拙著 『宗教事件の内側』 (岩波書店) における元オウム真理教幹部 ・ 広瀬

拙著『宗教事件 の内側』 (岩 波書店)に おける元オ ウム真理教幹部・
広瀬健―に関する記述の一部事実誤認について
2009年
11月
藤 日庄 市
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拙著『 宗教事件 の 内側 』 にお いて、筆者 (藤 日)は 元 オ ウム真理教幹部・ 広瀬健 ― (2
009年 11月 、地下鉄 サ リン事件 な どで最高裁 にて死刑 確定。以下、広瀬 )に つい て
言及 したが 、 296ペ ー ジ 13行 日∼ 14行 日の記述 に一 部 に事実誤認 が あっ た。
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その記述 は以 下 の通 りであ る。
「そ こに書 かれ てい る通 りの修行法 をや ってみ る と神 秘体験 が起 こった
Jと
あ るが、「そ こJと は麻 原彰晃 の『 超 能力 秘密 の 開発法』、
『生死 を超 え る』、
『 イ ニ シエ
ー シ ョン』、
『 マハ ー ヤ ー ナ スー トラ』、「月刊 マハー ヤ ー ナ Jな どの著作 の こ とだが、
これ は事 実誤 認 で あつた。
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広 瀬 の 手 記 「学 生 の 皆 様 へ J(以 下 、「手 記 J。 「り
I島 堅 二 の 宗 教 学 研 究 室
htpプハハwl■ v neip′∼kawasttma′ Jお ょ び 「 s talon∼ 摂 理 途 中 下 車 の ス ス メ
∼
htp1/7tochugesha webinfoseek ooJp′ 」 に掲載 )に よる と 14ペ ー ジに
「ところが、、、修行 もしてい ない、、、
」、
とある。つ ま り本を読んだだけで体験が起きたのである。そ して、一 ヵ月後 には「手記 J
14ペ ージ∼ 15ペ ージにあるよ うな強烈な神 秘体験を広瀬被告は経験する。
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以上 の広瀬 の記述 については、彼 のそ の後 の行動お よび筆者 のこれまでの宗教取材 の
蓄積か ら真実を認 めざるを得ない。 よって 、筆者 の記述は事実誤認である。繰 り返す
と、修行法を行 なかったにもかかわ らず、本 をよんだだけで体験はおきたのである。
つ ま り、被告 の体験は後述の 「突然の宗教的回心」 だった。
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以上 の認識に立つ と、拙著の 「入信・ 出家 の道 を一気に走 ったJと い う部分および 2
97ペ ージの 「オ ウム信徒 の入信時にあったで あろう『 浅薄 さ』や『 単純 さ』Jの 部分
について再検討す る必要が生 じる。「手記」をもとに再検討する。
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広瀬 は新宗教 に対 してはエホバ の証人 の輸血拒否事件や、統一教会 の霊感商法などを
報道によって知 り、新宗教に対 して不信感をもつていた。 1988年 2月 ごろ、広瀬
は偶然に麻 原彰晃 の著作を見か ける。そ して読む と、一週間後 くらいか ら、著作に書
かれていた体験 が広瀬 の身体に現れた。にもかかわ らず 、広瀬はオ ウムに近づけなか
つた。なぜな ら、既述の通 り新宗教に拒絶反応 があったか らである。 (「 手記 J
13ペ
ー ジ∼ 14ペ ー ジ)
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しか し、麻原 の著作を読み始めた約一 ヵ月後、「手記」 14ペ ー ジ∼ 18ペ ー ジにある
よ うな強烈な神秘体験 を広瀬は経験す る。 ここに広瀬 は 「突然 の宗教的回心」 により
オ ウム真理教に入信する.広 瀬にとってオ ウムの世界観はまさに現実として感 じられ、
クング リニー の覚醒は、指導者がいないことの危 険性を実感 させるものであった。 (関
係者 の法廷供述によると、被告は平成 2年 ごろ 「教団の本をよんだだけでクング リニ
ーが覚醒 し、困 つて教団に相談に行ったJ旨 話 していた)。 つま りは 「突然 の
宗教体験
により、思考体系が急激に変容 した (突 然の宗教的回心)Jの である。
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人信後の広瀬 にとって、オ ウムの教義 の リア リティは諸体験によって深 められてゆき、
麻原は 「神 Jと い える存在 として確実に深 く根付 い てゆく。 (「 手記 J21ペ ー ジ∼ 2
2ペ ージ)
とはい え、入信 して も広瀬 は出家す る こ とは まった く考 えてい なか った。 広瀬 が読 ん
でい た麻原 の著 作 に よる と出家 まです る必 要 はなか った。 また 、長男 で あ り、両親や
家 に責任 を感 じていた か らで あ る。就職 活動 も熱 心 に行 い、 1988年
10月
に大企
業 の研 究職 に 内定 した ときは とて も喜び 、そ して安 心 した。 母親 はそ の時 の様 子 を法
廷 で証言 してい る。
10.し か し、広瀬 の入信 後 、麻原 は 、現代人 は悪業 を積 み来世 は地獄 界や餓 鬼界 、動物
界 とい った 苦界 に転 生す る、世紀末 には核戦争 が起 こ る と盛 んに説 き、そ の救済 のた
めに出家者 を増や していた。広瀬被告 は就職 内定後 、街 を歩 いた り、人 と接 す る と「苦
界 に転生す るカル マ Jを 感 じる よ うにな る。 これ は苦 しく、体調 が悪 くなった り、気
味悪 い ヴィジ ョン もみ るよ うになった。 また 、広告 な どを見 る と、頭痛 がす る こ とも
あ った。 そ の よ うに広瀬 が 1988年 初 冬 ごろ話 してい た こ とを、広瀬 の友 人 は法廷
で証 言 してい る。 一 方、麻原 のエ ネル ギー に よ り自分 のカル マ が浄化 され るの を感 じ
た。 広 瀬 は麻原 の説 くよ うに f一 般社 会で通 用す る価値観 は苦界 に至 らせ る と思 うよ
うにな り、解脱 、悟 りを 目指す ことに しか意 味 を見 出せ な くな りま した」(手 記
)。
こう
して 1988年 末 、麻原 か ら強 く迫 られ た こ ともあ り、翌春 、広瀬 は大学院 卒業 と同
時に出家 した。 人信 後 、 出家 に至 る経 緯 は 「手記 J26ペ ー ジ∼ 29ペ ー ジ を参 照 さ
れ たい。
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拙 著 にお いて広瀬 が 『入信 ・ 出家 の道 を一 気 に走 った Jと した。 しか し、み て きた
よ うに、入信 時 にお け る新宗教 へ の警戒感 す らも一 挙 に砕 い た強烈 な神秘体 験 、入信
後における出家願望を抱 くまでのプロセス を検討す ると、「一気に走った」 とぃ うこと
によ り、広瀬 の内面の複雑な変容過 程をみえなくして しまった と考える
。また、入信
時 の 「軽薄 さJ「 単純 さJに ついては、カギカ ッコをつ けたことにより、そんな簡
単な
もの ではない とい う意を込めたとはいえ、具体的な事実の記述を していない ことで
、
そのよ うには言えないであろ う。
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拙著 296ペ ー ジ 11行 日に 「入信動機 をも撃 つた」、また 16行 日∼ 17行 日に 「こ
の広 瀬 の軌跡 を念 頭 にお くかの よ うにJと あるが 、「手記 に よれ
」
ば誤認 とな るので 、
この部分 を取 り消 す。
43、
なお、拙著 188ペ ージ 5∼ 6行 日に広 ■が
TMの 会員だったことか ら、広瀬 が新新
宗教 との関わ りがあらたとしたが、広瀬 自身の認識 では、「TMは 自身を非宗教 と公
言
l‐
してお り、教義 も示 されず、宗教的実践 もなかったことか ら、TMを
宗教 と認識 してい
なかったJと い うことである。
以上