音律[2] 完全5度とオクターブを強調する音楽 「イングランドの甘い響き

完全5度とオクターブを強調する音楽
音律[2]
純正音律・中全音律・十二等分律
「イングランドの甘い響き」
長三和音
「イングランドの甘い響き」­­­長3度
- 三和音:完全5度の間にもう1音加えた和音
- 長三和音:下と真ん中が長3度の関係
- C音階でいうと、C-E-G・F-A-c・G-B-d
C
ジョン・ダンスタブル Quam pulchra es
D
E
F
G
c
d
E
A
B
C
F
G
G
A
B
c
d
長3度・短3度
オクターブ 鍵盤12個 2:1
完全5度
長3度
完全5度
鍵盤7個
3:2
完全4度
鍵盤5個
4:3
長3度
鍵盤4個
5:4
短3度
鍵盤3個
6:5
長三和音
純正音律
弦が振動するとき、弦の各部分が独自に振動して小さな音を出している­­­倍音
基本的な考え方
1
本来の音程
1
1オクターブ上
1/2
1/2
1/3
1/2 x 2/3
1/4
(1/2)2
1/5
(1/2)2 x 4/5
2オクターブと長3度上
1/6
(1/2)2 x 2/3
2オクターブと完全5度上
1オクターブと完全5度上
2オクターブ上
- 長三和音を純正にしよう
•完全5度が純正
•長3度も純正
•結果として短3度も純正
- 具体的には次の3つの長三和音を純正にする
•C-E-G
•F-A-c
•G-B-d
- そのために長3度(5:4)と短3度(6:5)の比率を使う
I
II
III
IV
V
•長3度は下と真ん中
•短3度は真ん中と上
VI
したがって長三和音とは音が本来その中に含んでいる自然の和音である
純正音律
純正音律
隣り合う音程の関係
V
2/3
C
D
E
F
G
A
B
c
d
III
4/5
I
C-E-G
F-A-c
- C:前提として1
-F:1 x 3/4 = 3/4
- E:1 x 4/5 = 4/5
G-B-d
- G:計算ずみで2/3
-A:3/4 x 4/5 = 3/5
- G:1 x 2/3 = 2/3
- B:2/3 x 4/5 = 8/15
-c:3/4 x 2/3 = 1/2
- d:2/3 x 2/3 = 4/9
C
D
E
F
G
A
B
c
d
1
8/9
4/5
3/4
2/3
3/5
8/15
1/2
4/9
C
1/2
B
8/15
A
3/5
G
2/3
F
3/4
E
4/5
D
8/9
C
1
8/15 :
1/2
=
16
:
15
s
3/5
:
8/15
=
9
:
8
T
2/3
:
3/5
=
10
:
9
t
3/4
:
2/3
=
9
:
8
T
4/5
:
3/4
=
16
:
15
s
8/9
:
4/5
=
10
:
9
t
1
:
8/9
=
9
:
8
T
純正音律の問題点
現実的な音律に向けて­­­中全音律
15・16世紀の音楽
- 長3度が大事になってきた
- ピタゴラス音律は長3度が汚すぎて(64/81)使えない
- 純正音律はキッチリしすぎて使えない
中全音律­­­音楽家や楽器製作者が経験的に生み出した解決法
1 x 1/2
1/2
1/2
1 x 2/3
4/5 x 3/4
2/3
3/5
3/5 x 3/4
9/10 x 1/2 x 6/5
27/40 x 3/4
9/20
27/50
81/160
3/5
27/40
- この音程差を4つの等しい部分(完全5度)に切り分ける
- 同じ作業(Xとします)を4回繰り返して答えは1/5になる
27/40
3/5 x 3/2
1
- 1/5 = 1/2 x 1/2 x 4/5(2オクターブと長3度)
9/10 x 3/4
1 x 4/5
4/5
- まず2オクターブと長3度を純正な 1/5 に合わせる
- つまり X4 = 1/5
27/40 x 6/5
4/5
9/10
9/10
81/100
4/5 x 3/2
3/5 x 2 x 5/4
9/10 x 3/2
27/40 x 3/2
6/5
3/2
27/20
81/80
- 答えは X= 0.66874030498… (ちなみに 2/3 = 0.666…)
C D E
この短い終止形の中で、1.25%も音程がずれてしまう
F G A B
完全5度
実際の音楽は複雑なので、いつもベースから計算できるわけではない
c
d
完全5度
e
f
g
a
b c
完全5度
b e
完全5度
純正音律はキッチリしすぎていて実際の音楽には使えない
中全音律
和音の純正さと柔軟性と12等分律
その響きの特長
和音の純正さ vs 柔軟性
- 長3度が完全に純正である(これが重要)
- 和音の純正さと柔軟性は対立する
- これで完全5度の濁りが気にならなくなる
- #や♭の少ない調がいい
17∼18世紀には柔軟性を優先させる傾向にあった
ヴェルクマイスター1番
- これをもとにいろいろな調律法が作られた
D#
A#
A
G#
E
C#
F#
B
D#
●
●
G#
C#
●
●
●★
●★
F#
★
●
9
- 和音の純正さには(ある程度)目をつむった
8
12等分率の登場
7
- 別名「平均律」
★
E
5
- 和音の響きは完全無視
A
●
6
- 単純に1オクターブを12の等しい段階に分ける
D
B
10
- 多くの調を使えることが大事だった
●純正に合わせる
例:ジャン・ドゥ・マック「Consonanze stravaganti」 ★1/4狭めに合わせる
C
C
F
G
F
G
D
11
- 融通の利く音律は和音が純正に響かない
理論的に単純などで、各種応用の余地もある
A#
12
- 和音の純正な音律は融通が利かない(純正音律など)
12等分率の計算
4
- 同じ割合で弦を12回短くすると1/2になる
- X12=1/2
- X=0.943874312681694...
- ちなみに15/16=0.9375
3
2
1
C C# D D# E
F F# G G# A A# B
音律と和音感覚
和音感覚のない音律と音楽
ジョヴァンニ・バッティスタ・ペルゴレージ「Stabat Mater」
アーノルト・シェーンベルク「ピアノ組曲作品25」
セント法
十二等分律の半音をさらに100段階にわける
細かい音程の違いを科学的に計るための単位
- 世界各地の様々な音楽文化における音程の差違
- いろいろな音律の間での音程の差違
C
C#
D
D-flat
純正
0
ピタゴラス
0
中全
0
十二等分
0
100.00
F#
G
–––
113.69
90.22
–––
76.05
G-flat
純正
ピタゴラス
中全
十二等分
–––
611.73
588.27
–––
579.47
600.00
D#
203.91
203.91
193.16
–––
317.60
294.13
310.27
–––
200.00
300.00
G#
A
A-flat
701.96
701.96
696.58
700.00
E
F
386.31
498.04
407.82
498.04
386.31
503.42
400.00
500.00
A#
B
E-flat
–––
815.64
792.18
813.69
772.63
800.00
B-flat
884.36
905.87
–––
1019.55
996.09
1088.27
1109.78
889.74
1006.84
1082.89
900.00
1000.00
1100.00