イオン交換分離の原理 - Thermo Scientific

イオンクロマトグラフ データシート テクニカルチップ
No.0021T_0911KF
イオン交換分離(その 2)
イオン交換分離の原理
イオン交換分離は、イオン交換基と電解質溶液との間で、イオン成分が結合と脱離を繰り返すことによっておこ
ります。陰イオン交換分離の場合、例えば、第4級アンモニウム基が修飾された樹脂が充填されたカラムと、炭酸
ナトリウムなどのアルカリ性溶液の溶離液を用いるとします。カラム内では、溶離液中の炭酸イオン(CO32-)がイオ
ン交換基上で結合と脱離を繰り返しています(図 1-①)。そこへ、測定イオン、例えば塩化物イオン(Cl-)と硫酸イオ
ン(SO42-)が導入されると、CO32-に代わって Cl-と SO42-がイオン交換基と結合します(図 1-②)。溶離液が連続的に
流れているので、いったん結合した Cl-と SO42-は順次 CO32-に置き換えられます(図 1-③)。脱離した Cl-と SO42-は
次のイオン交換基に結合し、また CO32-に置き換えられ、また結合し…と結合と脱離を繰り返して、最後にはカラム
から溶出されます。
結合と脱離を繰り返す際に分離がおこります。分離は、Cl-と SO42-のイオン交換基や溶離液との親和性の違い
によっておこります。分離のイメージを図 2 に示します。一般に、電荷数の大きいイオンほどイオン交換基との静電
的相互作用が大きいため、強く結合します。また、イオンの疎水性の影響も大きく、疎水性が高い場合は保持が強
くなります。イオン半径の大きいイオンは、半径の小さいイオンに比べイオン交換基に強く結合します。このため、1
価の陰イオンのイオン交換樹脂へ結合は、F-<Cl-<Br-<I-、1 価の陽イオンは Li+<H+<Na+<K+<Rb+<Cs+の順で強く保
持されます。イオン交換分離では、いくつかの作用が同時に働きますが、ある程度は分離の推測が可能で、コンピ
ューターでシュミレーションすることもできます。しかし、実際には用いるカラム、溶離液、温度などにより分離は大
きく変わります。次回はこのような分離に影響を与える因子について説明します。
CO32-
2-
+ CO3
+
+ CO32-
+
CO32-
+
2-
CO
3
固定相 +
CO32-
+
2-
+ CO3
+
+ CO32-
CO32-
+
①
CO32-
Cl-,Cl-
2-
2-
+ CO3
+
+ Cl-
Cl-,Cl-
+ Cl-
+
2
CO3 -
CO32-
+
+
2-
+ SO4
+
+ CO32-
SO42-
+
+ CO3
+
+ CO32-
+
CO32-
+
2-
CO3
SO42-
+
+
2-
+ CO3
+
+ CO32-
CO32-
+
③
②
図 1 陰イオン交換原理図
FLOW
分離が始まる
Conductivity
カラムに試料が入る
SO42-
Cl-
2 成分が完全に分離する
Retention time
分離された 2 成分のクロマトグラム例
1 成分がカラムから溶出され、
その後 2 成分目も溶出される
図 2 カラム内での分離の模式図