授業を目指して ~国語科・算数科における「学び合う学び

「つながり、学び合い、高め合う」授業を目指して
~国語科・算数科における「学び合う学び」の授業実践から~
北里小学校
伊
藤
洋
康
「すべての子どもの学ぶ権利を保障したい」、という思いから「学び合う学び」による授
業を実現するための挑戦が始まった。
「学び合う学び」を成立させるためにはどのような原
則があるのかを国語科と算数科でまとめ、また、授業実践を通して現状の授業が本当に子
どもの学ぶ権利を保障できているのか、今後にどのような課題があるのかを検証した。
「つながり、学び合い、高め合う」授業を目指して
~国語科・算数科における「学び合う学び」の授業実践から~
北里小学校
1
伊
藤
洋
康
はじめに
「つながり、学び合い、高め合う」は北里小学校の教育目標である。すべての児童の学
ぶ権利を保障するために「学び合う学び」による授業を実施し、
「自分の考えを、自分の言
葉で自然に伝え学び合い、行動できる子どもを育てる」というのが目標の趣意である。も
ちろん私自身も学校の教育目標に沿って授業づくりや学級経営を進めているのだが、なか
なかうまくいかずにもがいているのが現状である。
私が「学び合う学び」に取り組む前の授業は、自分が説明しながら発問をしてそれに対
して挙手をした児童を指名して発表をくり返していくような一斉授業だった。一問一答形
式で、教師対児童という構図ができており、発表が少ないと「発表を願張ろう」というよ
うな学級の目標を立てることも多かった。今思い返すと、児童のことをよく見ずに黒板と
授業計画の書いたノートばかりを見て授業を進めていて、自分の発問に対して元気よく返
答をした児童を高く評価し、授業の内容が分からずにつまらなくなって授業に集中できな
くなった児童のことはあまり気にかけることができていなかった。
平成21年の5月の研修で、小学4年生の国語の授業を参観する機会があった。
「白いぼ
うし」という物語文の授業の中で少人数によるグループ学習を取り入れていた。その時は
自分の目の前で話し合いをしていた4人グループを中心に参観をしたのだが、そのグルー
プはお互いの想像したことを伝え合ったり、聞き合ったりする中で、友達の意見から違っ
た考え方に気付き、それを自分の考えに反映させるなど、かかわり合いの中で高め合って
いく様子があった。また、授業を参観した後で、そのグループの中には、不登校気味で久
しぶりに登校した児童が入っていたということを聞いてとても驚いたことを記憶している。
なぜなら、その不登校気味の児童は自分の考えたことをしっかりと発表し、グループ内で
他の児童とかかわり合うことができていたので、不登校気味ということをまったく感じな
かったからである。そこで、
「学び合う学び」は本当に一人ひとりの学びを保障することが
できるのだ、ということを実感できた。その時から自分もこのような授業をできるように
なりたいと、自分自身の挑戦が始まった。
1
今回、どのようにすれば学級全員の学びを保障できるような授業ができるのか、という
ことを国語科と算数科の授業の実践から考えてみた。
「つながり、学び合い、高め合う」授
業をするためにはまず自分が学ばなければならない、そう考えて本主題を設定し、研究を
行った。
2
研究の目標
「つながり、学び合い、高め合う」授業を目指して
~国語科・算数科における「学び合う学び」の授業実践から~
すべての子どもの学びを保障するために、以下のような北里小学校が目指す授業を進め
ることを目標とする。
①友達や先生の「話」をしっかり聴く。
②話をする人を見て聴く。友達の顔を見て話す。
③「かかわり」を大切にする。
④わからない時は、「わからない、教えて。」と言えることが大切。
⑤「わからない、教えて。」という友達がいたら、
「ぼくはこう思うよ。」と言ってくれる友
達がいる。
⑥かかわりながら学んでいく授業を行う。
⑦そのためにグループ活動を多く行う。
(資料①
北里小学校の授業)
わからないときは、
ともだちやせんせいの
おはなしをするひと
をみて きく
「はなし」を
ともだちの かお を
みてはなす
わからない。
おしえて。
「かかわり」を
たいせつ
と、いえることが
にしましょう。
たいせつです。
しっかり きき ます。
ぼくは、
こうおもうよ。
わからない。
おしえて。
わ
か
っ
た
と、いってくれる
という
ともだち
がいたら、
ともだち
がいます。
こうやって かかわり
まなんでいく
2
ですから、グループかつどうを
ながら
じゅぎょう
をします
おおく
おこないます
3
研究の仮説
石井順治氏は、著書の中ですべての児童の学びを保障する「学び合う学び」を成立させ
るためには、安易なマニュアルはないが大切にしなければならない原則があると述べてい
る。
「学び合う学び」を成立させるために以下のような原則を守りながら授業を創り上げて
いくことが重要なのではないだろうか。
「学び合う学び」、始まりと深まり
二つの思い
・教え込む一斉指導型から脱却したい、すべての子どもが安心して学べるようにしたい
発信から受信へ
寄り添える教師
学 ぶ 安心
聴ける教師
一斉一辺倒からグループ導入へ
子どもを信頼する
子どもがみえる
テキストがみえる
つながりがみえる
つなぐ
聴き合う
つながり
さらなるつなぎ
学びの質
学び合う
学び
ジャンプする学び
(石井順治著
「聴き合う
3
つなぐ
学び合う
2011」より)
4
国語科(物語文)の研究の方法と手立て
(1)物語文を味わう
これまでの授業では、物語文の主題や登場人物の「気持ち」について子どもたちに考え
させることが多く、それが読み取りの力をつけていく方法だと考えていた。しかし、毎年
7月に滋賀県で開催されている「授業づくり・学校づくりセミナー」での佐藤学氏の講演
を聞く中で、文学作品は言葉の芸術であり、音楽を味わうように文学も味わうことが大切
であるということを学んだ。また、佐藤学氏は「テキストの言葉に寄り添って読むことが
重要で、言葉に触れ、言葉に出会い、想像力によって言葉の織物を描き出すことが読みの
快楽である。」とも話されていた。そこで、文学(物語文)を学級で味わうために、授業の
中で音読を多く取り入れて、テキストの言葉に触れ、言葉に出会い、想像したことを聴き
合いながら、言葉の織物を描き出せるような授業を進めていきたい。
物語文を味わうために、教師の三つの禁じ手も佐藤学氏から学んだ。それは、主題を追
求しないこと、「気持ち」を問わないこと、「なぜ」と問わないこと、の三つである。確か
にこの三つのうち一つでも行ってしまうと、思考や想像がテキストから離れてしまい、物
語文を味わうことはできないと、少しずつではあるが理解できるようになってきた。
(2)聴き合う関係
「学び合い」と「話し合い」には違いがある。
「学び合い」は「わかった」、
「そうか」と
いった気付きや学びがあり、高め合ったり、引き上げ合ったりができている状態である。
また、「わからない」と言える信頼関係がある。「話し合い」はただ意見を言い合い、意見
を発表したら終わりで、学びのない状態である。
「学び合い」を成立させるためには、まず
「聴く」ことの指導が必要となってくる。そのために、まずは教師がお手本となり、話す
人を見て聴くことや、自分の考えと比べながら聴く状態を普段の生活の中から浸透させて
いく必要がある。また、「わからないから教えて」と言える雰囲気作りに努めていきたい。
(3)ジャンプの課題
石井順治氏は、著書の中で文学の読みにおける「ジャンプのある学び」について以下の
ような条件が必要だと述べている。
①教師が読みの多様性ということをしっかりと認識していなければならない。もし、子ど
もに二者択一を迫るような持ち出し方をすれば、それはもはや文学の読みではなくなる。
②その考えを取り上げるタイミングとしてどこがよいのかという判断ができなければいけ
ない。子どもの状況がテキストの読みとの関連において見えていないといけない。
4
③この考えを取り上げれば、子どもの読みがジャンプするという見通しが教師になければ
ならない。つまり、教師にこの後の可能性が見えているということである。
④子どもたちに聴き合う耳と聴き合うかかわりが育っていなければならない。日頃から
「学び合う学び」に取り組んでいることが、「ジャンプのある学び」の大前提である。
(石井順治著
「「学び合う学び」が深まるとき」
より)
ジャンプのある学びを実現するためには、まず教師がテキストを読み込み、授業の見通
しを持つことが大切である。そして、その読みを子どもに強要するのではなく、音読から
でも、グループ活動からでも、子どもの読み取りからでも、ジャンプ課題をとりあげるこ
とができるように準備をして授業に臨む必要がある。
5
算数科の研究の方法と手立て
(1)魅力のある課題設定
「学び合う学び」が成立するためには、子どもが「学びたい」という意識を持てるよう
な課題を設定する必要がある。だれもが「どんな授業になるのかな」と期待を持っている
授業の始まりの段階で子どもが魅力を感じるような、なぜだろうと興味をもって取り組め
るような課題設定の工夫をしていく。
(2)具体物の導入
課題を子どもたちにとって身近なものにするため、子どもたちの生活にある具体物を登
場させることも大切である。また、具体物は子どもに興味を持たせるための道具にもなる。
(3)共有とジャンプ
授業の前半は「共有課題」を出すことで、本時に身につけさせたい基礎的な内容を仲間
との協同を通して理解させることを目指す。そして低学力層の底上げを目指していきたい。
ただし、低学力層の底上げだけではすべての子どもの学びの保障にはならないので、授業
の後半は「ジャンプ課題」
(学級の三分の二ぐらいの子どもが分からないような内容、教科
書レベルを超えた内容など)を出すことでさらに学習内容を深く学べるように、子どもた
ちの意欲を高めていきたい。
6
研究の実践と考察
(1)国語科「大造じいさんとガン」での実践と考察(平成25年10月実践)
ア
物語文を味わう
4月から詩の「丘の上の学校で」や物語文の「のどがかわいた」という教材で音読を多
5
く取り入れて授業を行ってきた。めいめい読みや、ペアでの交代読み、指名読みなどやり
方も変えながら取り組んできた。子どもたちは、音読に対しては特に嫌悪感を持つわけで
もなく指示があると読み始め、まだ読み終わっていない子がいると、もう一度同じ部分を
黙読しながら静かに待つことができる。しかし、一学期は特に音読が好きだとか、読み味
わっていきいきと音読をするという子は一部のみで、全体的にはそのような雰囲気は感じ
られなかった。テキストを読み味わうという意識も全体的には薄い感じがしていた。
「大造じいさんとガン」では、一学期よりも音読を多く取り入れて物語文を味わうとい
うことを意識して授業を進めた。また、単元に入る前に4年生で学習した「白いぼうし」
を授業で取り上げ、物語の最後の場面の「よかったね。」
「よかったよ。」
「よかったね。」
「よ
かったよ。」を自分ならどのようなことを想像してどのように音読をするか、ということを
考える授業を行った。石井順治氏の著書の「「学び合う学び」が深まるとき」に書いてあっ
た「読みのジャンプが生まれるとき」という実践を真似して、テキストに「シャボン玉の
はじけるような、小さな小さな声」と書かれていることから、とても小さな声で音読をす
るということを想像した児童のことを紹介しつつ、実際にシャボン玉を持ち出してシャボ
ン玉のはじける様子を見せてみた。すると子どもたちから「へー、そういうことね。」、
「す
ごい。」というような声が聞こえてきた。その授業はテキストから自分のイメージや読みを
持つことの大切さや、多種多様な読みがあるということを子どもたちに伝えるのが目的で
あったが、子どもの授業の振り返りを読んだところ、
「文を読んで、そこから自分の読みを
もつことが大切だということを学びました。」というように書いている子が多く、単元の導
入としては手応えを感じることができた。
本時の聴き合いでは、「残雪は仲間の命を守るために一生懸命ハヤブサと戦ってすご
い。」、「残雪はただの鳥ではなくて仲間思いの鳥だと感じた。」というような残雪の行動に
対する考えが続き、なかなか大造じいさん心の動きを想像するところまでたどりつくこと
ができなかった。しかし、音読を何度も取り入れる中で少しずつ大造じいさんの心の動き
について考えを深めていく子がふえ、
「強く心を打たれて・・・のところから、大造じいさ
んは、残雪の頭領らしい堂々とした態度を見て残雪を尊敬するようになった。」というよう
な考えを伝え合う様子が見られた。やはり、物語文を深く読み味わうためには音読が重要
であることを実感することができた。逆に音読を取り入れないと、考えが深まらないし、
子どもが想像で発言し始めることにつながる、ということも分かった。
今回の実践では、音読を多く取り入れようと意識はできたが、まだまだ音読の時間が少
6
なかったような気がする。「本文のどこからそう考えたのか」ということを常に問い返し、
音読をさせ、本文に戻して音読によってテキストと子どもをつなぐことをもっと意識して
いきたい。
イ
聴き合う関係
本時では、前時の段階でプリントに自分の想像したことを書きこんでから授業に臨んだ。
自分の読みを持つために、書き込みはとても有効であるが、書きこんだプリントが手元に
あるとよく発表会になってしまうため、机の上は教科書だけ、という状態で授業を行った。
すると「話す人を見て聴く」、
「友達の顔を見て話す」ということをよく守ることができた。
グループ活動では、全体の場ではなかなか自分の考えを伝えられない子でも考えを伝える
ことができていたし、また「どういうことなのか教えて」とわからないことをグループの
子に聞き、聞かれた子が教えるような場面も見られた。4月から「わからないことがあっ
たらわからないと言おう」と指導してきたことが浸透してきたのを感じた。しかし、まだ
まだ高め合う様子が少なく、テキストを指さして「ここにこう書いてあるでしょ。」とい
うように伝え合う場面や、グループ活動の時に指示をされなくても自分達で音読を始める
ような場面がもっと出てくるような雰囲気作りをしていく必要があるのを感じた。
本時ではなく4場面の授業のことだが、「らんまんとさいたスモモの花が、その羽にふ
れて、雪のように清らかに、はらはらと散りました。」という文に対して、「残雪は大造じ
いさんに、ありがとうという気持ちを伝えるために、スモモの
(資料②
ワークシート)
花をおとしたのだと思いました」という考えをプリントに書
いていた子がいた。グループでの聴き合いでは、このすばら
しい考えを伝えていたようだが、自分が気づくことができず
に全体では取り上げることができなかった。この考えを全体
に伝えていたら、どんな学び合いが展開されていたのかと思
うと残念だった。
ウ
ジャンプ課題
ジャンプ課題を取り上げるためには、まず教師がテキストを読み込むことで授業の見通
しを持つことが大切である。今回は「大造じいさんとガン」の全文をノートに書き込み、
自分の想像したことを文の横に書きこみながら教材研究を行った。
書き込みをしてみて気がついたことは、ただ読むだけの時と違って、より多くの言葉に
注目することができ、イメージを大きくふくらませることができる、ということである。
7
例えば、羽をはばたかせる音の「バシッ」と「パシッ」の違いがイメージできたり、
「最後」
と「最期」の違いに立ち止まることができたりするなどである。 (資料③
教材研究用ノート)
また、授業の見通しも持つことができたので今回のような教材
研究のやり方は大変有効であることが分かった。
本時では、「なんと思ったか、再びじゅうを下ろしてしまいま
した。」、「頭領としてのいげんをきずつけまいと努力しているよ
うでもありました。」、「強く心を打たれて、ただの鳥に対してい
るような気がしませんでした。」という文でジャンプ課題が取り上げられたらと、見通しを
持っていた。その中で、「強く心を打たれて・・・」のところで、「心を打たれて」の言葉
に注目する発言があったので、ジャンプ課題として取り上げることができた。しかし、時
間がなくなってしまい、さらに深く読み込むところまでは行かなかったのが残念だった。
(2)算数科「円周と直径」での実践と考察(平成26年2月実践)
ア
魅力のある課題の設定
直径と円周が比例していることを学んだり、直径の長さが分かれば「円周=直径×3.
14」の式を使って円周を求めることができる、ということを実践したりする授業である。
教科書では、直径が100㎝の円の円周を求めたり、身近にある木の幹の円周を調べて直
径を計算で求めたりする問題が載っていた。しかし、子どもが興味を持って学び合いをす
るためには、教科書の問題ではどうかと思い、自分なりに魅力のある課題を考えた。自分
が6年生を担任した時に、算数の授業で3つのトイレットペーパーをビニールひもで結び、
そのビニールひもの長さを、トイレットペーパーの円周を考えながら導き出すという授業
をしたことがあったので、今回はそれを参考に考えた結果、トイレットペーパーを2つに
してビニールひもの長さを考えてみることにした。授業では、子どもたちはとても興味を
持ったようでいきいきと取り組む様子が見られた。魅力のある課題の設定がいかに大切で
あるかを実感できた瞬間だった。
イ
具体物の導入
(資料④
今回は、2つのトイレットペーパーをビニールひもで結んで
おいて自分の机の中にかくしておいた。何も言わずにだまって
出したところ、まず「なんだこれ」、「トイレットペーパー?」
といった反応があり、次に「算数と関係あるの?」というよう
な声が聞こえてきた。だまって出しただけだったが子どもたち
8
具体物)
は興味津々だった。そして、だまって課題を書くと「そういうことね。」と、さっと課題に
向き合う姿が見られた。
ウ
共有とジャンプ
授業の前半は、円周が直径×3.14の式で求められることの復習と、直径と円周が比例
していることを学習して「円周=直径×3.14」という式をしっかりと使えるように基礎
的な内容をグループや全体で共有した。授業の後半は、具体物を出して「2つのトイレッ
トペーパーを結んだビニールひもの長さを求める」というジャンプ課題を出して、学びを
深めようと考えた。ジャンプ課題に対しては、グループでいきいきと取り組む姿が見られ、
図を書いて考えていたグループや、
「 どういうこと?教えて」とわからないことを聞いたり、
教えたりするグループの姿も見られた。結果的には、5つのグループの内4つのグループ
が正解を導くことができた。学び合う様子はよい雰囲気であったが、結果から考えるとト
イレットペーパーの数を3つにするなど、もう少し難しい課題にしてもよかったのかもし
れない。
7
研究の成果と今後の課題
(1)成果
「つながり、学び合い、高め合う」授業を成立させるためには、やはり教師の対応が最
も重要であることが分かった。まず教師が子どもを信頼して寄り添い、子どもの話をよく
聴き、子どもやつながりが見えるように、自分の目を日々の授業で養っていく必要がある。
また、教材研究を大切にして、子どもの心にやる気の火をつけられるような授業を創り上
げていくことも重要である。
国語科の物語文では、物語を味わうこと、聴き合う関係、ジャンプ課題の3つの重要さ
が分かった。まずは 4 月の学級経営の中で、子どもたちに聴き合う関係を浸透させながら
物語を味わう感覚を伝えたり、音読が楽しいからもっと音読をやりたい、と思わせるよう
なしかけを施したりすることが大切である。そして物語を味わうことの楽しさを体験させ
ながら「学び合う学び」に継続して取り組むことが必要だと感じた。
算数科では、具体物で子どもの興味を引き出し、魅力のある課題を設定することで子ど
もがいきいきと取り組むことが実感できた。さらにジャンプ課題についても難しすぎると
いけないが、学級の三分の二ほどの子どもが難しいと感じるぐらいの課題が出せればグル
ープで学び合いながら自然と前向きに取り組むことが分かった。子どもの学びを保障する
9
のは、やはり教師のやり方次第だと体感できた。
(2)今後の課題
まだまだ、子どもやつながりが見えていない。自分が行った授業をビデオに撮り、子ど
もや教師の発言を書き起こして振り返りを行うと、子どもやつながりが見えるようになっ
ていくという話を聞いたのでさっそく実践していきたい。教材研究にさらに力を入れて、
テキストが見えるように、また子どもの学びを保障できるような授業デザインを考えるこ
とができるようにしていきたい。
国語科に関しては、学級で音読が楽しいという雰囲気ができていなかった。音読を指示
するとすらすらと読んで、全員が終わるまで黙読をして待っている児童が多かった。もっ
とゆっくりと、想像しながら音読をするように指導していく必要がある。また、音読をす
ることで、言葉から想像することができるようになり、それぞれの想像したことを交流す
ることでいろいろな発見が出てくるということを体験させて、音読が楽しいと思えるよう
なしかけをほどこしていきたい。そして、グループ活動で自然に音読を始めたり、
「ここに
こうかいてあるでしょ。音読してみようか。」とお互いで音読をしあったりするような雰囲
気をつくっていきたい。
算数科では、ジャンプ課題の設定を常に考えていきたい。先輩の教師で、算数のジャン
プ課題でよい問題を見つけたり、日々の生活の中で思いついたりしたことがあるとすぐに
メモをしてネタを集めている教師がいた。自分も見習ってジャンプ課題をたくさん集めて
子どもの実態に合ったジャンプ課題を出せるようにしていきたい。
今回は国語科と算数科での「学び合う学び」についての研究を行った。今後は社会科や
理科や図工、体育などの他の教科でも「学び合う学び」を成立させることができるように
さらに研究を進めていきたい。また、すべての子どもの学びを保障するために自分で努力
を重ねていくことはもちろんのこと、同僚とも「つながり、学び合い、高め合う」ことで
学校全体が学びの共同体になることを目指して努力を続けていきたい。
<参考文献>
・「聴き合う
つなぐ
学び合う
2011」
・『「学び合う学び」が深まるとき』
石井順治
・『ことばを味わい読みをひらく授業』
・『学校の挑戦・・・学びの共同体を創る』
・
『続・教師の話し方・聴き方
石井順治
(世織書房)
石井順治
佐藤
学
(明石書店)
(小学館)
~学びの深まりのために~』 石井順治(ぎょうせい)
10