ていないために、人的被害や建物被害は小さいように がっているが、中でも被害が大きかった小千谷市と長 見えるが、そもそもの母数(住民数)が少ないから被 岡市の動向を見てみる。なお長岡市は中越大震災直後 害も小さく見える。また棚田が広がる中山間地域であ から10町村と合併しているため、旧長岡市と山古志 ることから、地すべりや河道閉塞などの地盤災害が多 村、川口町など4町村の人口変化を算出した(表2)。 発した。 震災発生直後の平成17(2005)年から平成26 こうした中越大震災の被害の特性を、 (公社)中越 (2014年 ま で の10年 で、 小 千 谷 市 は 約3,600人、 防災安全推進機構が取りまとめた「新潟モデルの発信」 長岡市は約8,900人の人口減少となっている。増減 の序言では、以下のように記述している。 率はいずれもマイナスでそれぞれ-8.6%と-3.1% ※ 「新潟モデルの発信」は、新潟県が平成26年度に行った「新 の減少となった。 潟県中越大震災復興検証調査会」と連携して、取りまとめら ちなみに日本の総人口は、平成17年が1億2,706 れたもの。平成27年3月に「新潟県中越大震災復興検証報 万人。平成26年が1億2,643万人で-0.5%の減少 告書」とともに新潟県から公表されている。 率。新潟県では約243.1万人から約231.4万人へと ●中山間地域を襲った未曾有の地震災害 平成16(2004)年10月23日に発生した中 越大震災は、集落が点在し、山の暮らしがひろが る中山間地域が大きな被害を受けた地震災害であ り、その規模や影響の大きさは、これまで日本社 会が経験したことのないものだった。 各所で発生した地盤災害は道路を寸断し、住宅 や農地をはじめ各種のインフラに大きなダメージ を与えた。また、大規模な土砂崩落や地すべりに よる河道閉塞、長く続いた余震は被災地の安全を 危うくし、復旧工事を困難にした。さらには豪雪 地帯という地域の特性から、まもなくやってくる 降積雪による影響や二次災害の危険性を視野に入 れる必要があった。 地震被害の大きかった山間部は過疎・高齢化が 進行する地域であり、被災によってそれが加速 し、集落機能の低下や復興の担い手不在も懸念さ れた。こうした様々な課題のなかで応急復旧や避 難対応を行い、さらに復興への歩みを始めなけれ ばならない。 日本は関東大震災や阪神・淡路大震災など都市 を直撃した大規模震災の経験はあるが、中山間地 域の大規模震災は中越大震災が初めての経験と いってもよく、災害対応から復興まですべてが未 経験といってもよかった。だれもが手探りで取り 組むことを余儀なくされた。 2 被災前に比べて人口は大きく減少 -4.8%の減少となっており、小千谷市は新潟県や全 国平均を上回る減少率を示している。一方で長岡市の 人口減少率は小さく、旧長岡市ではわずかながら増加 している。 しかし、旧山古志村の人口は2,107人から1,154 人とほぼ半減しているほか、被害が大きかったとされ る川口、栃尾、小国といった地域でも15%前後の人 口減少となっており、他地域を上回って人口減少が進 行している。 同様に世帯数の変化を見ると、旧長岡市や小千谷市 は微増、被害の大きかった旧山古志村が約35%の減 少、旧川口町は2.3%の減少となっている。一見する と山古志地域以外は変化がなく、被災前と変わらない ように見える。 しかし、これを1世帯当たりの人口で見るとすべて の地域で減少しており、2世代・3世代同居の世帯構 成から、核家族化や一人暮らし世帯の増加が進行して いることが読み取れる(表3)。 3 加速する高齢化 中越大震災の被災地は人口減少(過疎)とともに、 他地域よりも高齢化が進行する中山間地域とされてき た。実際に見てみると、旧山古志村は被災前に高齢化 中越大震災の発生からの10年間で被災地の人口は 率(65歳以上人口の占める割合)がすでに4割近く どのように変化しているのか。被災地は広範囲に広 に達しており、現在では47.5%とおよそ半数が65 28
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