Ⅰ 研究主題 「確かな学力を身に付けた児童」の育成 ~個を高める指導の工夫を通して~ Ⅱ 研究主題設定の理由 現行の学習指導要領では、児童に生きる力を培うことを基本的なねらいとしている。生きる力 を培うことは、時代が変わっても重要なことと考える。 本校においても、自ら考えやりぬく子、きまりを守り助け合う子、明るくじょうぶな子の育成 を学校教育の具体目標とし、生きる力を培うために教育活動を展開してきた。校内研修では、児 童の実態、家庭や地域の願いを考慮し、「自ら考えやりぬく子」の育成に視点を当てた研究に取 り組んできた。生きる力とのかかわりでは、「確かな学力」の向上を重点課題とし、研究に取り 組んできた。平成 17 年度からは、3カ年の「確かな学力育成のための実践研究事業」の指定を 受けることになり、「確かな学力を身に付けた児童の育成」を主題として3年後を見据えながら 研究を進めてきた。具体的には、確かな学力を身に付けた児童を、基礎的・基本的な内容及び学 び方を身に付けた児童ととらえ、算数科・国語科を中心に実践を進めてきた。 その結果、平成 19 年4月実施の標準学力テスト(NRT)において、第2学年から第6学年 までの算数科・国語科における平均偏差値は、ほぼ全て 50 を上回った。また、教師の観察から も基礎的・基本的な内容が身に付いてきていることが報告された。ただし、学び方にかかわり、 家庭学習の様子、学び合いの様子、ノートの使い方について教師の観察をもとに話し合った結果、 満足できる児童が少ないのではないかと判断された。 これらのことから、算数科・国語科の基礎的・基本的な内容をより確実に定着させたり、学び 方を身に付けさせたりしていくことが本校の課題であるととらえた。そこで、本年度も昨年度同 様の研究主題とすることとした。また、学び方を重点とした確かな学力を育成するためには、児 童一人一人の実態を十分把握することが大切である。児童の実態にもとづいて、児童の学びを高 めていく個に応じた指導を展開していきたいと考え、副主題を設定した。 Ⅲ 研究のねらい 算数科と国語科において、個を高める指導の工夫を通して、確かな学力を身に付けた児童を育 成する。 Ⅳ 研究組織 1 研究組織図 教科部会(算数科・国語科) 校 長 教 頭 研究推進委員会 全 体 会 ブロック部会(低・中・高) 2 研究組織の構成員及び役割 組織名 構 成 員 研究推進上の役割や主な研究内容 研究推進 校長、教頭、教務、研修主任、研修 ○研究計画立案、各部会の連絡調整 委 員 会 副主任 全体会 全教職員 ○研究推進委員会の原案検討、研究の共通理解 ○研究授業実施後の授業検討 部 会 教職員が教科部会及びブロック部会 ○(研究)授業の方向についての検討 の2つに所属。 ○指導案の検討、研究授業の準備 -1- Ⅴ 年 平 成 17 年 度 ・ 1 年 次 研究経過の概要 月 4 5 6・ 7 8・ 9 10 11 12 1 主 な 研 究 内 容 ○研究計画の立案と共通理解、児童の実態調査とその把握、目指す児童像の確立 ○指導主事要請訪問A ○個を高める指導の考え方、算数科・国語科における本校の学習のあり方の検討 ○算数科・国語科における学習の手引きの作成、公開授業の準備と指導案作成 ○指導主事要請訪問B及び公開授業の指導案検討 ○指導主事要請訪問B 第1学年国語科「くじらぐも」 第5学年算数科「図形の面積」 ○実践研究事業にかかわる 第1学年国語科「くじらぐも」 1年次公開授業(1) 第3学年算数科「形~長方形と正方形」 <水源会公開授業> 第5学年算数科「図形の面積」 ○公開授業の指導案検討会 ○実践研究事業にかかわる 第2学年算数科「三角形と四角形」 1年次公開授業(2) 第4学年国語科「ごんぎつね」 第6学年国語科「海の命」 2・ 3 4 5 平 成 18 年 度 ・ 2 年 次 平 成 19 年 度 ・ 3 年 次 6 7 8・ 9 10 11 12 1・ 2 3 4 5 6 7 8・ 9 10 11 ○本年度の研究のまとめ、次年度の研究計画の立案 ○研究計画の立案と共通理解 ○家庭学習の実態把握と課題及び手立ての検討→「家庭学習の手引き」作成 ○指導主事要請訪問A ○「学び合いの姿」及び「ノートの使い方」ルーブリック表作成 ○児童の基本的な生活習慣及び家庭学習にかかわるアンケート調査実施 ○指導主事要請訪問B(1)第5学年国語科「千年の釘にいどむ」 ○指導主事要請訪問B(2)及び公開授業の指導案作成と検討 ○指導主事要請訪問B(2) 第2学年算数科「かけ算(1)」 第4学年国語科「アップとルーズで伝える」 ○実践研究事業にかかわる 第1学年算数科「ひき算(2)」 2年次公開授業 第3学年国語科「ちいちゃんのかげおくり」 <三国会研究授業> 第6学年算数科「比」 ○児童の基本的な生活習慣及び家庭学習にかかわるアンケート調査実施 ○「みなかみの教育」原稿作成、研究紀要作成、研究についてのアンケート実施 ○研究のまとめ、次年度の研究の方向性についての検討 ○研究計画の立案と共通理解 ○指導主事要請訪問A ○校内研究授業 第6学年国語科「森へ」 第5学年算数科「いろいろな四角形」 ○児童の基本的な生活習慣及び家庭学習にかかわるアンケート調査実施 ○「家庭学習振り返りの時間」の検討 ○指導主事要請訪問Bと公開授業の準備と指導案作成、指導案検討会 ○指導主事要請訪問B 第1学年「くじらぐも」 第6学年「分数のかけ算とわり算(1)」 ○校内研究授業 第3学年「ちいちゃんのかげおくり」 ○実践研究事業にかかわる 第2学年「お手紙」 3年次公開授業 第4学年「一つの花」 <三国会研究授業> 第5学年「分数」 -2- Ⅵ 研究の内容 1 目指す児童像 本校では、目指す児童像を次のように考え、共通理解した。 目 指 す 児 童 像 「確かな学力を身に付けた児童」 学び方を身に付けている <本校として大切にする3点> ①学び合いの仕方 ②家庭学習の習慣 ③ノートの使い方 算数科・国語科における基礎的・ 基本的な内容を身に付けている 学習指導要領に示された目標や内容 ○単元の評価規準 ○1単位時間や学習活動のまと まりの評価項目 2 研究の基本的な考え方 本校では、研究を進めていく上で重要となる「個を高める指導」「学び方」「基礎的・基本的 な内容」について、次のように共通理解した。 (1) 個を高める指導についての考え方 個を高める指導 児童がもっている資質や能力に応じた指導(個に応じた指導)を展開し、児童を適切に評 価し、それにもとづき支援を行っていく指導のあり方 個に応じた指導 個を高める指導 指導と評価の一体化 適 切 な 評 価 ① 個に応じた指導とは 個に応じた指導とは、児童の興味・関心、習熟の程度などに応じた指導のあり方である。 また、前述したように児童がもっている資質や能力に応じて指導を行うことである。 そのためには、まず指導体制を改善することが必要である。児童の興味・関心や習熟の程 度に応じた少人数指導やTTを展開する必要がある。次に、授業においては個に応じた支援 をすることが必要である。児童が課題を解決する場面では、課題に対する児童の反応を予想 して複数の支援を用意しておく必要がある。そして、児童の学習状況を適切に評価し、それ をもとに助言したりヒントカードや具体物を与えたりすることが大切である。まとめる場面 では、児童の学習状況に応じて補充的な学習や発展的な学習を実施することも必要である。 ② 適切な評価とは 基礎的・基本的な内容にかかわる評価は、学習指導要領の目標や内容を具現化した評価規 準や評価項目にもとづき、児童の学習状況を評価する。評価場面は、自力解決の場面とまと める場面の2回である。1回目の評価は、授業を進めていく上での形成的な評価が中心とな る。2回目の評価は、評価規準や評価項目に照らして、児童の学習状況がおおむね満足でき る状況になっているか評価することが中心となる。それに応じて、補充的な学習や発展的な 学習を実施する。なお、評価場面では個人内評価の視点も大切にしていく。 学び方にかかわる評価については、ルーブリック表を活用して評価する。 ③ 指導と評価の一体化とは 指導と評価の一体化については、本校では児童の学習状況や学び方の習得状況を評価し、 それを次の指導につなげていくことであると考える。その際には、個に応じた指導が必要と なる。指導と評価の一体化の推進は、授業改善や個を高めることにつながるものである。 -3- (2) 学び方についての考え方 学び方とは、学習を進めていくうえで重要な資質や能力であり、確かな学力の一部であると 考える。本校では、学び合いの仕方・家庭学習の習慣化・ノートの使い方の3点を学び方とし て大切にしている。それは、児童がこれから学習を進めていく上で、自分の考えをノート等に 表現し、それを伝え合って考えを深めたり広げたりすることが必要になると考えたからである。 そして、児童が学習したことを確かに身に付けていくためにも、家庭学習は大切だと考えた。 ① 学び合いについての考え方 児童は、授業の中で自分の考えをもちそれを発表したり友達の考えを聞いたりしながら、 考えを深めたり広げたりしていくと考える。そのような場を「学び合い」ととらえ、その場 を充実させていきたいと考えた。本校でとらえる学び合いは次の通りである。 学び合いとは ○互いの考えを出し合い、自分の考えを確かめるとともに、深めたり広げたりすること ○学習集団として、新たな見方や考え方をつくりあげていくこと 実践の内容についてはP5~P 11 を参照されたい。 ② 家庭学習についての考え方 児童の生活の中心は、学校生活と家庭生活である。学校で学習したことを家庭で復習した り活用したりすること、逆に家庭で身に付けたことを学校で活用することにより、児童の生 活はより充実するものになると考える。学校で学習したことを家で復習したり活用したりで きるように、家庭学習を充実させていきたいと考えた。 本校においては、家庭学習の基本的な考え方と各学年の家庭学習の仕方について校内研修 全体会で話し合い、「家庭学習の手引き」を作成して児童に配付している。家庭学習の習慣 化を図る実践については、P 12 ~P 19 を参照されたい。 ③ ノートの使い方についての考え方 児童は、学習を進めていくうえでノートを使う。ノートには、授業の課題やめあて、自分 や友達の考え、教師が板書したことなどが書かれていく。児童が、ノートを使って学習した ことを整理したり振り返ったりすることで、知識・理解がよりよく身に付き、表現・処理能 力、学習意欲が高まっていくのではないかと考えた。児童がノートを適切に使えることは、 学習を進めていく上でメリットになるはずである。そこで、児童一人一人に適切なノートの 使い方を身に付けさせていくことにした。実践の内容は、P 20 ~P 23 を参照されたい。 (3) 基礎的・基本的な内容についての考え方 基礎的・基本的な内容とは、学習指導要領の目標や内容ととらえた。基礎的・基本的な内容 を児童一人一人に身に付けさせることは、児童がこれから学校で学習を進めたり将来にわたっ て学びを続けたりしていく上で必要不可欠のことだと考える。 また、算数科・国語科で大切にする力について次のように考えた。 ① 算数科で大切にする力 問題を解決する力 ○身に付けた基礎的・基本的な内容を生かして問題を解決する力 ・問題を解決する見通しをもつことができる ・問題に対して自分の考えをもつことができる ・解決したことを表現できる ② 国語科で大切にする力 正しく読む力 ○身に付けた基礎的・基本的な内容を生かして正しく文章を読む力 ・漢字を正しく読んだり書いたりできる ・文章を(叙述に即して)正しく読み取ることができる ・自分から進んで読書することができる -4-
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