準天頂衛星の高精度測位サービスの海外実証

実証事業の概要
日本の測位衛星「準天頂衛星」を活用した高精度の測位システム「準天頂衛星システム(QZSS)」は、2010年代後半の
実用化を目指しており、経済産業省の「準天頂衛星を利用した新産業創出研究会報告書」(2012年)によれば、QZSSの
利用が可能なアジア・オセアニア地域で、高精度なカーナビゲーションや鉄道の運行制御、自動車・農業機械の自動運
転などの関連分野で、2020年に2.5兆円もの経済効果が見込まれています。
JAXAが開発した準天頂衛星初号機「みちびき」は、2010年に打ち上げられ、これまでに国内での実証事例は多くあり
ますが、海外では十分な精度評価と利用実証が行われていないのが実情です。
このため経済産業省はNEDOを通じて、QZSSの利用によってサービスの高度化・新サービスの創出が図れると期待さ
れるテーマについて、東南アジア諸国連合(ASEAN)地域において現地調査及び利用実証を行い、利用促進及び普及
啓蒙を図るとともに、実用化・ビジネスモデルの構築に向けた課題の抽出を図ることを目的として、以下の研究・実証項
目を実施します。
【QZSSの機能を用いたASEAN地域における精度評価及び高精度測位による利用実証】
〔1〕ASEAN地域における基礎データ収集および補強信号の精度評価
〔2〕QZSS利活用によるASEAN基盤地図整備の有効性評価
〔3〕QZSSの高精度ナビゲーションへの利活用と高精度プローブ情報収集の利用実証
研究期間:2014年度~2015年度
総事業費:約1.5億円(予定)
上記〔1〕について、これまで主に日本で実施されていたQZSSの各種補強信号の効果の検証・評価をASEAN
地域で実施するため、同地域で利用可能な補強信号を生成し、送信・もしくは後処理による測位性能向上を定
量的に評価します。
また、測位結果を利用する全ての実用システムには基盤となる地図データが必要とされますが、ASEAN地域
においてはこれらの基盤地図の整備が不十分であり、安価に高精度な地図を整備する手法の開発が望まれて
います。そこで上記〔1〕の成果を踏まえて上記〔2〕を実施し、さらにその応用展開として、同地域内で経済効果
の大きい自動車などの地上移動体への応用を上記〔3〕で実施し、カーナビゲーションおよびテレマティクス※3の
活用を実証の対象とします。
「ASEAN地域における基礎データ収集および補強信号の精度評価」のイメージ図
【用語解説】
※1 QZSS:Quasi Zenith Satellite Systemの略。
※2 GPS:Global Positioning Systemの略。誤差10m程度。
※3 テレマティクス:「telecommunication(通信)」と「informatics(情報科学)」の造語で、車両情報機器とネットワークを融合させたシステムやサービス。