2015/11/6 一般的栽培管理 ☆収穫時期の栽培管理 出穂期:止め葉から穂が出る 乳熟期:籾を強く押すと乳状の液が出る。籾はまだ緑色 黄熟期:籾は固くなるが、強く押すと潰せる(この時期の前半を糊熟期と呼ぶ)。穂全体 の2/3の籾が黄色に変わった時 完熟期:穂軸が黄化して折れやすくなり、また脱粒しやすくなる 登熟:出穂から完熟に至るまで、子実(種籾)が生長していくこと 食用作物学II (イネについて) 6月上旬 第六回 栽培管理 作物学研究室 柏木純一 5月上旬 手刈り:エコフレンドリーだが重労働 •地際から刈る その後の乾燥作業(日干し)が容易だが、 重労働 •穂のみを刈る(穂首刈り) かがむ必要が無いので、作業は比較的楽 だが乾燥作業に難あり 栽培化があまり進んでいなかった頃のイネ は脱粒性が強かったため、植物体を大きく 揺らすことになる地際からの刈り取りは、 大きな収量ロスとなる.このため、穂首刈り が行われたと考えられる •玄米の成熟は、籾の黄化と並行して進むの で、籾色から玄米の成熟状況を判断できる。 •未熟籾(緑色)は2-3%/日で完熟籾(黄色)と なるので、これを目安に完熟籾が90-95%に なる日を推定する 収穫期 •黄熟期-完熟期が収穫適期(玄米の水 分含量は22-26%程度) •外観黄化の順番:籾(=小枝梗)→二次 枝梗→一次枝梗→穂軸→葉=穂重増加 が停止するとともに、籾が脱落しやすくな る(脱粒) 籾と小枝梗の黄化が同時に起こる=籾 が黄化した時には、葉で光合成をしてい ても光合成産物(ショ糖)を籾内に運べな い。 •一穂内でも開花時期に差があるため (ましてや水田内では)、玄米品質のピー クと収量のピークは一致しない。農業上 の収穫適期は緑色籾が10-15%残存す る時期となる 作物栽培の基礎,堀江武 乾燥 機械刈り:作業効率は高いが、環境負荷 も高い •バインダー:稲株を刈り取った後、適当な 大きさの束にまとめる •コンバイン:稲株を刈り取った後、脱穀す る。乾燥過程を経ず水分含量が高いイネを 脱穀するため、玄米に傷が付きやすいの で注意を要する 乾燥・貯蔵施設 刈り取った稲は,結束して露天で乾燥 させる →収穫時には25%前後の籾の水分を, 15-17%に下げる これにより次の作業である脱穀・籾摺 りが容易 近年はある程度乾燥したら早めに脱 穀→乾燥機で乾燥する方法が一般的 で,露天で乾燥させる期間は短くなっ た かつては,暖地で1週間程度,寒冷地 では半月ほど露天で乾燥した 乾燥の方法は、地方により様々な方法 がある 地干し:降雨が少なく、裏作を行わな い地域に多い 架干し:乾燥中の天候不良にもある 程度対応できる 11月4日の北大水田 9月中旬 6月下旬 収穫方法 収穫 収穫期の決定 •(品種や栽培方法にもよる)出穂から完熟 での日数は、積算温度でほぼ決定する (950-1050℃=約35-50日) 8月上旬 稲作大成、松尾ら編 作物栽培の基礎,堀江武 米の貯蔵:日本では玄米の状態で保 存するのが一般的.これは,貯蔵性で は籾の方が優れるが流通の点から不便 なため(玄米と比して容積で約2倍,重量 で約1.3倍).米穀検査を受けた玄米を 包装して保存. 近年は,カントリーエレベーターが普 及し,産地では籾で保管 仕上げ乾燥:露天乾燥後脱穀した籾 (水分含量15-17%),コンバインで脱穀し た籾(生籾)(水分含量20-27%)を,長期 保存したり,籾擦りするために行う.火 力通風乾燥機で,水分含量が14-15%に 調整する.高温(40℃以上)での乾燥は 乾燥むらや,胴割れ米やくだけ米が増 加するので注意 カントリーエレベーター:大規模共同乾 燥調製貯蔵施設.農家が搬入した生籾 を乾燥し,大型貯蔵槽(サイロ)に貯蔵 (2500トン程度).籾擦り(4トン/1hr),計 量,包装,出荷も行う 1 2015/11/6 脱穀 籾すり・精米 穂から籾を離脱させて,回収する作業 脱穀後の籾は,藁片などを含むので 風選をして取り除く,こうして得られたも のを精籾と呼ぶ 籾すり: もみ殻(外頴と内頴)を取り除く(粗玄米) もみすり歩合:籾→粗玄米の割合(重量で 75-85%,容量で50-60%) 選別作業 1.9mmの篩で屑米を除いたもの(精玄米) 搗精(精米): 胚とぬか層をとりのぞき,胚乳だけにする 出荷時の籾の水分含量:籾=14.5%,玄 米=15%(農水省規格) コメの水分含量が低すぎる→炊飯時に米 粒が急激に吸水してひび割れ→デンプンが 流出→炊きあがりがベタベタ 水分含量が高すぎる→カビ,雑菌の繁殖, 発芽などが生じるため保管が困難 現在は,脱穀機で脱穀と風選を行うこと ができるので,一気に精籾を得ることが できる http://pub.ne.jp/kounotori/?entry_id=2451983 不完全米 籾すり機・精米機 完全米:粒形・大きさ・色沢に問題のない米粒 腹白米・心白米・背白米・基白米・横白米:胚 乳各部のデンプン蓄積が不十分のため,乾燥 過程でその部分に微小な空気スペースが生じ, その乱反射で各部位が白く見える.心白米は 酒米の特徴でもある 青米:果皮に残った葉緑素により緑色に見え る.早刈りした時に,開花の遅い籾に生じるが, 精米で果皮を除去後は品質上問題ない 胴割米:ひび割れしている米粒.遅刈りして 雨にあたりすぎたり,生籾の高温乾燥で生じる. 精米すると砕け米になる 胴切れ米・腹切れ米:粒の発達途中の一時 的低温や旱魃で生じる.くびれが深いと精米時 に砕け米となる 先細米・ねじれ米:米粒がねじれているもの 出穂頃の障害で,籾がゆがんだりしていた場合 に生じる 茶米:粒が褐色で斑紋がある.籾から菌が侵 入して果皮で繁殖したために生じる 焼け米:茶米が悪化したもの しいな:登熟不良により生じる 籾すり機の構造:籾をゴムローラで押し潰す ようにして,籾殻を玄米から剥離させる.玄米 がダメージを受けず,籾殻が剥離するように, ロールの隙間を調節する. 精米機の構造:螺旋状のシャフトで篩構造の 筒に玄米を送りこむことにより,送りこんだ玄米 全体に圧がかかる.この 状態でシャフトが回転する ことにより玄米同士が擦れ 合い,玄米表面のぬか層 が擦れ落ちる.ぬかは篩 の目を通じて排出される. 摩擦熱で玄米の温度が上 昇しないように,冷却ファ ンなどを使用する. 食用作物、星川清親著 温暖化とイネ 温暖化ガス(Greenhouse Gas): 二酸化炭素(CO2),メタン(CH4),亜 酸化窒素(H2O),六フッ化硫黄(SF6), ハイドロフルオロカーボン(HFC), パーフルオロカーボン(PFC) ↓ 温暖化→高温登熟障害 開放系大気CO2増加(FACE)実験 (FACE=Free-Air CO2 Enrichment) 写真で黒く見えるFACEリングから高濃度のCO2を吹き出して, リングに囲まれた区域のCO2濃度を,周囲の通常大気より常 に高く(550ppm←今世紀中~末の予想される大気中CO2濃 度)保っている 出穂後20 日間の日平均気温が 23-24℃超→白未熟粒の発生 (27℃超えると発生歩合が20%以上 に増加) 出穂後4-12 日頃の高温(昼 /夜温=36/31℃) →死米 CO2と光合成 葉肉細胞内の二酸化炭素濃度が増加すると,光合成 速度は増加する ↓ 生長が促進される(酵素濃度が制限要因になるまでは) ↓ バイオマス収量が増加する 大気中の二酸化炭素濃度が増加すると気孔は閉鎖す る ↓ すると,どうなる? 大気中二酸化炭素が増加すると イネの収量はどうなるのか? http://www.s.affrc.go.jp/docs/report/report23/no23_p7.htm Field Crops Research 115 (2010) 165–170 2
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