目に見えるものと見えないもの

巻 頭 言
野が何であるのかは想像でしか言えないた
め不確実である。確実に減るものと不確実に
北海道経済連合会
関根
常任理事
久修
日本政策投資銀行
増えるものを比べれば 、当然前者が大きく見
えるため減少バイアスが強調されるのだ、
とい
うものだ(小峰隆夫著「日本 経 済 論の罪と
罰」
)
。
話は変わるが、高度成長が始まる前の19
5
0
目に見えるものと見えないもの
年代の初め、日本の就業者の半分程度は第
一次産業に従事していた。
また、当時の国民
人口の減少は経済にどのような影響を及ぼ
所得の約1/4は第一次産業によるもので
すのか。
「人口減少とともに国内の需要は減っ
あった。
これは現在のベトナムと似た構造であ
ていくのだから、
これからは海外を含め幅広い
る。
それから六十余年、高度経済成長、2度
需要を取り込んでいかなければならない」、
あ
の石油ショック、円高不況とバブル景気、失わ
るいは
「人口が減少してもそれは即座に需要
れた2
0年、
リーマンショックなど様々な波を乗り
が減少することを意味しない。
イノベーション
越えて日本経済は現在に至っている。GDPで
等を通じた新たな需要創出によりカバーできる
は測り得ない幸福感やワークライフバランスの
はずだ」
と様々な言説があるようである。
あり方等いろいろな問題はあるにせよ、経済の
両論とも真理を含んでいるのであろうが、後
発展とともに所得水準が向上し、生活が豊か
者の見解の一つとして、
「確実なものは不確実
になったことは確かであろう。生産性の上昇と
なものより大きく見える」
という説明がある。人口
需要の拡大が相互循環的に作用し、
ダイナ
減少で市場が縮小する分野は、例えば 子供
ミックな変貌を遂げながら日本経済は成長し
が減れば 子供服が売れなくなるなど現に存
てきたわけであるが、
その大きな原動力となっ
在する市場であるため、減少のイメージが認
たのは、やはり
「需要の創造」
だったのではな
識しやすい。一方、新たに拡大・創出される分
いか。
古くは三種の神器や3Cといった耐久消費
財に始まり、最近ではICT関連など人々の暮ら
しを大きく変える製品・サービスが需要を牽引
してきた。
ただ、
モノ・サービスが飽和し、人々
のニーズが多様化する現在、かつてのように
お手本となるものがなく、
どのようなモノ・サービ
スを人々が求めているのかを白紙状態の中で
網走市街地全景
考えなければならない困難さがあること、言わ
ば、
これまでとは次元の違った
「高度な需要創
造」
が必要とされていることは確かであろう。
200
0年代の初め
「携帯電話にカメラ機能は
道経連会報 No.237
CONTENTS
巻頭言
1
新しい委員会制度について
2
常任理事会レポート
4
経済施策説明
5
委員会等の動き
1
4
会員企業表彰
2
4
女性応援企業
2
5
会員企業紹介
2
8
会員の異動
3
0
新会員企業紹介
3
2
グループ活動報告
3
6
人事・労務相談日のご案内
4
3
道内経済の動き
4
4
ソースを最大限活用しながら、
それを地道に、
事務局人事
5
0
そして真摯に掘り下げることが、人口減少に
Face to Face
5
1
道経連カレンダー
5
2
まち探訪
5
3
北海道新幹線時代に向けて④
5
6
必要か」
というアンケートに大半の人は
「不要」
と答えたそうだ。後付けで考えると、今我々が
目にする現実とは全く反した結果である。
よく
引用されるスティーブ・ジョブズの
「消費者は
自分が欲しいものを形になるまで知らない」
と
いう言葉もこれを表したものだろう。
目には見えない新たな需要の芽がどこにあ
るのか、
まだ見ぬ財・サービスを如何に創って
いくのか、外部のネットワーク等自らの持つリ
立ち向かう一つの姿勢なのではないだろうか。
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