グローバル・マクロ・ トピックス 2016/ 3/1 投資情報部 シニアエコノミスト 吉川 健治 中国:預金準備率引き下げも金融緩和効果が低下 中国人民銀行は2/29に預金準備率引き下げ(▲0.5% 3/1実施)の決定を発表、2015/10以来 の金融緩和であるが、今回は前回(利下げと預金準備率引き下げの同時発表)と異なり、根 強い人民元下押し圧力を配慮した政策調整であったと言えよう。中国経済の減速、デフレ傾 向等、先行き懸念が根強いなか、構造改革の本格化にともない景気下押し圧力が一層強ま るため、金融のリフレ政策が求められている。しかし、金融緩和に向けた政策調整には限界 があり、財政政策を積極的に実施する方向にあるが、経済対策の効果が低下方向にある。 また、金利リスク防止に加え、財政リスクが高まる方向にあり、政策ジレンマに直面している。 中国人民銀行が構 造改革の本格化を控 え、2/29に預金準備 率引き下げを発表か 中国人民銀行は、2/29に預金準備率引き下げ(▲0.5% 3/1実施)の決定を発表、 2015年10月以来の金融緩和であるが、今回は前回(利下げと預金準備率引き下げ の同時発表)と異なり、根強い人民元下押し圧力を配慮した政策調整であったと言 えよう。預金準備率引き下げは2015年2月以降5回目の実施となった。 中国経済の減速、デフレ傾向等、先行き懸念が根強いなか、構造改革の本格化 にともない景気下押し圧力が一層強まるため、金融のリフレ政策が求められている。 なお、2/26~27開催の20ヵ国地域(G20)財務相・中央銀行総裁会議では、冒頭 に李克強首相のビデオメッセージが放送され、「総需要を適度に拡大すると同時 に、構造改革(特に供給サイドの構造改革)の強化に注力する」と発言。また、2/29 に人力資源・社会保障部の尹部長が記者会見で「鉄鋼・石炭の過剰生産能力の解 消を行えば、合計180万人の余剰人員の配置換えが必要となる」と発言した。 この資料は投資判断の参考となる情報提供を目的としたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。銘柄の選択、投資に関する 最終決定はご自身の判断でお願いいたします。また、本資料は信頼できると思われる情報に基づいて作成したものですが、その正確性、完全 性を保証したものではありません。本資料に示された意見や予測は、資料作成時点での当社の見通しであり今後予告なしに当社の判断で随 時変更することがあります。最終ページに金融商品取引法に係る重要事項を掲載していますのでご覧ください。 1 2016/3/1 グローバル・マクロ・トピックス 1月貸出は新たな資 金供給の運用で大幅 増加。しかし、金融リ スクや人民元安が懸 念され、金融政策の 自由度には制約あり 金融情勢をみると、M2は2015年12月に前年同月比+13.3%と6ヵ月連続で政府目 標(前年比+12%)を上回り、2016年1月は貸出増加額が前年同月比+72.7%、09年1月 比では+57.0%と急増し、M2は同+14.0%と15年の政府目標を上方にかい離する動き が強まった。中国人民銀行が1月に中期貸出制度(MLF)や担保付補充貸出(PSL) 等の新たな資金供給の運用を増やし、貸出の増加、M2の上昇を促したようだ(P3の 左上グラフを参照)。特に1月のMLFの急拡大がベースマネー伸び率を押し上げ、 M2の上昇率を高めたと考えられる。 金融政策は2014年11月から2015年12月までの期間に、6回の利下げ、4回の預 金準備率引き下げの実施等、緩和に向けた政策調整が行われ、景気支援を強め てきた。その間、2015/9/15の預金準備率審査制度の改革や2015/10/1の預貸比 率上限制度(75%)の撤廃等、制度面での規制緩和も推進し金融機関の資金繰りや 融資の余裕度を高めた。また、中期貸出制度(MLF)や担保付補充貸出(PSL)等の 新たな資金供給の運用の動きが高まっている。 一方で、資金流出の動きにともなうベースマネーの低下、企業収益の悪化や需 給のミスマッチによる融資の伸び悩みに加えて、金融政策効果の低下(流通速度の 低下等)、等が顕在化した。 なお、人民元対ドルレートは米中金利差(10年物国債利回り:P3の右上グラフを 参照)にほぼ連動しているが、足元は米利上げ慎重論の浮上により人民元下押し 圧力が和らいでいる。しかし、人民元の安定化には中国の経済ファンダメンタルズ の改善が必要であり、再度下落するリスクは払しょくされていないため、金融政策の 自由度は引き続き制約がかかろう。 中国の貸出、M2、ベースマネー、外貨持ち高、対外純資産 (兆人民元) (%) (月次:2009/1~2016/1) 3.0 50 実体経済向け貸出増加額(左目盛) 40 マネーサプライM2(右目盛) 2.5 ベースマネー(右目盛) 30 外貨持ち高(右目盛) 2.0 対外純資産(右目盛) 20 10 1.5 0 1.0 ▲ 10 0.5 ▲ 20 0.0 ▲ 30 09 10 11 12 13 14 15 16 (年) (注)前年同月比、M2政府目標は2015年12月まで。対外純資産は四半期の前年同期比で 2012年1-3月期から2015年7-9月期まで 出所:中国人民銀行資料、CEICデータよりみずほ証券作成 この資料は投資判断の参考となる情報提供を目的としたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。銘柄の選択、投資に関する 最終決定はご自身の判断でお願いいたします。また、本資料は信頼できると思われる情報に基づいて作成したものですが、その正確性、完全 性を保証したものではありません。本資料に示された意見や予測は、資料作成時点での当社の見通しであり今後予告なしに当社の判断で随 時変更することがあります。最終ページに金融商品取引法に係る重要事項を掲載していますのでご覧ください。 2 2016/3/1 グローバル・マクロ・トピックス 中国の新たな資金供給制度と市場金利 (億人民元) (月次:2013/1~2016/1) PSL(担保付補充貸出残高:左目盛) MLF(中期貸出残高:左目盛) SLF(臨時貸出残高:左目盛) 銀行間レポ金利(右目盛:7日物) 銀行間レポ金利(右目盛:3ヵ月物) 国債利回り(右目盛:3年物) 30,000 25,000 20,000 (%) (1ドル=人民元) (逆目盛) 8.0 5.5 7.0 6.0 5.0 15,000 人民元対ドルレートと米中の金利差 (%) (日次:2008/1/1~2016/3/1) 10.0 人民元対ドルレート(左目盛) 中国の国債利回り(10年物 右目盛) 米債利回り(10年物 右目盛) 中国の貸出基準金利(1年物 右目盛) 6.0 8.0 人民元高 6.5 6.0 7.0 4.0 7.5 2.0 4.0 3.0 10,000 2.0 5,000 1.0 0 0.0 長期の終えんで低下 基調。財政リスクの 高まりにも要注意か 米中金利差が縮小 0.0 (年) (注)SLF(期限は1週間以内)は2013年に、MLF(期限は3ヵ月が中心、6ヵ月物)は2014年9月に PSL(期限は3年程度)は2014年4月に中国人民銀行が導入した新たな貸出ツール 出所:中国人民銀行資料、CEICデータよりみずほ証券作成 積極財政に注目も、 政策効果は 高度成 米中金利差が拡大 8.0 (年/月) (注)人民元対ドルレートと米債利回り以外は2016年2月29日まで 出所:ブルームバーグのデータよりみずほ証券作成 一方、財政政策の動きをみると、中国政府は2015年1-3月期以降、積極財政の 動きを強めている。2015年間では財政収入が前年比+8.4%の伸び率に対し、財政 支出が同+15.8%と大幅に上回った。資金の面では、中国政府は地方債の借換債発 行枠の拡大(3月の1兆人民元から8月末には3.2兆人民元に拡大)を認可し、地方政 府の資金余裕度を高め、地方景気を支援した。 2015年12月開催の中央経済工作会議では2016年経済工作について、マクロ政 策では金融政策が穏健ながらも柔軟で適度な政策調整を図り、財政政策が積極的 ながらも強める方針だ。しかし、財政動向と実質GDP成長率との動きからみると、労 働人口の減少が始まる2012年の翌年以降、積極財政の政策にも関わらず、景気は 減速基調をたどっている。その理由として、景気下押し圧力が根強いこともあるが、 一方で、成長ステージが高度成長期から中成長期に入り、財政の政策効果が低下 している、等が挙げられよう。また、積極的な財政政策が地方政府の財政事情を悪 化させ、地方政府債務は14年末の対GDP比37.7%から15年末に同45%に拡大する 見通し(15年8月のIMF報告)である。したがって、積極財政は景気支援効果が低下 するとともに、財政リスクが高まるジレンマに陥る可能性が高まり、今後の動向に留 意が必要である。 中国の財政動向と実質GDP成長率 (%) (四半期:2008/3~2015/12) (%) 60 13 財政収入(左目盛) 50 12 財政支出(左目盛) 40 実質GDP成長率(右目盛) 11 30 10 20 9 10 8 0 7 6 ▲ 10 08 09 10 11 12 13 14 15 (年) (注)前年同期比 出所:中国国家統計局資料、財政部資料、CEICデータよりみずほ証券作成 この資料は投資判断の参考となる情報提供を目的としたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。銘柄の選択、投資に関する 最終決定はご自身の判断でお願いいたします。また、本資料は信頼できると思われる情報に基づいて作成したものですが、その正確性、完全 性を保証したものではありません。本資料に示された意見や予測は、資料作成時点での当社の見通しであり今後予告なしに当社の判断で随 時変更することがあります。最終ページに金融商品取引法に係る重要事項を掲載していますのでご覧ください。 3 2016/3/1 グローバル・マクロ・トピックス 金融商品取引法に係る重要事項 ■国内株式のリスク リスク要因として株価変動リスクと発行者の信用リスクがあります。株価の下落や発行者の信用状況の悪化 等により、投資元本を割り込むことがあり、損失を被ることがあります。 ■国内株式の手数料等諸費用について ○国内株式の売買取引には、約定代金に対して最大 1.134%(税込み)、最低 2,700 円(税込み)の委託手数料 をご負担いただきます。ただし、売却時に限り、約定代金が 2,700 円未満の場合には、約定代金に 97.2%(税 込み)を乗じた金額を委託手数料としてご負担いただきます。 ○株式を募集等により購入する場合は、購入対価のみをお支払いいただきます。 ○保護預かり口座管理料は無料です。 ■外国株式のリスク ○外国株式投資にあたっては、株価変動リスク、発行者の信用リスク、為替変動リスク(平価切り下げ等も含 む)、国や地域の経済情勢等のカントリーリスクがあります。それぞれの状況悪化等により投資元本を割り込 むことがあり、損失を被ることがあります。 ○現地の税法、会計基準、証券取引に関連する法令諸規則の変更により、当該証券の価格に大きな影響を与 えることがあります。 ○各国の取引ルールの違いにより、取引開始前にご注文されても、始値で約定されない場合や、ご注文内容が 当該証券の高値、安値の範囲であっても約定されない場合があります。 ○外国株式において有償増資等が行われた場合は、外国証券取引口座約款の内容に基づき、原則権利を売 却してお客さまの口座に売却代金を支払うことになります。ただし、権利売却市場が存在しない場合や売却市 場があっても当該証券の流動性が低い場合等は、権利売却ができないことがあります。また、権利が発生し ても本邦投資家が取り扱いできないことがあります。 ○外国株式の銘柄(国内取引所上場銘柄および国内非上場公募銘柄等を除く)については、わが国の金融商 品取引法に基づいた発行者開示は行われていません。 ■外国株式の手数料等諸費用について ○外国委託取引 国内取次手数料と現地でかかる手数料および諸費用の両方が必要となります。現地でかかる手数料および 諸費用の額は金融商品取引所によって異なりますので、その金額をあらかじめ記載することはできません。 詳細は当社の担当者までお問い合わせください。国内取次手数料は、約定代金 30 万円超の場合、約定代金 に対して最大 1.08%+2,700 円(税込み)、約定代金 55,000 円超 30 万円以下の場合、一律 5,940 円(税込み)、 約定代金 55,000 円以下の場合、約定代金に対して一律 10.8%(税込み)の手数料をご負担いただきます。 ○国内店頭(仕切り)取引 お客さまの購入単価および売却単価を当社が提示します。単価には手数料相当額が含まれていますので別 途手数料および諸費用はかかりません。 ○国内委託取引 当社の国内株式手数料に準じます。約定代金に対して最大 1.134%(税込み)、最低 2,700 円(税込み)の委託 手数料をご負担いただきます。ただし、売却時に限り、約定代金が 2,700 円未満の場合には、約定代金に 97.2%(税込み)を乗じた金額を委託手数料としてご負担いただきます。 ○外国証券取引口座 外国証券取引口座を開設されていないお客さまは、外国証券取引口座の開設が必要となります。外国証券 取引口座管理料は無料です。 外貨建商品等の売買等にあたり、円貨と外貨を交換する際には、外国為替市場の動向をふまえて当社が決 定した為替レートによるものとします。 商品ごとに手数料等およびリスクは異なりますので、当該商品等の契約締結前交付書面や目論見書または お客さま向け資料等をよくお読みください。 商 号 等 : みずほ証券株式会社 金融商品取引業者 関東財務局長(金商)第 94 号 加入協会 : 日本証券業協会、一般社団法人日本投資顧問業協会、一般社団法人金融先物取引業協会、 一般社団法人第二種金融商品取引業協会 広告審査番号 : MG5690-160301-22 この資料は投資判断の参考となる情報提供を目的としたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。銘柄の選択、投資に関する 最終決定はご自身の判断でお願いいたします。また、本資料は信頼できると思われる情報に基づいて作成したものですが、その正確性、完全 性を保証したものではありません。本資料に示された意見や予測は、資料作成時点での当社の見通しであり今後予告なしに当社の判断で随 時変更することがあります。最終ページに金融商品取引法に係る重要事項を掲載していますのでご覧ください。 4
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