田中 正人 - 私立大学戦略的研究基盤形成支援事業

疾患解明グループ
ORGANELLA
研 究 者 活 動 報 告
Tokyo University of
Pharmacy and
Life Sciences
A
C
T
I
V
I
T
Y
R
E
P
O
R
T
腸管マクロファージ活性化における MAM の役割と
病理学的意義の解明
ORGANELLA
私立大学戦略的研究基盤形成支援事業
オルガネラの
接触場の形成機構と
破綻による疾患
研究の要旨
東京薬科大学 生命科学部
免疫制御学研究室・教授
田中 正人
Tokyo University of
Pharmacy and
Life Sciences
組織に局在するマクロファージは、種々の疾患にお
いて最初に組織傷害を感知し、炎症や免疫応答を誘
導する。この応答は疾患病理を規定する重要な要素
であることが分かりつつある。我々は、組織傷害に伴
う炎症•免疫応答に重要な役割を担う CD169 陽性組
織マクロファージを同定した。本研究では、マクロ
ファージにおける炎症誘導時のオルガネラ接触場の動
態の変化に注目し、その制御による疾患治療の可能
性を検討する。
研究の概要
様々な疾患では、種々の病理的要因により細胞死が誘導され、
組織の機能不全が起きる。さらに多くの場合、これに伴って炎症•免
関連論文
1.Karasawa K, Asano K, Moriyama S, Ushiki M, Monya M, Iida M,
疫応答が誘導され、さらなる組織傷害が起こることが想定される。こ
Kuboki E, Yagita H, Uchida K, Nitta K, Tanaka M. (2014)
の細胞死に伴う炎症•免疫応答に起因する組織傷害は、疾患病理
Control Neutrophil Accumulation in the Kidney with
に多大な影響を与える。マクロファージはこの応答を誘導する中心的
な細胞である。生体内で細胞が死ぬとその死骸は、マクロファージ
Vascular-resident CD169-positive Monocytes and Macrophages
Ischemia-reperfusion Injury.
in press
2.Asano, K., Nabeyama, A., Miyake, Y., Qiu, CH., Kurita, A.,
Tomura, M., Kanagawa, O., Fujii, S., and Tanaka, M. (2011)
により速やかに貪食される。死細胞を貪食したマクロファージは、死
CD169-positive macrophages dominate antitumor immunity by
細胞の性質に応じて T 細胞への死細胞由来抗原の提示や炎症誘
85-95.
crosspresenting dead cell-associated antigens.
, 34,
導等の免疫応答を行う。多くの疾患ではこのマクロファージの応答
3.Nabeyama, A., Kurita, A., Asano, K., Miyake, Y., Yasuda, T.,
が、疾患の重症度や組織修復や再生の度合いを規定する重要な要
Yoshida, H., and Tanaka, M. (2010) xCT deficiency accelerates
素であることが分かりつつあるが、その詳細なメカニズムは未解明の
ままである。
Miura, I., Nishitai, G., Arakawa, S., Shimizu, S., Wakana, S.,
chemically induced tumorigenesis.
,
107, 6436-6441.
4.Miyake Y, Asano K, Kaise H, Uemura M, Nakayama M, Tanaka
最近我々は、炎症性腸疾患モデルや腎虚血再灌流モデルにおい
て、組織に局在する CD169 陽性マクロファージが、疾患の進展に
M. (2007) Critical role of macrophages in the marginal zone in the
suppression of immune responses to apoptotic cell-associated
antigens.
117: 2268-2278.
重要な役割を担っていることを明らかにした。このマクロファージは、
5.Asano K, Miwa M, Miwa K, Hanayama R, Nagase H, Nagata S,
組織の実質細胞と血管あるいは組織外環境との境界領域に局在し、
apoptotic cell engulfment and induces autoantibody production in
組織傷害により生じた死細胞の処理や、炎症性サイトカイン分泌の
制御を介して、疾患病理の形成に重要な役割を担っている。死細
胞処理やサイトカイン分泌には、ライソソームや分泌顆粒の形成•輸
送が深く関わっていることから、当該マクロファージにおける細胞小
器官の動態の解析は、疾患病理の理解に資するものと考えられる。
このような背景のもと、本研究ではマクロファージにおける炎症誘導
時のオルガネラ接触場の動態の変化に注目し、その制御による疾患
治療の可能性を検討する。
11
Tanaka M. (2004) Masking of phosphatidylserine inhibits
mice.
, 200: 459-467.