果から得ることができた.検 討した地形量の中で,ラプラシアンの平均値は対比指標として最も信頼性が高いこ とが示された.また,回帰年代の誤差は,地域性の異なる段丘を含めても,最大で 10 万年程度であったことから,地形量による段丘対比は少なくとも 10 万年オーダ ーの分解能を持つことが示された. (3)段丘対比に適した DEM の品質の提案 精度が異なる 3 種類の標高データ(空中写真測量,航空レーザー測量,地形図) から,数パターンの解像度を設定して DEM を作成した.これらの DEM から算出した 地形量を比較した結果,高位・中位・低位段丘を区分するためには,標高データに は少なくとも空中写真測量(標高精度 1m,計測点間隔 10∼100m)と同程度の精度が 必要であり,10∼20m 程度の解像度の DEM を用いるのが妥当である. 以上から,空中写真判読による地形調査の中で,地形量を河成段丘の対比指標の 一つとして併用することで,段丘対比・編年の客観性と信頼性の向上に寄与できる. さらに,示標火山灰の分布が乏しい地域の段丘対比においては,地形量が有効な指 標となる可能性が示された. 今後の展開 様々な地域に分布する年代の明らかな段丘をケーススタディとして蓄積すること により,本手法の信頼性のさらなる向上を図る.また,隆起運動や地質条件等に起 因する地域性の影響を明らかにする.さらに,侵食量評価への応用を検討する. 1)地形の形状を計測することにより地形的特徴を数量化したものをさす. 2)標高の 2 次差分として算出される地形量であり,地形面の凹凸の形状と程度を表す指標となる. 3)段丘面のうち,侵食されずに残る初生時の段丘面の面積の割合を表現する地形量. 4)単位面積あたりの侵食量を表わす地形量. 研究報告 N07017 関連研究報告書 担当者 連 絡 先 [非売品・不許複製] キーワード:放射性廃棄物処分,段丘対比,開析,数値標高モデル,地形量 「河成段丘を用いた第四紀後期の隆起量評価手法の検討(1)段丘対比の考え方 の提案と河成段丘の編年に関わるケーススタディー」N05005(2005.9) 「河成段丘を用いた第四紀後期の隆起量評価手法の検討(2)那珂川沿いに分布 する河成段丘の層序」N05016(2006.4) 「河成段丘を用いた第四紀後期の隆起量評価手法の検討(3)過去10万年間の隆 起量分布により明らかにされた内陸部の地殻変動」N05017(2006.4) 山本 真哉(地球工学研究所 バックエンド研究センター) (財)電力中央研究所 地球工学研究所 Tel. 04-7182-1181(代) E-mail : [email protected] c財団法人電力中央研究所 平成20年2月 07−013
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