交差混合試験が有用であった後天性血友病Aの2症例

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交差混合試験が有用であった後天性血友病Aの2症例
◎阿部 みつき 1)、村下 ちなつ 1)、荒木 竜哉 1)、實原 正明 1)
飯田市立病院 1)
【はじめに】後天性血友病 A は,凝固第Ⅷ因子抑制因子
により重篤な出血症状を呈する難治性の出血性疾患である.
(PSL)にて治療中である.
症例2:80 歳男性.血液疾患の家族歴なし.仙骨部褥瘡
本疾患の頻度は希であるとされてきたが,近年その報告例
で他院より転院,緊急手術となった.術後から軽度の刺激
は増加しており,実際の患者数はさらに多いことが推測さ
による創部からの出血が持続.PLT 28.7×104/L,
れる.交差混合試験は本疾患のような APTT が延長する例
PT 12.4 秒,APTT 83.4 秒.交差混合試験を施行し,直後判
において,重要なスクリーニング試験の1つとして近年注
定では直線状,2時間インキュベーション後ではやや上に
目されている.今回われわれは,交差混合試験が有用であ
推移した直線状であった.また Rosner
った後天性血友病 A の2例を経験したので若干の文献的考
Inhibitor
察を加え報告する.
Ⅷ因子抑制因子は 36BU/ml であった.以上より後天性血友
【症例】症例1:60 歳男性.自己免疫性水疱症にて入院
中に敗血症を発症.治療経過中に貧血の進行と出血症状が
出現.PLT
16.0×104/L,PT
11.8 秒,APTT 121.9 秒(基準
index>15 より
pattern であった.凝固第Ⅷ因子活性は 2.0%,第
病 A と診断され,PSL 投与を開始し,APTT 50 秒前後まで
改善した.
【考察】当院で経験した後天性血友病 A の2症例を報告
範囲 24.0~38.0 秒).交差混合試験を施行し,直後判定で
した.何れの症例も交差混合試験を実施したことで早期診
直線状からやや上に凸,37℃2時間インキュベーション後
断・早期治療に繋がった.本疾患は重篤化しやすく,その
でさらに上に凸の Inhibitor
pattern を示した.また Rosner
診断に際し交差混合試験は簡便で有用な検査法であること
index>15 より Inhibitor pattern であった.凝固第Ⅷ因子活性
が示唆された.また症例2のように波形パターン法による
は 1.0%以下,第Ⅷ因子抑制因子は 125.1BU/ml であった.
解析は判定困難例も存在し,今後は数値判定法の併用を検
以上より後天性血友病 A と診断され,現在プレドニゾロン
討したい. 連絡先:0265-21-1255(内線 2080)