塩飴から学ぶこと

最優秀賞
塩飴から学ぶこと
林
龙 飞
LIN LONG FEI
中国の北方で生まれ育った私は熱中症とは全
く理解しなければなりません。例えば、日常生
く無縁でしたから日本の夏の暑さにはとても驚
活に目を向けると、サービスの受け方にも日本
きました。日本では毎年テレビなどで熱中症の
人の特性が表れています。日本の公共サービス
ニュースを見ます。私の友人も日本で実習して
が優れていることは世界でも有名ですが、それ
いますが、彼女の工場はとても暑く、熱中症予
よりも優れているのは実はサービスの受ける側
防の一環で会社が塩飴を提供してくれるそうで
のマナーの良さだと私は思います。私が気づい
す。会社の人たちは塩飴を舐めるよう全従業員
たのは、日本人がサービスを受ける権利を過度
へ伝えて、無くなったらすぐ報告するよう指示
に主張しないことです。中には「より必要とし
するそうです。
ている他の人に」と他の人に譲る人たちさえい
みなさんなら、その飴を毎日もらいますか?
ます。その謙虚さは日本のサービスが世界に認
私ならもらうと思います。会社からそのように
知されるまでに成長した要因として欠かせない
言われたわけですから。
と思います。世界に目を向けると多くの国が日
その友人はある日、いつものように職場リー
本にならってサービスの向上を進めています
ダーに塩飴を頼んだのですが、塩飴はあいにく
が、受ける側に日本人のような謙虚さや自立心
底をついていました。結局、通りかかった別の
が無い限り、日本と同じレベルまでサービスを
日本人社員が自分の塩飴を彼女にあげました。
向上させるのは難しいと思います。提供される
彼女はその時初めて知ったのです。皆が会社に
サービスを利用するかしないかは個人の自由で
頼らずに自分で塩飴を購入していることを。彼
すが、相手の立場になって考え、合理的に応用
女はとても恥ずかしく感じたそうです。
すれば他人に迷惑をかけることはないでしょう。
そう言われてみると私は、会社に物を要求す
こういった様々な事を考え、学ぶことができ
る日本人を見たことがありません。あれば使う
るのも実習の魅力の一つです。
けど、自分の物はできるだけ自分で準備する、
ただし学ぶだけではなく、私は技能実習生も
それは日本人が幼少期から自ずと身につけてい
このような「無形の」規則を正しく理解するべ
る習慣なのかも知れません。しかし私たち技能
きだと思います。そうすれば、異なる習慣によ
実習生は外国人ですから、それが分かりません。
るトラブルも避けられますし、実習においても
私たち外国人技能実習生は日本で技能習得に
知識や技術の習得が一層スムーズになると私は
励む以上、日本人のこうした習慣や考え方をよ
信じています。
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