肥満治療は難しい-抗肥満症薬に期待する。(石丸忠彦)

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肥満治療は難しい一抗肥満症薬に期待する。
石丸内科胃腸科医院石丸
1.はじめに
忠彦
2.もと長寿県沖縄の変化
肥満が健康寿命を短くすることはよく知られて
いる。約300年前、貝原益軒は養生訓に、食生活
が多くの病気の原因になる、「病は口より入る」
と記載している。
肥満症の診療には、肥満と肥満症を明確に区別
する事が重要である。 BMI(体格指数即ち[体重
(kg)]/[身長(m)]りが25 以上あれば肥満と
判定される。これは身長に比して体重が多いこと
を示し、病気かどうか決めるものでない。胆満症
とはBM125以上で、肥満に関連する健康障害を
沖縄県は世界屈指の長寿の島として知られてい
た。しかし2000年には平均寿命ランキング(男
性)は26位に後退した。後に沖縄クライシスと
呼ぱれるようになった。戦後米国型の高脂肪の食
文化が流入し、脂肪エネルギー比率は常に全国平
均よりも 5 %上回っていた。 1965年より、脂肪
エネルギー比率は 25%を越え、 1980年より 30%
と更に上昇した。2005年の厚労省の統計では、
糖尿病が死因となる割合は男女とも全国第1位で、
心筋梗塞(女性)や脳出血(男性)が死因となる
合併するか、その合併が予測恪れる場合で、医学
的な見地から減量を必要とする病態と定義されて
割合は全国第3位であった。
いる。
いるものがある。琉球大学(第二内科)の益崎裕
章教授によると、①食習慣の急、激な変化、②活動
時間帯が夜にシフトし「生体りズム障害」を引き
おこす、③公共交通機関がなく、移動手段として
日本肥満学会は20Ⅱ年肥満に起因ないし関連
する健康障害として、以下のⅡの病態を挙げて
いる。この11の健康障害がーつ以上あれぱ胆満
症である(表1)。またBM125未満でも内臓脂
肪の多い肥満症予備軍の存在を考えている研究者
もいる。
表1
沖縄県の肥満急増の背景因子として指摘されて
自動車に依存している、④年間を通して温暖な気
候であるので「冷え込み」による熱産生の誘導が
ない等を挙げている。筆者は最近、沖縄を訪れた。
モノレールが一部に通っているが、自家用車が県
民の唯一の移動手段だとバスガイドが説明してい
肥満に起因ないし関連し、減量を要する
健康降害(文献1より引剛
た。これが運動不足を助長していると実感した。
肥満症の診断基準に必須な合併症
3.長崎県の現状
1)耐糖能障害(2型糖尿病・耐糖能異常など)
2)脂質異常症
3)高血圧
4)高尿酸血症・痛風
5)冠動脈疾患:心筋梗塞・狭心症
6)脳梗塞:脳血栓症・一過性脳虚血発作(TIA)
フ)脂肪肝(NAFLD)
8)月経異常、妊娠合併症(妊娠高血圧症候群、
妊娠糖尿病、難産)
9)睡眠時無呼吸症候群・肥満低換気症候群
10)整形外科的疾患:変升多陛関節症餌黍、股関
節)・変形性脊椎症、腰痛症
Ⅱ)肥満関連腎臓病
平成24年厚労省が体格及び生活習慣に関する
都道府県の状況(国民健康・栄養調査結果)を発
表した。沖縄県と対比する(表2)。 BM1では長
崎県は全国順位で男性1位、女性2位で、沖縄県
とほぼ同じである。一日歩数は、長崎県では男女
とも全国43位で沖縄県より運動量は少ない。野
菜摂取量は、男性は21位と沖縄より少し多い。
長崎大学(第一内科)阿比留教生准教授は最近
の講演会で以下の事を述べていた。長崎県のBMI
は、男性は全国第1位、女性も第2位と不名誉な
優勝と準優勝である。平成24年国民健康・栄養
調査、 2008年総務省家計調査などにより、長崎
県の肥満の原因として①坂道が多くて自転車が普
長崎県医師会報第832号平成27年5月
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BMI、歩数、野菜摂取量の状況(平成24年国民健康・栄養調査結果の概要(厚労省)より引用)
全国平均
BM1の平均値(kg/mり
歩数の平均値(歩/日)
野菜摂取量(g/日)
長崎県の全国順位
沖縄県の全国順位
男性
23.6
1 イゾ
24.4
3位
24.3
女性
22.5
2位
23.6
1 イゾ
23.9
男性
フ,791
43位
6,823
10 位
8,079
女性
6,894
心位
6,226
10位
フ,199
男性
297
21位
301
37位
275
女性
280
42位
253
44 イ立
240
及しない、②バス停の間隔が短い、③坂の上に住
む高齢者を中心にタクシー利用者が多いことなど
が考えられる。(1×2×3)により、自転車での移動や
歩数の減少につながり、運動不足となる事に加え、
伝統的に砂糖摂取量が多いこと(全国2位)が、
肥満がどんどん増えている原因ではないかと考え
ているようだ。
ジェリー)が行われている。消化管を操作するこ
とで、摂取量の低下と吸収能の抑制による減量を
期待する。体重減少の他に代謝異常症の改善も認
められている。適応は内科治療に1尉亢性で、 BMI
が35以上で肥満による合併疾患を持つものと
なっている。本邦では腹腔鏡下スリーブ状胃切除
術と、腹腔鏡下ROUX、en、Y 胃バイパス術が主に
行われている。平成26年より、長崎大学病院で
も腹腔鏡下スリーブ状胃切除術を開始しており、
4.肥満症の治療
生活習慣の修正による体重の減量が最も簡単な
方法である。しかし食事療法、運動療法で効果が
出る指導は難しいのが現状である。体重の制御は
摂取カロリーとエネルギー消費のバランスからな
る。消費エネルギーの約30%が運動に由来する。
摂取カロリーを減らした方が、減量にはより効果
的である。しかし運動で多くのエネルギーカ斗肖費
されると誤解している事が多い。体重70kgの人
が30分間ジョギングしても消費カロリーは約
280kca1で、菓子パン 1個分にも満たない。
このような背景から抗胆満症薬の開発が進めら
れている。本邦では安全性が高く、長期に使用出
来る抗肥満症薬は現時点ではない。開発状況のー
部を紹介する。日本で認可されているのはマジン
トールのみである。 BM135以上の高度肥満に限
られ、 3 力月間の使用罰邦艮がある。セチリスタッ
ト(りパーゼ阻害剤)が製造承認をうけたが、販
売開始はまだ未定である。ロルカセリン(セロト
ン 2C受容体のアゴニスト)は、 2012年米国
内科と外科が連携した肥満治療が進められている。
5.無形文化遺産としての日本食
「和食:日本人の伝続的な食文化」が一昨年ユ
ネスコの無形文化遺産に登録された。農水省は、
和食は海、山、里の豊富な食材を使い、一汁三菜
を基本とする理想的な栄養バランスのとれた日本
の食事であると紹介している。欧米人から見ると
日本食は健康食かも知れない。しかし日本では伝
統的和食は高級な食文化として限られた一部の人
に楽しまれていると思われる。多くの人は一汁三
菜の栄養バランスのとれた日本食は食べてないと
思う。和食が嫌厭されるのは手間がかかることと
材料代が高価なことであろう。多忙なサラリーマ
ンや共稼ぎの家庭では調理に時間を掛ける余裕が
ない。高齢者は、腰痛や膝痛で立ち仕事が苦手で
ある。その結果、調理のいらないスーパーの弁当
や惣菜に頼るようになる。野菜が良いと知ってい
ても、トマト、キュウリ、レタスなど買うと 500
で承認されている。わが国でも第1相試験が開始
されている。 saxenda (GLP・1 アナログ製剤、リ
ラグルチドと同じ成分)が2014年12月米国で承
円は掛かる。 500円あるとスーパーの弁当とス
認されている。
来にくい。
イーツが買える。こんな現状では農水省が推奨す
る和食中心の食生活で、体重を減らす事は期待出
内科的治療(生活習慣の改善)で十分に減量出
来ないときは胆満外科手術(メタボリックサー
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長崎県医師会報第832号平成27年5月
ー〆
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6.当院での試み
せるだけで多くの合併症を改善させることが可能
患者教育は難しい。栄養や食事についての誤解
がある。ことに高齢者に多い。野菜の摂取を奨め
たら、しっかり食べていると答えた。問い質すと
であると強調した。
イモ類のことだった。イモには炭水化物が多いこ
た。体重減量は医療費の削減に貢献する。
生活習慣の是正は難しい。国民に正しい栄養学
とを理解していない。サルコペニア予防の為に蛋
白質を奨めても、どんな食品に蛋白質が多いか分
らない。長崎県民に栄養学についての正しい知識
を持たせる事が必要である。
当院では看護師が基本的な事を指導している。
肥満者が使う医療費は正常体重者よりも16%
も高いと日本人を対象としたコホート研究で分っ
の知識を持たせる事が必要である。開業医に通院
してぃる患者に管理栄養士による個別指導が出来
るシステムの構築を切望する。
1) 1日 3食とる事。早食いは'駄目。よく噛む事。
高カロリーの食料品や噌好品が入手しゃすい状
況では食事療法は極めて難しい。長期投与が可能
2) 3大栄養素の役割と摂りすぎの弊害。
で、安全性の高い抗胆満症薬の登場が期待される。
3)食べる順番が大事。①まず野菜②副食③主食
謝辞
の順で。
本論文の投稿に際してご助言頂きました長
4)夜食は禁止。就寝3時間前には夕食を終る事。
崎大学病院内分泌代謝内科(一内)阿比留
5)脂肪は少なめに。蛋白質は多めに。
患者の理解度に応じて、上記5項目を分割して
教生准教授に深謝いたします。
参考文献
教えている。体重がlkgでも減ったら褒め称え
る。
フ.おわりに
肥満症の治療目的は、生活習慣の改善によって、
体重を減らして合併症を改善させる事である。本
年2月の糖尿病学の進歩(岡山市)で日本肥満学
会副理事長の宮崎滋医師はBM1を必ずしも25以
下にする必要はない。現体重を3 5%減少さ
1.最新医学、第 68巻 1号 2013、特集:1巴満症
2.日本医師会雑誌、第 H3巻8号2014、特集
糖尿病の治療の進歩
3. DITN (Diabetes in the news)、平成 27年3
月5日発行、抗肥満症薬開発の展望
4.第49 回糖尿病学の進歩、平成 27年2月20日
5.糖尿病予防および管理のための栄養と運動
(2侃2)、日本糖尿病協会監修、清野裕編
1発1尋ず織紐露0熊
令⑤G@セS ゜
日本医師会標準レセプトソフト 旧レセ)紹介
デモ機を県医師会館に展示しています。
宅、、勢
詳しく知りたい、検討したいとお考えの先生方、長崎県内
で納入実績がある日本医師会認定サポート事業所のご紹
介をご希望でしたら県医師会事務局[情報システム係]
へご連絡下さい。
[TEL 095-844-1111/FAX 095-844-1Ⅱ田
[E・mail: zimu・[email protected]]
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