1 この授業について 秋学期前半(9 月 25 日~11 月 20 日) 1

国際関係論(1 年生)/国際関係論 I (2 年生以上) 第 01 回 9 月 25 日
「ガイダンス」
http://islamandeconomy.web.fc2.com/2015chuis/
この授業について
秋学期前半(9 月 25 日~11 月 20 日)
1 年生の「国際関係論」の前半部分(秋学期前・後半で 4 単位)
2 年生以上の「国際関係論 I」(秋学期前半で 2 単位)
講義内容は同じだが成績評価と授業期間が異なるので注意
授業概要
国際関係とは、
「国と国の間の関係」を指す言葉です。そのため、複数の国をまたがって発生する
諸問題に対しては、各国の政府、ないしは各国が加盟する国際機構によって解決が図られます。
ここで重要なポイントとなるのは、国をまたいで発生する国際問題とは何かという点と、そうし
た諸問題に対応する国家と国際機関とは何か、という点の 2 つです。本講義では、具体的な国際
問題を取り上げつつ、その解決を図ろうとしている国家と国際機構のあり方を考えていきます。
具体的には、まず国際関係の主要なアクターである国家と国際機構を取り上げ、国際関係の枠組
みが戦後どのように変化したかを確認します。次に、具体的な国際問題として、政治分野では安
全保障と人権問題、市民運動を取り上げます。経済分野では、貿易体制、多国籍企業の活動、南
北問題、環境問題、人口問題に注目します。そして最後に、国際社会および国際機構における日
本のあり方を議論します。
授業計画
9月25日
第 01 回
「ガイダンス」
9月25日
第 02 回
「国際関係のアクター」
10月2日
第 03 回
「国際機構」
10月2日
第 04 回
「国際関係の構造」
10月9日
第 05 回
「安全保障(1)」
10月9日
第 06 回
「安全保障(2)」
10月16日
第 07 回
「国際関係の理論」
10月16日
第 08 回
「人権問題」
10月23日
第 09 回
「国際経済関係(1)
」
10月23日
第 10 回
「国際経済関係(2)
」
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国際関係論(1 年生)/国際関係論 I (2 年生以上) 第 01 回 9 月 25 日
「ガイダンス」
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11月6日
第 11 回
「多国籍企業(1): 経済的存在」
11月6日
第 12 回
「多国籍企業(2): 社会的存在」
11月13日
第 13 回
「人口問題」
11月13日
第 14 回
「南北問題」
11月20日
第 15 回
「国際問題に対する日本」
評価方法
評価方法
国際関係論
国際関係論
I
テスト: 1 回(11 月の試験期間) 35点(中間テスト)
70点(期末テスト)
出席点: 授業ごとにクイズを4
15点(0.5 点×30 問)
30点(1 点×30 問)
問出題(15 回目のみ 2 問)
8点未満は単位認めず
15点未満は単位認めず
合計点
50点(残り50点は後半。前後
100点(前半のみ2単
半を合わせて4単位で評価)
位で評価)
科目の目標・到達目標
(1)国際関係においてどのような問題が生じているのかを知る。
(2)前記諸問題について自分なりの見識と対応策を養う。
テキスト・参考文献
指定のテキスト(教科書):
なし
毎授業時に配布資料(テスト持込可)を配布
参考文献
西川潤
家正治編
(テスト持込不可。卒論などであると便利)
『新・世界経済入門』
『新版
国際関係』
奥田・佐藤・原・文編
原彬久編
『国際関係学
岩波新書、2014 年、860 円.
世界思想社、2000 年、2,300 円.
『エティック
講義
国際関係学』
第 4 版』
東信堂、2011 年、2,400 円.
有斐閣、2011 年、2,300 円.
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国際関係論(1 年生)/国際関係論 I (2 年生以上) 第 01 回 9 月 25 日
「ガイダンス」
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授業外の学習活動
新聞・雑誌などのメディア、書籍等を通じて、本授業で取り扱う諸問題に対し常に関心を持って
接して下さい。授業内容でわからないことがあれば、所定の方法で質問して下さい。
所定の方法:
[email protected]
その他の特記事項
前もって履修しておくべき科目・講義、前提となる知識は特にありません。
私が担当する秋学期の「国際関係論 II」と併せて履修して下さい。
日本だけでなく、海外に対しても視野を広げたい学生の履修を歓迎します。
民族紛争の例:インドとパキスタンの国境検問所
インドとパキスタンの国境検問所
ワガー国境検問所
(Wagah Border Checkpoint)
両国を陸路(道路)で結ぶ、数少ない国境の検問所
→インドとパキスタンの「緊張状態」を知
ることができる場所
国旗降納式:
背景:
両国軍による示威行為
インドとパキスタンの関係
第二次世界大戦後のイギリス:
大戦に勝利するも国勢が疲弊
→植民地を手放す
イギリス領インド帝国:
多数派のヒンドゥー教徒と少数派のムスリムの対立
マハトマ・ガンディー:
「統一インド」を提唱
ムハンマド・アリー・ジンナー:
全インド・ムスリム同盟、「二民族論」を提唱
二民族論(Two-Nation Theory)
民族:
人種(身体的特徴)、言語、宗教、歴史観を共有する人々によって構成
国民国家(Nation-State):
一つの民族で一つの国家を形成
ヒンドゥー教徒とムスリムは、宗教が異なるので同じ民族とはいえない
パンジャーブ州:
その後:
印パに分裂。難民の発生
複数の印パ戦争、核開発合戦
←独立以来の対立構造変わらず
3
→別々の国を作るべき
国際関係論(1 年生)/国際関係論 I (2 年生以上) 第 01 回 9 月 25 日
「ガイダンス」
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国旗降納式
インド側:
観客:
国境治安部隊
⇔
パキスタン側:
レンジャー部隊
印パそれぞれに観客席を設置。国旗降納式を見学できる
夕方の閉鎖時:
両国とも検問所に掲げた国旗を降ろし、門を閉鎖
軍による行動が示威的。観客による応援合戦
国旗降納式の意味
対立の象徴: 見学・鑑賞: 自国と他国を目にすることが可能。軍隊、国旗、応援のコール
→
双方とも愛国的
平和の象徴:
「印パ間には対立がある」という前提。本当に戦争状態ならば、まずはこの地域
で戦闘が行われるはず。両国の応援合戦も、決して「一線」は超えない
地域紛争
近隣諸国を典型とする、少数の国々の間で発生する武力紛争
全世界を巻き込むようなものではないため、局地紛争とも呼ばれる(→世界を二分するような背
景、論理がない)
紛争発生の理由・争点:
領土帰属、政治イデオロギー、民族対立、宗教対立
民族紛争
地域紛争のうち、発生原因が主に民族対立に起因するもの
印パ紛争:
1947, 65, 71 年の 3 回発生
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国際関係論(1 年生)/国際関係論 I (2 年生以上) 第 02 回 9 月 25 日
「国際関係のアクター」
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I.
国際関係とそのアクター
国際関係論とは?
国際関係論:
国際社会におけるさまざまな現象を扱う学問
既存の学問的な垣根(=研究対象分野)を越えて、学際的に分析
第二次世界大戦後の国際社会
植民地体制の崩壊
植民地の独立:
国際社会は地球規模に拡大
国家間の相互依存関係の深化
国家は、国際社会とのかかわりなしに発展しえない
→国際機関が必要
国際機関の役割
国際社会の組織化。国際秩序の維持の手段。国際協力
国を超えた or 全人類共通の問題・課題の解決
非国家的アクターの登場
多国籍企業と民間団体(NGO)
外交:
国家間で行われるもの
⇔
民間外交
「国家のみが利して国民を蔑ろになってはならない」という発想
人類全体の利益、市民社会(civil society)の利益の重視
II.
国家
(1)ウェストファリア条約
背景
三十年戦争(1618-1648 年)
: ローマ・カトリック教会、各地の国家・領主、プロテスタント勢
力、貴族
→ウェストファリア条約(ヴェストファーレン条約)の締結
条約の内容と欧州秩序
主権国家:
各国の領土権と領土内の法的主権の確立。相互内政不可侵
国家主権を超えた超域的存在による欧州統一の否定
主権を持つ各国が欧州域内で並存
→並存を前提とする各国の勢力均衡
ウェストファリア体制
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国際関係論(1 年生)/国際関係論 I (2 年生以上) 第 02 回 9 月 25 日
「国際関係のアクター」
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(2)モンテビデオ条約
概要
1933 年、ウルグアイのモンテビデオにて、アメリカと南米諸国が結んだ条約
正式名称:
国家の権利及び義務に関する条約
国家の資格要件:
国家の承認:
永久的住民。明確な領域。政府。他国と関係を取り結ぶ能力
ある地域において先行する国家がない場合
国家としての要件を充たしているかを判断・認定する国際機関:
存在せず
国連への加盟をもって国際的な国家承認ととらえることが多い
政府の承認:
同じ地域に先行する別国家が存在する場合
国家の承認と同様、政府の承認は他国からの承認や国際機関への加盟によってなされる
(3)国家と住民の関係
国民(Nation)
定義:
国家的意志によって形成された基礎集団、またはその成員
国民国家(nation state)と多民族国家(multinational state)
近代:
「○○国民であること」と「××民族であること」が同義
現代:
「○○国民であること」と「××民族であること」が一致しない
「○○国民であること」を示すために、国籍制度が導入
国籍(Nationality)
国家の構成員としての資格を示す制度
⇔
多重国籍。無国籍
何を根拠に国籍が決まるのか?
血統主義:
親がどこの国籍を有するかによって本人の国籍が決定
出生地主義:
日本の国籍法:
どこで生まれたかによって本人の国籍が決定
日本の国政を取得:
①出生、②届出、③帰化
外国人(Foreigner, Alien)
外国人である者:
自国の国籍を持たない者。外国籍しか持たない者。無国籍者。国家と承認さ
れていない「国」の住民
外国人ではない者:
自国の国籍を持つ者。自国と他国の二重国籍者
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国際関係論(1 年生)/国際関係論 I (2 年生以上) 第 02 回 9 月 25 日
「国際関係のアクター」
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外国人に対する制限:
法律上の制限、社会上の制限
ナショナリズム(Nationalism)
定義:
国家の居住者(=国民)の統一、独立、発展を希求する思想・運動。多民族国家の国民
にもナショナリズムは芽生える→「民族主義」の訳は×
機能:
国民意識を高揚。国内の団結。国外への対抗意識
⇔
極端な愛国主義、国際社会を敵
視する自国中心主義(エスノセントリズム)
ナショナリズムの誕生:
フランス革命とナポレオンの遠征。近代国民国家を支える精神的要素
として普及
2 つのナショナリズム:
西欧型ナショナリズムと非西欧型ナショナリズム
国民統合
国家:
国家に愛着・忠誠を誓う国民の存在が、国家成立の基盤
国民のわれわれ意識が自国に向かうよう、意識喚起させる事象・表彰を国家が戦略的に創出
(4)国家と領土の関係
国家の主権(統治権)が及ぶ領域
領土:
大陸または島の、全部または一部が対象
領海:
国家主権が及ぶ海域。領海は 12 カイリ(22.2km)(国連海洋法条約)
領空:
領土、領水、領海の上空。他国の飛行機は自由な通行不可。無許可での通行は領空侵犯
(5)住民と領土の関係
行政上の区分
国家運営が円滑に進むために、領土を地域ごとに分割
生活上の区分
生活圏:
周囲の環境と交渉をもち、互いに影響しあい様々な生活行動が生じる。環境作用の原
則が働き、共通の思考や行動が生まれる空間領域。社会内部において、各経済・生活主体である
人びとが共通のかかわりあい生じる地域範囲
共同体:
強い連帯感、地域性と一体的な感情とに支えられた地域社会
コミュニティー:
一定地域の住民が、その地域の風土的個性を背景に、その地域の共同体に対
して特定の帰属意識をもち、自身の政治的自律性と文化的独自性を追及すること
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国際関係論(1 年生)/国際関係論 I (2 年生以上) 第 02 回 9 月 25 日
「国際関係のアクター」
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III.
脱国家的行為体
(1)多国籍企業
特徴
定義:
二カ国以上にまたがって生産や販売の拠点(事業体)を有し、本部の意思決定に基づく
戦略によって統合されている企業(グループ)
活動: 資本の蓄積を進めて巨大化。新たな原材料の調達地、製造拠点、市場を求めて海外進出。
世界に点在する資源・人材を有効に組み合わせて高付加価値生む
展開
第二次世界大戦後:
米。ソ連の影響力拡大を阻止するため、西ヨーロッパへの直接投資と、米
企業の同地域進出を支援
1970 年代:
西ヨーロッパ企業、日本企業も多国籍化
冷戦終結後:
多国籍企業は旧東側に進出。多国籍企業にとって世界が進出先であり競争
国際社会にとっての多国籍企業の問題と対応
巨大すぎる存在:
対応:
売上高は小国の GDP を上回る。利益のみを追求すれば多くの国に悪影響
利潤追求に陥らず、世界各地の人びとの利益となるよう、各国が各種規制
(2)NGO
NGO の誕生
西欧近代国家:
公的性格を持つ政治社会
⇔
私的性格を持つ経済社会・市民社会
国家:
社会権の保障
市民:
①同じ市民に対する NGO、②政府と対立する NGO
NGO の取り組み
社会的な諸問題:
社会秩序:
難民救済、人権保障、環境保護など。国内外の「現場」で活動
固定化された社会システムを改善。教育・啓蒙活動
国際機関との連携
共同活動:
国連の UNHCR やユニセフと NGO による共同活動
情報提供:
NGO の現場経験の情報をレポート化
国際機関のチェック:
政治犯釈放、軍縮などの問題に対し NGO が意見表明を行い、国連の迅
速な対応を求める
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