序 機 械 に は , そ の 使 用 目的 に よ っ て 多 種 , 多 様 な 種 類 が あ る . 複 雑 な 機 械 で も, こ れ を 分 析 す る と比 較 的 単 一 の 機 能 を もつ 要 素 に 整 理 , 分 類 す る こ と が で き る . こ れ を 機 械 要 素 と い う. す な わ ち , 機 械 は こ れ ら の 要 素 か ら 構 成 さ れ て い る と言 え よ う. 本 書 は , 多 くの 機 械 要 素 の 性 能 , 構 造 な ど を 解 析 す る と と も に , そ れ ら の 設 計 方 法 を 講 述 す る の が 目的 で あ る . こ こ に 述 べ ら れ て い る 内 容 は , 機 構 学 , 材 料 力 学 , 流 体 力 学 , 材 料 学 , 機 械 製 作 法 な ど に 基 礎 を 置 い て 展 開 され て い る の で , こ れ ら の 専 門 知 識 に 習 熟 し, か つ 総 合 す る 能 力 を 高 め る よ うに 学 習 す る こ と が 必 要 で あ ろ う. 本 書 は ,7章 お よび 付 録 か ら 成 り立 っ て い る . 各 章 に 例 題 を 掲 げ て , 各 要 素 の 設 計 方 法 を 具 体 的 に 説 明 し, か つ い っ そ う理 解 を 深 め る た め に 練 習 問 題 が 章 末 に 課 され て い る . ま た , 従 来 の 工 学 単 位 と国 際 単 位 を 併 記 し て , 学 習 の 便 を 図 って い る. 第1章 で は , 機 械 要 素 の 設 計 に 当 た り, 基 礎 的 で か つ 一 般 性 の あ る事 項 に つ いて 述べ られ て い る. こ こで は, 機械 要 素 設 計 の趣 旨, 使 用す る材料 の機 械 的 性 質 , 許 容 応 力 , 安 全 率 , は め あ い な ど の 各 項 目が 概 説 され て い る . 第2章 で は, 機 械 の各 部 品 を 結合 す るの に必 要 な 要素 の設 計方 法 に つ い て 述 べ ら れ て い る . これ ら の も の を 締 結 要 素 と い い , そ の 代 表 的 な ね じ, ボ ル ト, ナ ッ ト, リベ ッ ト, リベ ッ ト継 手 , 溶 接 継 手 な ど に つ い て 講 述 さ れ て い る. 第3章 で は , 回 転 系 を 構 成 して い る 要 素 の 設 計 方 法 に つ い て 述べ ら れ て い る. こ こで は , 軸 , キ ー , 軸 継 手 , 軸 受 , シ ー ル , パ ッ キ ン な ど に つ い て 解 説 され て い る . 第4章 で は , 動 力 や 回 転 運 動 を 伝 達 す る 要 素 の 設 計 方 法 に つ い て 述べ ら れ て い る. こ こで は ,伝 達 要 素 の主 要 部 品 で あ る各 種歯 車 , ク ラ ッチ, ブ レー キ , ベ ル ト, チ ェ ー ンな ど に つ い て 論 及 さ れ て い る . 第5章 で は ,各 種 類 の ばね の設 計方 法 に つ い て述 べ ら れ て い る. こ こで は, 圧 縮 ・引張 お よび ね じ りコイ ルば ね ,重 ね 板 ば ね ,皿 ば ね な どに つ い て 説 明 され てい る. 第6章 では ,油 圧 回 路 を構 成 して い る要 素 につ いて 述べ られ て い る. こ こ で は ,油 圧 ポ ンプ, ア クチ ュエ ー タ,制 御弁 ,各 種 回 路 につ い て記 述 され て い る. 第7章 で は ,機 械 要 素 を製 作 す る に 当た り,設 計 上 注意 す べ き基 本 項 目に つ い て述 べ られ て い る . こ こ では ,加 工方 法 お よび 加工 精 度 ,特 に鋳 造 ,鍛 造 , プ レス加 工 に 対 す る設 計 上 の要 点 につ いて 解 説 され て い る. 機 械 設 計 は, 新 しい機 械 を 開発 して, これ を製 作 す るた め に必 要 な知 的作 業 で あ る.そ こに は ,創 造 性 ,新 規 性 が要 求 され る の で, 多 くの技 術 的知 識 を集 約 し,か つ 総 合 す る こ とが で きる能 力 が必 要 とな る. これ と併 せ て, こ れ らの 知 的作 業 か ら得 られ た 結果 を具 体化 す るた め に, 機 械要 素 設 計 は機 械 技 術 者 に とって 必要 欠 くこ との で きな い知 識 で あ る. この こ とを深 く認 識 し て , これ に取 り組 まれ る こ とを期 待す る もの で あ る. 最後 に本 書 は ,機 械 要 素 に深 い 造詣 を もち, か つ長 年 大学 に おい て機 械 要 素 設 計 の講 義 を 担 当 され て い る多 くの執 筆 者 に よっ て編 さん され た もの であ る.執 筆 者 の 労 に対 して 深甚 な謝 意 を表 す と と もに, 多 くの図 表 や 原稿 の 整 理 に精 根 を 惜 しむ こ とな く, か つ 各執 筆 者 に 有益 な助 言 と示 唆 を寄 せ られ た 実 教 出版 の桜 井瑞 穂 氏 に感 謝 して ,本 書 の序 とす る. 昭和59年10月 編者 和 田 稲 苗 目 第1章 1・1機 械 1・1・1基 本 設 計 (1) 械 要素 設 計 (2) 1・1・3設 計 の標 準 化 (3) 1・2・1引 械 1・2・2ク 1・2・3疲 1・3許 機械要素設計の基礎 設 計1 1・1・2機 1・2機 次 材 料3 張 強 さ お よび 降 伏 点 リー プ強 さ れ 強 (4) (5) さ (6) 容 応 力 お よ び 安 全 率6 1・3・1静 荷 重 が 作 用す る場 合 1・3・2繰 返 し荷重 が作 用 す る場 合 1・3・3衝 撃 荷 重 が 作用 す る場合 1・3・4許 容 応 力 に影 響 を 及 ぼす 諸 因子 1・3・5安 1・4は 全 率 (6) (9) (13) (14) (18) め あ い お よ び 表 面 粗 さ23 1・4・1は め あ い (23) 1・4・2表 面 粗 さ (29) 練 習 問 題 〔1〕32 第2章 2・1各 種 の 締 結 方 法33 2・2ね じ, ね じ部 品 2・2・1ね 2・2・2ね 2・2・3ね 2・2・4ね じ 用 語 じ山 の種 類 じ 部 品 締 結 お よ び ね じ 継 手33 (33) (34) (38) じ の 締 付 力 と 締 付 トル ク (44) 要 素 2・2・5ね じ部 品 の 強 さ 2・2・6ね じ部 品 の ゆ る み 止 め 2・3リ ベ ッ ト お よび (47) (56) リベ ッ ト継 手60 2・3・1リ ベ ッ トの 種 類 2・3・2リ ベ ッ ト継 手 の 種 類 (61) (63) 2・3・3リ ベ ッ ト継 手 の 強 さ (64) 2・3・4リ ベ ッ ト継 手 の 効 率 (67) 2・3・5鋼 構 造 物 の リベ ッ ト継 手 2・4溶 接 継 (68) 手71 2・4・1溶 接構 造物 の特 性 2・4・2溶 接継 手 の種 類 と強 さ (71) 2・4・3溶 接 設 計 上 の一 般 的 注 意 (73) (79) 練 習 問 題 〔2〕83 第3章 軸 系 要 3・1軸88 3・1・1軸 の 分 類 (88) 3・1・2記 号 と単 位 (89) 3・1・3強 さ に 基 づ く設 計 (89) 3・1・4変 形 に 基 づ く設 計 (94) 3・1・5設 計上 の注 意 お よび 参 考 資 料 3・2キ ー, ス プ ライ ン お よび 3・2・1キ ー 3・2・2ス 3・3軸 プ ライ ン お よび セ レー シ ョン 継 (104) 手104 継 手 の分 類 3・3・2各 軸 継 手 とそ の 特徴 3・3・3軸 継 手 の選 定 3・4・1滑 セ レ ー シ ョ ン100 (100) 3・3・1軸 3・4軸 (95) (105) (105) (113) 受117 り軸 受 と転 が り軸 受 の 比 較 3・4・2滑 り軸 受 (118) 3・4・3転 が り軸 受 (132) (117) 素 3・5シ ー 3・5・1シ ル145 ー ル の分 類 (146) 練 習 問 題 〔3〕150 第4章 4・1歯 伝 達 要 素 車155 4・1・1歯 車 の種 類 (155) 4・1・2歯 形 の性 質 (155) 4・1・3用 語 お よび 記 号 4・1・4イ ン ボ リ ュ ー ト平 歯 車 4・1・5イ ン ボ リ ュ ー トは す ば 歯 車 4・1・6か さ 歯 車 (158) (170) (174) 4・1・7ウ ォ ー ムギ ヤ 4・1・8歯 車用材料 4・2ク (157) (177) (182) ラ ッ チ , ブ レ ー キ , つ め 車185 4・2・1ク ラ ッチ, ブ レーキ の分 類 4・2・2か み あ い ク ラ ッチ 4・2・3摩 擦 ク ラ ッ チ ・ブ レ ー キ 4・2・4そ の他 の 事項 (197) 4・2・5自 動 クラ ッチ (200) 4・2・6つ 4・3ベ め 車 (185) (186) (187) (202) ル ト伝 動205 4・3・1ベ 4・3・2プ 4・3・3速 ル トの 種 類 と 構 造 ー リ 比 (209) (206) (208) 4・3・4ベ ル トの 長 さ と 接 触 角 4・3・5ベ ル トの 張 力 と 伝 達 動 力 4・3・6初 4・3・7ベ 4・4チ 張 力 (211) (213) ル ト伝 動 装 置 に お け る ベ ル トの 選 定 ェ ー ン 伝 動221 4・4・1チ ェ ー ン の 種 類 と構 造 4・4・2ス プ ロ ケッ 4・4・3速 (210) 比 ト (224) (222) (222) (214) 4・4・4チ ェー ンの長 さ 4・4・5チ ェ ー ン の 張 力 と伝 達 動 力 (225) (226) 練 習 問 題 〔4〕228 第5章 5・1ば ね の 種 類231 5・2ば ね の 材 料232 5・2・1ば 5・2・2ピ ね鋼鋼材 (232) ア ノ 線 (232) ば 5・2・3ば ね 用炭 素 鋼 オ イル テ ンパ ー線 5・2・4ば ね 材料 の弾 性 係 数 5・3圧 縮 素 (234) ・引 張 コ イ ル ば ね234 筒 形 コイ ル ばね の理 論 式 5・3・2初 張 力 のあ る引張 ば ね (237) 5・3・3設 計 に 考 慮 すべ き事 項 (238) 容 応 力 5・4重 要 (234) 5・3・1円 5・3・4許 ね (234) (239) ね 板 ば ね242 5・4・1展 開 法 に よ る設 計 (242) 5・4・2板 端 法 に よ る設 計 (244) 5・5ね じ り コ イ ル ば ね247 5・5・1設 計 に 用 い られ る 基 本 式 5・5・2設 計 上 の 注意 5・6さ (247) (248) ら ば ね249 5・6・1設 計 に 用 い ら れ る基 本 式 5・6・2設 計上の注意 練 習 問題 (249) (251) 〔5〕252 第6章 6・1油 圧 機 油 器255 6・1・1油 圧 ポンプ 6・1・2油 圧 ア クチ ュエ ー タ (255) (260) 圧 要 素 6・1・3油 圧 用 各種 弁 6・1・4圧 力制 御 弁 (269) 6・1・5流 量制御弁 (271) 6・1・6方 向制 御 弁 (272) 6・2油 (268) 圧 回 路274 6・2・1油 圧 回路 の基 本構 成 6・2・2圧 力制 御 回 路 (275) (274) 6・2・3流 量 制御 回路 (277) 6・2・4油 圧 モ ー タに用 い られ る制 御 回路 (279) 練 習 問題 〔6〕280 第7章 7・1生 生 産 設 計 産 設 計281 7・2加 工 方 法 の 選 定281 7・3加 工 精 度 と表 面 の 状 態281 7・4各 種 加 工 方 法 に よ る 製 品 に 対 す る 設 計 上 の 注 意 事 項286 7・4・1鋳 造 品 (砂 型 ) に対 す る設 計 上 の注 意 事 項 7・4・2鍛 造 ( 型 鍛 造 ) 品 に対 す る設 計 上 の注 意 事 項 7・4・3プ レス加 工 品 に対 す る設 計 上 の注 意 事 項 7・4・4切 削 加工 品 に対 す る設 計 上 の注 意事 項 7・4・5組 立 作 業 に対 す る設 計 上 の注 意 事項 付 索 引306 録 :付録1.SI単 (286) (288) (288) (289) (292) 位 (295) 付 録2.標 準数 (298) 付 録3.金 属 材 料 の機 械 的 性 質 (800) 付録4.金 属 材 料 の 物 理 的性 質 (302) 付録5.各 種 断面 形 の性 質 (303) 第 1 章 機械要素設計 の基礎 機 械設 計 は , 新 しい 要 求 に 基 づい て有 用 な機 械 を 作 り出す た め の創 造 的 な 思 考 で あ る とい わ れ て い る. 設 計 を行 うに は ,多 くの技術 的 な知 識 を組 み 合 わ せ て, 要 求 され る機 械 を ま とめ な けれ ば な らな い ので ,機 械 に 関 す る基 礎 的 な課 目を学 習 して お く必 要 が あ る. 機 械工 学 に お け る 代 表 的 な基 礎 課 目は, 機 構 学 ,材 料 力学 ,熱 力学 ,流 体 力 学 , 材料 学 , 機械 製 作 法 な どで あ る. これ らの 基 礎 知 識 を集 約 し, か つ電 気工 学 や 制 御工 学 な どを 組 み 合 わ せ る こ とに よ っ て ,機 械 設計 を行 うこ とが で き る. 1・1機 械 設 計 機 械 に は, 動 力 を生 み 出 す エ ンジ ン, ター ビ ン, 水 車 ,発 電 機 な ど,機 械 を 作 り出 す い ろい ろ な工 作 機 械 , 加工 機 な ど, 物 を輸 送 す る 自動 車 , 車 両, 船 舶 , 航 空機 な ど, 物 を運 搬 す る ク レ ー ン, コ ンベ ヤ, エ レベ ー タな ど, 日常 の 製 品を 作 る繊 維 機 械 や食 品 機械 , あ るい は 作 業 に用 い られ る建 設 機械 , ま たは 一 次 製 品 を作 るた め の 装置 や 石 油 プ ラ ン トな ど各 種 類 の もの が あ る. 1・1・1基 本 設 計 機械 に は多 く種 類 が あ るの で ,そ れ ぞ れ の機 械 の 目的 , 性 能 ,構 造 な どは異 な る. そ こで , これ らの機 械 は, 各 専 門分 野 の担 当者 に よ って設 計 が進 め られ る .機 械 を設 計 す るに は , まず 基 礎 理論 , 性 能解 析 , 構造 計 算 , 試 作実 験 な ど を取 り扱 う開 発 部 門 の設 計 が あ る. 次 に ,設 計 資 料 の調 査 ,機 構 の検 討, 機 能 計 算 , 計画 図, 仕様 書 な どを 作成 す る基 本設 計 が あ る. さ らに ,機 械 を構 成 す る各 要 素 の強 度 計 算 ,製 作 図 な どを描 く詳細 設 計 が あ る, これ ら を総 称 して 基 本設計業務 と一 般 に 呼 ばれ てい る. この基 本 設計 に対 して, 図面 の 複写 , 保 管 ,配 布 ,回 収 な どを 扱 う図面 管 理 , 規 格 を制 定 す る標 準 化 管理 , また は 設計 資 料 の 収 集, 保 管 , 貸 出 , 回収 な ど を 行 う資料 管 理 が あ る. この ほ かに , 設 計作 業 の 日取 りや 進 め方 を扱 う日程 管 理 ,製 作 費 の 見積 りや 価 格 を決 定 す る原価 管 理 な どが あ る. これ らの 作業 を総 称 して 付帯設計業務 とい う. これ らの 関係 を図1・1に 示 す . 図1・1機 械 設 計 の 流 れ 1・1・2機 械 要 素 設 計 上述 の よ うな複 雑 な機 械 で も, これ を分 解 して み る と, それ を 構 成 してい る 要 素 に は共 通的 な もの が多 い . そ の代 表 的 な もの に, 機 械 を組 み 立 て る ときに 用 い られ る ボル ト, ね じな どの締 結 要素 ,動 力 を伝 え る回 転軸 ,軸 受 ,歯 車 な ど の 動 力伝 達 要素 , 力 の 作用 を緩 和 した り振 動 を防 ぐば ね , シ ョ ックア ブ ソーバ な どの緩 衝 要素 , 流 体 を送 るの に 必要 な管路 , ポ ンプ な どの流 体 ・油圧 要 素 な どが あ る. この ほか に ,機 械 を 制御 す る ため の機 械 的 お よび電 気 的 な制 御 要 素 な どが あ る. この よ うな 機械 を構 成 す る部 品 を 機械要素 とい う ・前 項 で述 べ た 機 械設 計 に お け る詳 細 設計 は, 主 と して機械 要素 を設 計 す る こ とで あ る. 本 書 で は ,機 械 要 素 に関 す る設計 に つ い て主 として述 べ られ て い る. 1・1・3設 計 の標 準 化 機 械 要 素 は共 通 な機 能 や 構 造 を持 っ てい て, どの機 械 に も適 用 で きる よ うに 標 準 化 され て い る .標 準 化 す るに は規 格 が 必要 で あ る. これ は, あ る機 械 分 野 に と どま らず , す べ て の機械 表1・1日 本工 業 規 格 (JIS)の部 門 分 類 工 業 に共 通 で な けれ ば な らな い . それ ゆえ に ,我 が 国に お い て は , 国 家 規 格 と し て 日本 工 業規 格1)が 制 定 さ れ て い る, 日本 工 業 規 格 は ,表1・1に 示 す よ うに 各 部 門 に 分 類 さ れ て い て, そ れ ぞれ の部 門 の共 通 的 な も のが 規 格 化 され てい る. この表 か らわ か る よ うに ,土 木 建 築 のA部 門か ら工 業一 般 に 及 ぶ一 般 お よ び雑 のZ部 門 まで の17部 門 が あ る.この うち, 特 に機 械 要 素設 計 に関連 の強 い もの は機 械 のB部 門で あ るが, 機 械 設 計 を行 うもの は, そ れ ぞれ の部 門 の規 格 に 精 通 してお く必 要 が あ る. 各 国の 国 家規 格 が ば らば らで あ る と, 機 械 の輸 出入 が 活 発 に行 わ れ て い る現 状 で は, 多 くの 問題 が 生 じる. そ こで ,各 国の 規格 を統 一 して ,標 準 化 を 図 る こ とが 国際 的 に 必 要で あ る. 各 国 の規 格 を総 合 す る 目的 で, 国 際標 準 化 機構2) が設 け られ , この機 構 の も とで各 国 の協 議 に よって制 定 され た規 格 は 国際規格 と呼 ばれ てい る. 1・2機 械 材 料 機 械 に 用 い られ る材 料 に は, 多 種 多様 な もの が あ り, これ を選 択 して用 い る こ とは機 械 の 設計 に必 要 な こ とで あ る. 機 械 に 広 く用 い られ て い るの は金 属 材 1)Japanese 2)International と呼 ぶ . Industrial Standards,こ Organization for れ を 略 し てJISと Standardization,こ 呼 ぶ . こ で 制 定 さ れ た 国 際 規 格 をISO規 格 料 で あ り,次 に 化学 的 に作 られ る材 料 や木 材 の よ うな非 金 属材 料 で あ る. 非 金 属 材 料 の種 類 は 極 め て多 い の で, そ れ ぞれ の専 門 書 にゆ ず り, ここで は設 計 に 必 要 な金 属 材 料 の 性質 に つ い て検 討 す る. 1・2・1引 張 強 さ お よび 降 伏 点 金 属 材料 の代 表 的 な ものは 鉄鋼 で あ る. 鉄鋼 の試 験 片 を製 作 して , これ を 用 い て 引張 試験 を行 うと, 図1・2に 示 す応 力-ひ ず み 線 図 が得 られ る. この図 が 示 す よ うに, 金 属 材料 の機 械 的 性 質 の代 表 的 な もの は , 比例 限 度 , 弾 性 限 度 ,降 伏 点 , 極 限強 さお よ び 弾 性 係数 で あ る.応 力 とひ ずみ が 比 例 してい る 上 限 を 比例限度, 応 力 を取 り除 くとひ ずみ が ほ とん どな く な る 上 限 を 弾性限度 とい う. 弾 性 限度 を越 え る と,応 力 は 増 加 しな いに もか か わ らず , ひず みが 急 増 す る. ひ ず み が急 に 増 大 図1・2軟 鋼 の応 力-ひ ず み線 図 しは じめ る応 力を 降伏点, また試 験 片 が破 断 す る前 の 最 大 応 力 を 極限強 さ と いい ,特 に引 張 試験 で は極 限 強 さを 引張強 さ (σB) とい う. 比 例 限度 や 弾性 限 度 は, 引 張試 験 で は明 瞭 に表 れ ない の で, あ とで述 べ る よ うに, 降 伏点 が 機 械 設 計 で は 重要 な性 質 で あ る. また , 材料 の強 さを表 す 代表 的 な応 力 が 引張 強 さ で あ る. 応 力 とひ ず みが 完 全 に 比例 す る部 分 の比 例 定 数 を 弾性係数 といい , 引張 りや 圧 縮 の応 力が 作用 す る場 合 に は, これ を 縦弾性係数 とい う. ね じ りが 作用 す る 場 合 の せ ん断 応 力 とせ ん断 ひず み との比 例 定数 を 横弾性係数 とい う. 鉄 鋼 の 代表 的 な種類 で あ る炭 素鋼 鋼 材 で は,図1・2に 示 す よ うな応 力-ひ ず み 線 図 が 得 られ るが, 特 殊鋼 や非 鉄 金 属 で は, 降伏 点 が 明確 に表 れ ない. この よ うな場 合 は, 降 伏点 の代 わ りに 耐力 が用 い られ る.耐 力は0.2% の永 久ひ ず み が 生 じる点 の応 力 で あ る. 代表 的 な 金属 材料 の 引張 強 さ,降 伏 点 な どを付 録 3の 付 表7に 1・2・2ク 示 し て お く. リー プ 強 さ 高 温 に さ ら され て い る金 属 材 料 に 荷 重 を 長 時 間 か け る と , そ の 荷 重 が 一 定 で あ る に も か か わ らず , ひ ず み は 時 間 と と も に 増 大 す る . こ の 現 象 を ク リープ と い う. あ る 温 度 の も と で , 長 時 間 荷 重 が 作 用 して も ひ ず み が 増 大 し な い 応 力 を ク リー プ 限度 とい う. 実 際 の ク リー プ で は , ひ ず み の 増 加 す る 割 合 は 極 め て 小 さ い の で , ク リー プ が 停 止 し た か 否 か を 判 定 す る こ と は 困 難 で あ る . そ こ で , あ る温 度 で あ る 時 間 が 経 過 し た と き , 一 定 の ク リ ー プひ ず み が 生 じ る 荷 重 を ク リー プ 限 度 と し て い る. 例 え ば , 表1・2に 100000時 間 で1% 示 す よ う に ,10000時 間 または の ひ ず み が 生 じ る 応 力 を ク リー プ 限 度 と して い る. 表1・2ボ イ ラ用 合 金 鋼 鋼 管 の ク リー プ 強 さ (JISG3462) * ラ プチ ャ強 さと は, ク リー プ 破断 す る と きの 強 さ. 高 温 の も と で 使 用 され る ボ イ ラや ガ ス タ ー ビ ン な ど に 用 い る 材 料 に 対 し て は , 降 伏 点 の 代 わ りに100000時 い. 間 で1% の ク リ ー プ 限 度 を 用 い る こ とが 多 1・2・3疲 れ 強 さ 繰 返 し荷重 や 変 動 荷重 が 作 用す る と, 材料 の特 性 が 変化 す るの で, 引 張 強 さ よ り小 さい 応 力で 破 断す る. 一 般 に ,繰 返 し荷 重 が106回 以上 作用 して も破 断 しない 最 大 応 力 を 疲れ限度 とい う.疲 れ 限 度 は ,機 械 設計 に おい て重 要 な性質 で あ るか ら,次 節 に お い て詳 述 す る. 1・3許 容 応 力 お よび 安 全 率 丸 棒 に単 純 引 張荷 重Pが 材料 力学 に よれ ば σ=P/Aで 作用 す る とき,そ の 断面 積Aに 生 じる引張 応 力 は, あ る. この よ うに材 料 力 学 で は, 荷 重 と部材 の 形 状 を与 えて , そ の部 材 の断 面 に 生 じる応 力 を 算 出す る こ とが 多い . それ に 対 して機 械 設 計 で は, 丸 棒 に 引張 荷 重 が作 用 す る とき, そ の荷 重 に 耐 え る こ とが で き る断面 積 を 求 め る のが 普通 で あ る.す なわ ち ,応 力計 算 で は な く, 大 きさ を決 め る ことで あ る. そ のた め に は, 前 記 の式 をA=P/σ す れ ば よい. しか し, 断 面積Aは と書 きか え て計 算 応 力σ を 大 き くとれ ば小 さ くな り, また応 力 を 小 さ くとれ ば 断面 積 は大 き くな る.設 計 にお い て要 求 され る適 正 な断 面 積 を 求 め るに は , そ れ に対 応す る適 切 な 応 力を 用 い な けれ ば な らない . この適 切 な応 力 を 許容応力 とい う. 許 容 応 力 は ,荷 重 の 種 類, 材 料 の 性 質, 部 材 の形 状 や 大 きさ, 加 工 や環 境 条 件 な どに よっ て大 き く影 響 され る. こ こで は ,設 計 で用 い られ る許 容応 力に 及 ぼす 重 要 な項 目につ いて 考 え よ う. 1・3・1静 荷 重が 作 用 す る場 合 荷 重 の 種 類 を大 別 す る と, 静 荷 重 と動荷 重 に 分 け る こ とが で き る, 静 荷 重 は, 時 間 的 に変 化 しな い一 定 の 大 きさ の荷 重 で あ り, また動 荷 重 は 時間 とと も に大 きさが 変 化す る荷 重 で あ る. まず , 静 荷 重 が作 用 す る場 合 に つ い て考 え る. 荷重 が 固 体 に作 用 す る と, 材 料 力 学が 示 す よ うに, そ の断面 に次 の 主応 力が 生 じる. (1・1) 上 式 に お い て ,σx,σyお よ び τxyは 応 力 成 分 で あ る. 上 記 の 主応 力の 半 分, また は それ らの差 の半 分 が 最 大せ ん断 応 力 で あ り,次 式 に よ って与 え られ る. (1・2) また ,主 応 力 に 対応 す る主 ひ ずみ は, (1・3) で あ る . こ こ で ,Eは 1.最 縦 弾 性 係 数 ,ν は ポ ア ソ ン比 で あ る . 大 主 応 力説 あ る 部 材 に 静 荷 重 が 作 用 す る と き , そ の 断 面 に 生 じ る 主 応 力σ1お そ の 材 料 の 弾 性 限 度σEよ よ び σ2が り小 さ け れ ば , そ の 部 材 は 弾 性 的 に 破 損 し な い , と い う考 え 方 を 最 大 主 応 力説 と い う. 前 節 で 述 べ た よ うに , 弾 性 限 度 は 明 確 に 把 握 しに くい の で , そ の 代 わ りに 降 伏 点 σYま た は 耐 力 σTを 用 い る の が 普 通 で あ る . 最 大 主 応 力 説 に よれ ば , 弾 性 破 損 の 条 件 は , (1・4) それ ゆ え に ,許 容 応 力σAは 次式 を満 足す れ ば よい . (1・5) 2.最 大主 ひ ず み 説 これ は , 主 ひ ず み を 基 に した 弾 性 破 損 の 考 え 方 で あ る . す な わ ち ,式 (1・3) を 変 形 したEε1ま た はEε2が 降 伏 点 よ り小 さ け れ ば , 弾 性 的 に 破 損 し な い と い う説 で あ る. そ れ ゆ え に , 許 容 応 力 は 次 式 を 満 足 す れ ば よ い . (1・6) 3.最 大 せ ん断 応 力説 これ は, 式 (1・2)で 示 され る最 大せ ん断 応 力 が降 伏 点 の半 分 よ り小 さけ れ ば, 弾 性 的 に破 損 しな い とい う説 で あ る.す なわ ち, (1・7) そ れ ゆ えに ,最 大せ ん断 応 力説 に よれ ば ,許 容 応 力 は, (1・8) に よ って与 え られ る. 4.変 形 エ ネル ギ 説 こ れ は , 部 材 の 中 に 蓄 積 さ れ る全 変 形 エ ネ ル ギ が 降 伏 点 に お け る 変 形 エ ネ ル ギ よ り小 さ け れ ば , 弾 性 的 に 破 損 し な い と い う説 で あ る . い ま , こ れ ら の エ ネ ル ギ を 等 しい と お い て , 主 応 力 と 降 伏 点 の 関 係 を 求 め る と , (1・9) それ ゆ え に ,変 形 エ ネ ル ギ説 に よれ ば ,許 容 応 力 は, (1・10) 5.各 説 の適 用 条 件 上 記 の各 弾 性破 損 説 は ,実 際 の どの 材料 に も よ く当 て は ま る とは限 ら ない . そ こで, 実 際 の材 料 に つ い て行 った 破 断実 験 の 結 果 と,上 記 の 各式 が合 致す る か ど うか を 検討 す る必 要 が あ る. 実 際 に用 い られ る機 械 材 料 の種 類 は極 め て 多 い の で, これ らのす べ ての 材料 につ いて 実験 す る こ とは で き な い. そ れ ゆ え に , こ こでは 機械 材 料 の主 要 部分 を 占め て い る金 属 材料 につ い て検 討 し よ う. 金 属 材料 の特 性 か ら, こ れ を 延 性 材 料 とぜ い (脆 ) 性材 料 とに 大 別す る こ と が で きる. 前 者 は圧 延 加 工 され た材 料 であ り, 後 者 は 鋳造 な どに よ って作 られ た 材 料 で あ る. す な わ ち, 延 性 材料 は圧 延 材 で あ り, ぜ い 性材 料 は 鋳造 品 で あ る と考 え られ る. 最 大 主 応 力説 は , 鋳造 品の よ うなぜ い性 材料 の弾 性 破 損 の実 験 結 果 と よ く一 致 し, 延 性 材料 に は あ ま り適 合 しな い . こ の こ とか ら, 式 (1・4) はぜ い性 材 料 に適 用 す る のが 原 則 で あ る. 圧 延 加 工 され た延 性 材 料 の弾 性 破 損 の 実験 結 果 は ,最 大 せ ん 断応 力説 と変 形 エ ネ ル ギ説 に 合致 す る と され て い る. 特 に, 変 形 エ ネ ル ギ説 は ,最 大せ ん 断応 力説 よ りも,実 験 結 果 と よ り一 致 す る. しか し, 両 者 の差 は あ ま り大 き くな い
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