液体・固体 He 中の Eu 原子分光 レーザー物理学研究室 和田尚大 液体 4He には、特徴的な相転移が存在する。常流動ヘリウムを冷却していき、蒸気 圧でλ点の 2.17K を超えると超流動ヘリウムとなります。また、約 30 気圧まで加圧 していくと固化します。固体相には、bcc 相、hcp 相、さらに加圧していくと fcc 相が 存在します。超流動液体ヘリウム中に中性原子を導入すると、パウリの排他律により 周囲のヘリウムと中性原子の間に反発力が働き、バブル状の微小な真空領域を形成す る[1]。この現象は液体ヘリウム中だけでなく固体ヘリウム中でも生じると考えられて います。そして、ヘリウム中の原子のスペクトルを調べることにより、バブルの構造 を明らかにするだけでなく、超流動性といったヘリウム自身の性質も明らかにされる と期待されています[2]。 我々は、超流動ヘリウムの特徴的なスペクトルが固体中でも現れるか、また加圧に よる変化を調べヘリウムの物理的な性質を調べることを目的としてヘリウム中で Eu 原子の分光を行っています。ランタノイド原子である Eu 原子の内殻遷移は、周りと の相互作用が弱いため鋭いスペクトルとなり、スペクトルの線形やピークシフトの測 定に優れています。これまでに、液体ヘリウムと hcp 固体ヘリウム中でのスペクトル や、温度依存や圧力依存を測定してきました[3]。bcc 相は、hcp 相よりも対称性が高 いため精密測定が期待されています[2]。今回、bcc 固体を作成し、bcc 固体中での Eu 原子のスペクトルとスペクトルの圧力シフトについて発表します。 [1] 松浦雄二郎 . 高見道生 , “超流動ヘリウム中の原子分子のレーザー分光”, 日本大学文理学部自然科学研究所研究紀要 , No40, 185-189 (2005) [2] P. Moroshkin et al, Phys. Rep. 469, 1 (2000) [3] 東川優理奈,“固体ヘリウム中の原子の分光学的研究”, 富山大学大学院 理工学教育部 物理学専攻 2013 年度修士論文
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