2014 年度優秀フォーキャスターに聞く

ESP フォーキャスト調査
日本経済研究センター
2015 年 10 月 16 日
2014 年 度 優 秀 フォーキャスターに聞 く
不確実性高まる日本経済
ESP フ ォ ー キ ャ ス ト 調 査 で 、 2014 年 度 を 対 象 に 年 度 パ フ ォ ー マ ン ス 評 価 を 行 っ た 。
年 度 パ フ ォ ー マ ン ス 評 価 は 今 回 で 11 回 目 。
フ ォ ー キ ャ ス タ ー 計 41 人 ( 2014 年 4 月 調 査 時 点 ) の 予 測 が 実 績 と 対 比 し て ど の よ
うに評価できるか、また、毎月公表している予測総平均や高位・低位 8 機関平均が同
じくどのように評価できるかを調査委員会(委員長:小峰隆夫法政大学教授)に検討
してもらった。
04 年 度 よ り 、年 度 の 予 測 成 績 の 良 か っ た フ ォ ー キ ャ ス タ ー を「 総 合 成 績 優 秀 フ ォ ー
キ ャ ス タ ー 」と し て 発 表 し て い る 。14 年 度 の 結 果 は 15 年 9 月 25 日 に 公 表 し た 。そ こ
で 、小 峰 委 員 長 と 、1 4 年 度 予 測 成 績 が 優 秀 で あ っ た 5 名 の フ ォ ー キ ャ ス タ ー に 今 後 の
日本経済の見通しについてコメントをいただいた。
ESP フ ォ ー キ ャ ス ト 調 査 予 測 に お け る 総 合 成 績 優 秀 フ ォ ー キ ャ ス タ ー ( 敬 称 略 )
2014 年 度 ( 機 関 名
(株 )第 一 生 命 経 済 研 究 所
(株 )東 レ 経 営 研 究 所
(株 )ニ ッ セ イ 基 礎 研 究 所
(株 )日 本 総 合 研 究 所
BNP パ リ バ 証 券 (株 )
50 音 順 )
新家 義貴
増田 貴司
斎藤 太郎
下田 裕介
河野 龍太郎
( 参 考 ) 2013 年 度 ( 機 関 名 50 音 順 )
インフォーマ グローバル マーケット ジャパン(株 )
荒田 健児
(株 )第 一 生 命 経 済 研 究 所 新 家 義 貴
(株 )ニ ッ セ イ 基 礎 研 究 所 斎 藤 太 郎
富国生命保険相互会社
森実 潤也
三井住友信託銀行(株) 花田 普
※機関名、個人名は発表時点。
http://www.jcer.or.jp/
1
ESP フォーキャスト調査
日本経済研究センター
2014 年 度 優 秀 フォーキャスターに聞 く
ESP フ ォ ー キ ャ ス ト 調 査 委 員 長
小峰隆夫・法政大学教授
ESP フ ォ ー キ ャ ス ト 調 査 は 、 2004 年 に 発 足 し て 以 来 、 着 実 に 各 方 面 に 浸 透 し 、 景 気
の先行きを判断する貴重な資料として活用されている。まずは、この調査に参加し、
毎月面倒なアンケート調査にご協力いただいている第 1 線のエコノミストの方々に感
謝したい。
今 年 も 、 2014 年 度 の 実 績 を 基 に 11 回 目 の 参 加 フ ォ ー キ ャ ス タ ー の パ フ ォ ー マ ン ス
評価を行った。コンセンサス予想は、今年もベストテンに入ったが、これは毎年のこ
となので、全く驚かない。我々が毎月公表しているコンセンサス予想は、単なる予測
者の平均というだけではなく、
「 良 い 予 想 」で あ る こ と が 再 び 示 さ れ た わ け だ 。そ れ 以
外については次のような特徴がみられた。
第 1 に、第一生命経済研究所の新家義貴氏が、7 年連続で成績優秀者(上位 5 人)
に入った。昨年、6 年連続となった時にも相当驚いたが、今年は更に驚いた。もちろ
ん連続入賞回数としては新記録だし、累積入賞回数(同じく 7 回)も最多である。
第 2 に 、 2014 年 度 は 弱 気 派 ( 低 位 8 機 関 ) の 予 測 が 好 成 績 だ っ た ( コ ン セ ン サ ス と
同 じ 7 位 )。 今 回 の 評 価 結 果 と 同 時 に 公 表 さ れ た 、 河 越 正 明 氏 の 「 2014 年 度 ESP フ ォ
ーキャスト調査の評価に関するテクニカルノート」に、調査時点ごとの、総平均、高
位 8 機 関 、低 位 8 機 関 平 均 の 予 測 と 最 終 的 実 績 を 比 較 し た 図 が あ る( 図 3)。こ れ を 見
る と 、 例 え ば 、 年 度 の 実 質 GDP 成 長 率 に つ い て は 、 い ず れ の 予 測 も 過 大 予 測 か ら 出 発
して、時を追うごとに下方修正を繰り返していることが分かる。低位予測の方が下方
修正の度合いが小さく済んだので、成績が良かったということである。
中国経済の減速で日本の輸出が鈍化していることもあり、これからの景気にも目が
離 せ な い 。最 新( 10 月 )の ESP フ ォ ー キ ャ ス ト 調 査 に よ る と 、7~ 9 月 期 の 成 長 率( 実
質 年 率 )は 0.55% と 低 い 伸 び が 見 込 ま れ て お り 、現 時 点 で 景 気 が 後 退 局 面 に 入 っ て い
る と い う エ コ ノ ミ ス ト も 2 人 現 わ れ た( 9 月 ま で は ゼ ロ だ っ た )。コ ン セ ン サ ス は 、一
応、景気の腰折れはないということだが、やや怪しい面も出てきているようだ。
こうした予測が来年どう評価されることになるのか、その結果を見るのが今から楽
しみである。
http://www.jcer.or.jp/
2
ESP フォーキャスト調査
日本経済研究センター
2014 年 度 優 秀 フォーキャスターに聞 く
株式会社第一生命経済研究所 経済調査部
主席エコノミスト
新家 義貴(しんけ・よしき)
【プロフィール】
1998 年 に 東 京 大 学 法 学 部 卒 業 後 、第 一 生 命 保 険 入 社 。同 年 、第
一 生 命 経 済 研 究 所 へ 出 向 。 2002 年 に 内 閣 府 出 向 。 2004 年 に 第
一 生 命 経 済 研 究 所 に 復 帰 後 、 2011 年 よ り 現 職 。
(問1)今後の景気を展望したとき、最大のリスク要因は何であるとお考えですか。
中国経済の先が見えないことが最大のリスクだ。中国景気の減速に歯止めがかから
ないようであれば、輸出の回復はさらに遅れることになり、景気下振れが避けられな
いだろう。また、輸出の低迷が続く場合、設備投資が下振れる公算が高まる。設備投
資計画は確かに強いが、これはあくまで計画に過ぎず、実際の設備投資が増えること
が保証されているわけではない。個人消費や輸出が低迷を続ける場合、設備投資だけ
が高い伸びを続けるということは考えにくく、計画されていた投資案件は先送り され
ることになるだろう。こうなれば、景気は完全に牽引役不在になり、景気後退も視野
に入る。
これはあくまでリスクシナリオだが、その実現可能性が数ヶ月前に比べて明らかに
高まっていることは間違いない。景気は正念場を迎えている。
( 問 2 )中 長 期 の 日 本 経 済 を 展 望 し た と き 、日 本 経 済 の 潜 在 成 長 率 の 引 き 上 げ や 日 本
企業の競争力向上にはどのような政策が必要だとお考えですか。
過剰な規制が民間の経済活動を阻害し、成長分野の出現を妨げていることが、日本
経 済 が 抱 え て い る 大 き な 問 題 で あ る 。 政 府 は 、「 民 間 に で き る こ と は 民 間 に ま か せ る 」
という精神を徹底し、企業がより経済活動を行いやすい環境を整えることに注力すべ
きだろう。その意味において、規制緩和は非常に重要だ。現在国が提供している公的
サービスについても民間の参入を広く認め、競争原理を働かせることで、より効率的
に人々のニーズにあったサービス提供が可能になる。成長分野もこうした競争の結果
として生まれるだろう。また、限られた労働資源を効率的に活用するため、 雇用規制
の緩和も重要だ。終身雇用や年功賃金にこだわらず、成長産業へのスムーズな労働移
動が可能になる仕組みを作る必要があるだろう。
http://www.jcer.or.jp/
3
ESP フォーキャスト調査
日本経済研究センター
2014 年 度 優 秀 フォーキャスターに聞 く
株式会社東レ経営研究所
産業経済調査部門長・チーフエコノミスト
増田 貴司(ますだ・たかし)
【プロフィール】
1983 年 京 都 大 学 経 済 学 部 卒 。同 年 日 本 債 券 信 用 銀 行 入 行 。2000 年 に 東
レ 経 営 研 究 所 に 入 社 。 産 業 経 済 調 査 部 長 を 経 て 、 2014 年 か ら 現 職 。
(問1)今後の景気を展望したとき、最大のリスク要因は何であるとお考えですか。
過 去 20 年 間 、日 本 経 済 の 回 復 の 腰 折 れ の き っ か け は 、ほ ぼ 例 外 な く 海 外 経 済 の 減 速
で あ る( 天 変 地 異 を 除 く )。現 状 、国 内 要 因 で は 内 需 の 回 復 基 調 が 続 く シ ナ リ オ が 維 持
されているが、海外経済が悪化すれば景気後退局面入りが避けられない。
国 際 通 貨 基 金 ( IMF) の 最 新 の 世 界 経 済 見 通 し ( 10 月 6 日 発 表 ) で は 、 2015 年 の 世
界 の 成 長 率 予 測 が 3.1% に 下 方 修 正 さ れ 、 2016 年 に つ い て は 成 長 テ ン ポ が 高 ま る も の
の 3.6% と 、 過 去 5 年 の 平 均 ( 3.9% ) に 届 か な い 水 準 と さ れ た 。 海 外 発 の 日 本 景 気 腰
折れに黄色信号が灯った状態だ。
世界経済の下振れ要因として、①中国経済の減速の深刻化、②世界景気の唯一の牽
引役である米国の成長率下振れ、③米国の利上げを契機として新興国経済や金融市場
が混乱するリスク、などに最大限の注意が必要であろう。
( 問 2 )中 長 期 の 日 本 経 済 を 展 望 し た と き 、日 本 経 済 の 潜 在 成 長 率 の 引 き 上 げ や 日 本
企業の競争力向上にはどのような政策が必要だとお考えですか。
潜在成長率引き上げのためには、企業が抱く日本経済の期待成長率を上向かせ、国
内での設備投資と賃金引上げに対する企業の自信が深まるような、政策パッケージを
発動することが必要である。日本を「世界で一番企業が活動しやすい国」にするため
の 規 制 緩 和 、企 業 活 動 を 活 発 に す る 民 営 化 、競 争 促 進 、市 場 開 放 政 策 を 推 進 す べ き だ 。
人類史上「異次元」の高齢化社会に突入する中、女性・高齢者、外国人材の活用を促
進して、供給制約の解消を図ることも不可欠だ。
ICT の 進 化 に 伴 い 、 異 業 種 間 競 争 の 頻 発 、 新 た な ビ ジ ネ ス モ デ ル の 噴 出 、 第 4 次 産
業革命の到来といった現象が生じている。この環境下で競争優位を実現するには、縦
割り行政や業種の壁を超えて、日本が得意分野で「稼ぐ仕組み」を構築する戦略的布
陣を敷くべきだ。創造力あふれる人材を育む教育の充実も急務である。
http://www.jcer.or.jp/
4
ESP フォーキャスト調査
日本経済研究センター
2014 年 度 優 秀 フォーキャスターに聞 く
株式会社ニッセイ基礎研究所
斎藤
経済調査室長
太郎(さいとう・たろう)
【プロフィール】
1992 年 年 京 都 大 学 教 育 学 部 卒 。
1992 年 日 本 生 命 保 険 相 互 会 社 入 社 。
1996 年 ニ ッ セ イ 基 礎 研 究 所 。 2012 年 か ら 現 職 。
(問1)今後の景気を展望したとき、最大のリスク要因は何であるとお考えですか。
企業収益の悪化。消費税率引き上げの影響で家計部門が大きなダメージを受ける一
方、企業部門は円安、原油安の追い風を受けて収益が好調を維持したことから、景況
感が良好な水準を維持し、景気が総崩れとなることは回避された。ここにきて中国を
はじめとした新興国経済の減速が鮮明となっていること、個人消費を中心とした国内
需要が依然として低調であること、円安の進行が止まっていること、など企業収益を
取り巻く環境は厳しくなっている。企業部門改善の起点となってきた企業収益が減少
に転じれば、景況感が悪化し、このことが雇用、設備の抑制をもたらすという悪循環
につながる可能性がある。企業の人手不足感は非常に強いが、労働需要の強さを反映
したものというよりは将来の労働力不足に備えている面が強い。企業収益、景況感が
悪化に転じた場合は逆に雇用の過剰感が一気に高まるリスクがある。
( 問 2 )中 長 期 の 日 本 経 済 を 展 望 し た と き 、日 本 経 済 の 潜 在 成 長 率 の 引 き 上 げ や 日 本
企業の競争力向上にはどのような政策が必要だとお考えですか。
規制緩和を進め、高齢化に伴い需要が高まっているサービス産業に供給力をシフト
さ せ る こ と に よ っ て 、潜 在 的 な 需 要 を 掘 り 起 こ す 取 り 組 み が 重 要 。さ ら な る 人 口 減 少 、
高齢化が進む中で潜在成長率を高めるためには、女性、高齢者の労働参加拡大も不可
欠で、政府はそのための環境整備を進めることが求められる。成長戦略への期待は非
常に高いが、政府が成長産業を特定しそこに資金を大量に投入するという発想には疑
問がある。政府が将来の成長産業を正確に予想することは極めて困難であり、見通し
を間違った場合の負担は国民が負うことになる。成長産業は民間が自らリスクをとっ
て失敗を繰り返しながら切り拓いていくもので、政府の役割は規制緩和などによって
そのための環境を整備することである。政府は民間ができない財政、社会保障制度改
革などに注力すべきだ。
http://www.jcer.or.jp/
5
ESP フォーキャスト調査
日本経済研究センター
2014 年 度 優 秀 フォーキャスターに聞 く
株式会社日本総合研究所 調査部 マクロ経済研究センター
副主任研究員 下田 裕介(しもだ・ゆうすけ)
【プロフィール】
2005 年 東 京 工 業 大 学 大 学 院 修 了 。同 年 、三 井 住 友 銀 行 入 行 。2006 年 日
本 経 済 研 究 セ ン タ ー 出 向 を 経 て 、 2008 年 か ら 現 職 。
(問1)今後の景気を展望したとき、最大のリスク要因は何であるとお考えですか。
中国経済の減速が下振れリスクとして挙げられる。中国では、経済の「新常態」へ
の移行に伴い過剰投資・過剰信用の構造調整を進めているが、企業部門の債務残高が
日本のバブル期を上回る規模に膨らんでいるなど、こうした調整圧力は非常に大きい
とみられる。
中国経済の下振れにより、中国向け輸出の減少のみならず、企業の景況感・消費者
マインドの冷え込みや中国現地法人の売り上げ減少などを通じた設備投資や個人消費
の 抑 制 が 、「 直 接 的 」 影 響 と し て 指 摘 で き る 。 さ ら に 、「 間 接 的 」 な 影 響 に も 注 意 が 必
要である。わが国を除く東アジアにおける付加価値ベースの 中国向け輸出額は、対名
目GDP比で5%近く(わが国は2%程度)あり、中国の最終需要の減少が同地域の
経済を下押しすることによるわが国への影響も無視できない。
( 問 2 )中 長 期 の 日 本 経 済 を 展 望 し た と き 、日 本 経 済 の 潜 在 成 長 率 の 引 き 上 げ や 日 本
企業の競争力向上にはどのような政策が必要だとお考えですか。
わが国では、需要面からみると、①サービス分野(少子高齢化に伴うケアサービス
やインバウンド需要)の存在感拡大、②「生産拠点」から「販売拠点」に変わりつつ
ある新興国、など大きな構造変化に直面している。一方で、供給面では、労働需給が
逼迫し供給不足の状況にある。以上を踏まえれば、わが国では「供給側の変革を通じ
た需要構造の変化への対応」を今後の成長力強化につなげる 政策が求められる。
カギのひとつに、非製造業の設備投資促進が指摘できる。例えば、ITやロボット
などを通じた代替的投資は、同分野で特に深刻とされる人手不足の解消、相対的に低
いとされる生産性・賃金の上昇につながるほか、製造業の生産・投資への波及も期待
される。政府には、規制緩和や税制面のサポートとともに、企業が持続的な成長を確
信し投資に前向きになれる新たな成長ビジョンを明示することが求められよう。
http://www.jcer.or.jp/
6
ESP フォーキャスト調査
日本経済研究センター
2014 年 度 優 秀 フォーキャスターに聞 く
BNP パ リ バ 証 券 株 式 会 社
経済調査本部長チーフエコノミスト
河野龍太郎(こうの・りゅうたろう)
【プロフィール】
1987 年 横 浜 国 立 大 学 経 済 学 部 卒 、 住 友 銀 行 入 行 。 大 和 投 資 顧 門 、
第 一 生 命 経 済 研 究 所 を 経 て 、 2000 年 か ら 現 職 。
(問1)今後の景気を展望したとき、最大のリスク要因は何であるとお考えですか。
日本の成長を高めると期待された原油安の背景には、資源バブルや新興国バブルの
崩壊があった。基軸通貨国である米国の金融緩和で新興国ブームが膨らみ、利上げで
崩壊するのは典型的現象だが、今回のバブルは大きく、その調整で世界の成長が鈍化
するのは不可避である。カナダ、メキシコが資源バブル崩壊の直撃を受けたため、内
需が巨大な米国も悪影響を避けられない。中国の減速も大きな足枷だ。高度成長が終
焉 し 潜 在 成 長 率 が 5% 程 度 へ 低 下 し た だ け で な く 、 リ ー マ ン シ ョ ッ ク 後 の 大 規 模 な 財
政 投 融 資 策 の 後 遺 症 で 過 剰 ス ト ッ ク を 抱 え て し ま っ た 。通 貨 安 で 外 需 を 刺 激 し た い が 、
人民元はドルにペッグしているため、ドル高に連動し割高となっている。米国は年内
にもゼロ金利を解除する見通しだが、ドル高と共に人民元高が進めば、中国経済に悪
影響が及ぶ。人民元切り下げ観測から国際金融市場の動揺が再燃するリスクもある。
( 問 2 )中 長 期 の 日 本 経 済 を 展 望 し た と き 、日 本 経 済 の 潜 在 成 長 率 の 引 き 上 げ や 日 本
企業の競争力向上にはどのような政策が必要だとお考えですか。
円安によって実質購買力を失った家計が消費を抑制する一方、円安でも輸出数量は
あまり増加しない、という現象が、昨年前半から観測されている。企業は現地通貨建
ての輸出価格を殆ど引き下げておらず、高い利益率を優先し、輸出数量の拡大を狙っ
てはいないのである。仮に企業の間で長期円安予想が生まれ、生産拠点を本格的に国
内に回帰させる動きが広がれば、輸出は増加するかもしれない。ただ、既に経済が完
全雇用にあるため、その場合、非製造業から雇用を奪い取ることになる。 これは、非
製造業からの成長分野の出現を阻害すると同時に、超円安の下でしか採算の取れない
収益性の低い資本ストックを製造業が蓄積することを意味し、潜在成長率を低下させ
る 。2000 年 代 半 ば に 潜 在 成 長 率 が 低 下 し た の も 、円 安 政 策 の 下 で 、製 造 業 が 収 益 性 の
低い資本ストックを増やしたためだった。直ちに円安誘導策を転換すべきである。
http://www.jcer.or.jp/
7