当初米国の衛星だけで構成されていた衛星測位システムGPSに,ロシアのGLONASSをはじ め欧州のGALILEO,中国のBEIDOU,日本のQZSSなどが加わり,いつの間にやらGNSSと呼 ばれるようになった。衛星数は増え,どの時間帯においても測位に十分な数の衛星が観測でき るようになった。 しかし,衛星数が少なかった時代においては,観測を予定する場所,時間帯において衛星数 を確保できるかどうかを事前に確認することは測位計画を立てる上で重要であった。 一方で,衛星数が増えた現在においても,衛星測位の適用範囲が広がり山間部や都市部でも 利用される機会が増えたことで,場所によっては上空視界が制限され測位できない場合がある。 観測可能な衛星数や必要な精度が得られるかどうかを事前に把握し,測位計画を立てる重要性 は変わらないといえる。 従来,観測予定地や時間帯における衛星数やDOPの値を調べる方法としてはパソコン用の ソフトウェアを利用することが一般的だった。ソフトウェア起動後に観測予定地の緯度,経度 を設定し,最新の衛星軌道歴情報をネットからダウンロードしてソフトウェアに読み込むと いった作業が必要であり少々面倒であったが,スマートフォンやタブレット端末用のアプリの 出現によりその状況が大きく変わった。 これら機器の多くはGPS機能を有し,またデータ通信機能によりいつでも衛星軌道歴情報をダ ウンロードできる。そのため,アプリ起動時には自動的に自身の緯度,経度を設定し,最新軌道 歴情報を基に衛星数やDOP値をシミュレートすることができる。大変に便利な世の中なのである。 スマホやタブレット用のアプリがいくつかある中で,筆者が普段利用しているGNSS Radar (東京海洋大学・情報通信工学研究室の鈴木太郎氏制作)を紹介する。 アプリを起動すると数秒の後に現在地で観測可能な衛星のスカイプロットが表示され,衛星 数やDOPの値を簡単に確認することができる。初期状態ではGPS,GLONASS,GALILEO, BEIDOU, QZSS, SBASの衛星が考慮されており,これら各衛星システムを計算に含めるか 否かも画面をタッチするだけで変更できる。仰角へのマスク設定や場所や時刻を変更すること ももちろん可能である。機能はオーソドックスながら,シンプルで分かりやすい表示が気に 入っている。 このようなアプリを屋外で使用していると,多くの衛星が地球の周囲を回っていること,地 べたにアンテナを立てるだけではなく大きなシステムの中で利用できていることが実感できる。 このアプリの他にもいくつか同種のものがあるようである。衛星測位のお供に,いっときの気 シンプル・機能的な衛星配置確認アプリ 137 分転換に,皆様も気に入ったものを試されてはいかがだろうか。 (鹿島建設株式会社 黒沼 出) 衛星数・DOP表示 地図上への衛星表示 GNSS Radar スカイプロット THE JOURNAL OF SURVEY 測量 2015.5 39
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