第 章 層

第 章 層
層の概念
本節においては 層の概念について述べる
以下 本書において考える位相空間は特にことわりない限りハウ
スドルフ位相空間であるとする
定義
を位相空間とする このとき 位相空間 と
から の上への連続写像 があって が局所同相写像であるとき
対
を 上の層という 各
に対し
を茎
という
例
を位相空間とし
を集合とする
には離
散位相を入れておく
を直積位相空間とし
を
によって定義される自然な写像とすると
は
上の層になる これを定数層といって
と書くことがある
を複素解析多様体とし 各
に対し
を のあ
る近傍で正則な関数の における芽のつくる環とする このとき
を
の直和とする
を
なる
ように定義する
に適当な位相を定義して 写像 が連続かつ局
所同相になるようにしよう
を の任意の開集合とし
は
上の正則関数全体のつくる環とする
とする 各
に対し
を において によって定まる芽とする このとき
によって の部分集合
を定義する 今
の各開集合 と
によって定義される の部分集合
の族を の
各
開集合の基として
に位相を定義することができる このとき
はハウスドルフの分離公理を満たしている これによって 実際に
は連続かつ局所同相になる したがって 対
は層になる こ
の層を 上の正則関数の層といい 単に と表す また
を解析
関数の層ということがある 上に定義された の位相は
の開集
合 と
に対し 写像
を連続にす
る最強の位相である
定義
を位相空間とし
を 上の層とする
を
の任意の部分集合とする このとき 連続写像
で
を満たすものを 上の切断という
上の切断
全体の集合を
あるいは
と表す
注意
層の定義より 任意の点
に対し
の
ある近傍があって その上での切断で を通るものが必ず存在する
ことがわかる 更に 十分小さい
の近傍で考えれば そのよう
な切断は一意に定まることがわかる
次に アーベル群あるいは加群などの代数的構造をもった層につ
いて述べる
定義
を位相空間とし
を 上の層とする この
が成り立つこ
とき 層 がアーベル群の層であるとは 次の
とをいう:
各
に対し 茎
はアーベル群である
各
に対し
定義される群演算はファイバー積
像である ここで
バー積
は
上の二つの層
から
と
によって
への連続写
のファイ
によって定義されているものとする
アーベル群の層のことをアーベル層ということがある
定義
を位相空間とし
を
とき 層 が単位的環の層であるとは 次の
とをいう:
各
に対し 茎
上の層とする この
が成り立つこ
は単位的環である
各
に対し
定義されるアーベル群の演算は
から
によって
への連続写像
である
各
に対し
定義される乗法演算は
から
によって
への連続写像である
例
は単位的環で離散位相を与えられているとする 位
相空間 に対し
を例
の層とする このとき
は X 上の単位的環の層である この層を単に と表すことがある
定義
を位相空間とし
を
を 上の単位的環の層とする このとき 層
るとは 次の
が成り立つことをいう
各
に対し
は
上の層とし
が 加群の層であ
加群である
各
に対し
定義されるアーベル群の演算は
から
によって
への連続写像
である
各
に対し
義されるスカラー乗法は
から
によって定
への連続写像である
例
での
を例
加群の層 を
の単位的環とするとき 定義
加群の層という
の意味
今後 本書で考えるすべての層は 少なくともアーベル群の構造
をもつ層であると仮定する アーベル群の層は 加群の層と考えら
加群の層に限って考えるこ
れるから 今後は特に断りない限り
とにする
いま 層 を 上の 加群の層とする
の任意の部分集合 に
対し
を定義
の切断の集合とする このとき
は
加群になる
における演算は次のように定義さ
れる 任意の
任意の
に対し
特に
対し
が
加群の層であるとき
の代わりに
に
によってスカラー乗法を定義すればよい 今後 加群の層としては
特に断りない限り 加群の層 を考えることにする このとき
上の切断全体の集合
は 加群になるから これを切断加群
という
の部分集合
が
であるとき 制限写像
は準同型写像になる さらに 制限写像は次の
を満
たす
恒等写像
のとき
逆に 切断加群
して 前層の概念を得る
と制限写像
のもつ上の性質を公理化
定義
次の
を位相空間とし
が成り立つとする
各開集合
に
を単位的環とする このとき
加群
が対応させられている
の任意の二つの開集合
で
なるものに対し
準同型
が対応していて 次の
を
満たす
なる任意の開集合
このとき 体系
を 上の
制限写像といい
に対し
のことを準層ということがある
例
の開集合
に対し
加群の前層という
を
と表す また 前層
に対し
とすると
は前層になる ここで 制限写像は関数の自然な
制限を与えるものとする
の各開集合 に対し
を 上の正則関数の空間
とすると
は前層になる ここで 制限写像は関数の自然な
制限を与えるものとする
上の例のように
上の前層
において 制限写像
を略して前層
といい表すことがある
上の前層
が与えられているとき この前層から次
の方法によって層を作ることができる 各
に対し
によって
を定義する すなわち
は商空間
として定義される ここで
に対
し 関係
が成り立つとは ある開集合
で
を満たすものが存在して
が成り立つことをいう この
関係は同値関係になるから 上の商空間が意味をもつ
を にお
の
における像を の における芽とい
ける茎といい
い
と表す このとき
を
の直和と
し
と定める
の各開集合 と
に対し
写像
を
によって定義する このとき どの
をも連続にする最強の位相を に定義すると
は 上の層になる この層 を前層
から誘導された層と
いう
上の層 があるとき 切断加群の族
は の開集合
は前層になる この前層
から誘導された層を上の の
ように作ると これは初めに与えられた層 と一致する
しかし 前層
が与えられているとき これから誘導された
層 をつくり その切断加群の族
のつくる前層を考える
と これは 一般に 初めに与えられた前層
とは異なる 前
層
が前層
と一致するためには 次の局所化の原
を層とみなし
理が必要十分である すなわち これは前層
てよいための条件である いま 前層
が層になるとき これ
ということがある
を層
定理
位相空間 上の前層
が 加群の層である
ためには すなわち 前層
から誘導された 加群の層 に
対し
は の開集合 が成り立つためには 次
の条件
が成り立つことが必要十分である
の開集合 の開被覆
が与えられているとす
が 任意の に対し 条件
を満たすな
る
らば
の開集合 の開被覆
する 各 に対し
に対し 条件
ある
が存在して
が与えられていると
が与えられていて すべての
が満たされるならば
が成り立つ
定理
位相空間 上の 加群のつくる前層
が定
の条件
を満たしているとき 前層
の層化 を
理
次のように定義できる
の開集合 の開被覆
に対し 対
の族
を考える そのような二つの族
と
は 条件
は任意
を満たすとき 同値であるといって
と
表す 自分自身と同値であるような族
の全体の集合
において 上に定義した同値関係は同値律を満たしている
このとき
を上の同値関係によって類別した 加群を
と表す このとき
の二つの開集合
に対し 制限
写像
を
に対し
を対応させ
る写像として定義する ここで
は
を含む
同値類を表す このとき
であって 前層
は層になる この層を前層
の層化 という
証明 において 関係
に対する条件
同値関係であることは 前層
と定義する
が
より従う
とし
は
の開被覆とする このと
き
とおくと
を含む同値類
は
の元を定める 条件
によって この対応は単射であるから
と
を同一視することができる この意味で
は
の部分加群であると考えられる 実は このとき
が
と一致するためには 定理
の条件
の他に条件
が成り立たなければならないのである しかし 今は 条件
は
仮定していない
とする
の任意の代表元を
とする このとき
が各 に対して成り立つ
実際
とおくと
が成り立っている
によって
が従う ゆえに
が成り立つ
このとき 以下に示すように前層
は層であることが
の層化 である
わかる この層が求める
そこで 前層
が定理
の条件
を満たすこと
を示す
が
の開被覆
に対し
を満たし
だから
ているとする
であることがわかる ゆえに
が成り立つ
次に
を の開被覆とする
対し
各
は 開被覆
に
を満たしているとする
と
によって
と定義されている このとき
は各
であるから
が成り立つ
は
は
の元
の開被覆であるから 族
を定める このとき
が成り立っているから 各 に対し
が成り立つ
るから
が従う ゆえに 条件
は条件
を満たすことが上に証明されてい
が成り立つことがわかる
注意
定理
の条件
および定理
におけ
る開被覆は必ずしも可算とは限らない任意の開被覆と考えているこ
とを注意しておく 例
例
の前層
と
はすべて局所化の
原理を満たしていて層になることがわかる これらの前層を層とみ
なすとき それぞれを
と表す
は例
の層と一致する
この例のように 関数の作る前層
は局所化の原理を満た
していることが多い しかし
上の 乗可積分関数のようなも
をつくると 条件
を満たしているが 条件
のは 前層
は満たさない 前層
から誘導される層は 局所 乗可
積分関数芽の層
になる したがって 一般に 関数空間の族は
前層になるということによって特徴付けられる そのうち 特に良
い性質を持つ関数の空間のつくる前層は層になる 本書で考察する
関数概念の一般化である超函数も局所化の原理を満たすようなもの
として特徴付けられる
定義
位相空間 上の 加群の層
と
が与
から
への写像 が準同型であるとは 次
えられているとする
の
が成り立つことをいう:
は
から
への連続写像である
が成り立つ
各
ある
に対し
は
加群の準同型で
上の二つの 加群の層
と
に対し
が の部
が存在することをいう
分層であるとは 単射準同型
また
加群の層
が 加群の層 の商層であるとは
か
ら
への全射準同型
が存在することをいう
一般に
加群の層
の準同型
が与えられている
加群の層
が定義できる
とき
これは 各
に対し それぞれ
を茎とす
る層である
定義
と
位相空間
上の二つの
が与えられているとき
への準同型であるとは 次の
の各開集合
ある
加群の前層
が
から
が成り立つことをいう
に対し
の各開集合
で
が成り立つ
は準同型で
となるものに対し
このとき
上の 加群の層 と
が存在することと 切断加群の前層
準同型
値である
定理
れ
の間に準同型
と
の間に
が存在することは同
位相空間 上の三つの 加群の前層
が与えられていて それらから誘導された層をそれぞ
とする このとき 任意の開集合 に対し
加群の列
が完全ならば 層の列
は完全である
特に
加群の層
は前層
が
加群の層 の部分層のとき 商層
から誘導された層と同一視できる
次に 台の族の概念を説明する
定義
位相空間 上の 加群の層を
上の切断
の台とは 集合
ると定義し
と表す
は
とする 開集合
のことであ
の閉部分集合である
注意
が関数の層である場合 その切断 について
であるとは
が のある近傍で となることであって
単に関数の値が において になることとは異なることを注意して
おく
定義
位相空間
族 を台の族という
において 次の
を満たす集合
ならば
かつ閉集合
ならば
が
は閉集合である
に対し
の部分集合のとき 台の族
とすると 集合族
は再び
ならば
に対し
の中での台の族である また
とすると 集合族
は の中での台の族である
を 上の 加群の層とし
を における台の族として
とおくと
の定義により
は 加群になることがわか
る したがって
は
上の 加群の層の圏から 加群の
圏への共変関手と考えられる すなわち 次が成り立つ
定理
位相空間
が完全ならば
上の
加群の層の列
加群の列
も完全である ここで
は
における台の族である
関手
を完全にするような 加群の層 が層係数のコホ
モロジー論において重要である これについては次節で考察する
層係数のコホモロジー論
本節においては 位相空間
上の脆弱層の概念について述べる
定義
位相空間 上の 加群の層
の任意の開集合 に対して
加群の列
が脆弱であるとは
が完全であることをいう この条件は
上の任意の切断が 全体
の上の切断に延長できることと同値である 層 が脆弱であること
を軟弱あるいは散布的であるということがある
定理
が完全で
位相空間
が脆弱ならば
は完全である ここで
系
が完全で
系
上の
位相空間
と
は
加群の列
における台の族である
上の
が脆弱ならば
位相空間
上の
加群の層の列
加群の層の列
も脆弱である
加群の層の列
が完全で 各
が脆弱ならば
は完全である ここで
は
加群の列
における台の族である
次に 位相空間 上の任意の 加群の層 に対し 脆弱層によ
る分解が存在することを示す 以下の構成はゴドマンによるもので
ある
の開集合 に対し
の写像で
と定義する 系
したがって 前層
が成り立つ 層
層の列
を満たす
は前層であって 局所化の原理を満たす
から誘導される層を
と表すと
は明らかに脆弱である 定義より
加群の
は完全であるから
が完全になるように
を構成し
が完全になるように
の層
加群の層
加群の層の列
を構成する
上と同様に
を構成する この操作を続けて
加群
を構成すれば
はすべて脆弱で
は完全になる これを の標準脆弱分解といい
これを定理としておく
と表す
定理
ゴドマン 位相空間
対して標準脆弱分解
定理
位相空間
が完全であれば
上の
加群の層の列
上の任意の 加群の層
が存在する
に
加群の層の列
加群の層の複体の列
は完全である 次に
加群の層の標準脆弱分解を用いて 層係数のコホモロジー
群を定義し そのいくつかの性質を調べる
定義
を位相空間
の標準脆弱分解とする
を
に対し 等式
上の 加群の層とし
をそ
における台の族とする このとき
によって
を定義する
これを に台をもつ を係数とする 次コホモロジー群という
また これを 係数 次コホモロジー群ということがある
このとき
は 関係式
によって計算される ただし
とする
が
のすべての閉集合からなる台の族のとき
に
と表す
このとき 次が成り立つ
定理
は における台の族とするとき 位相空間
の 加群の層に対して次の
が成り立つ:
列
が完全ならば
は完全である
可換図式
加群の列
を単
上
において 二つの行が完全であれば 図式
も可換で 二つの行は完全である
が脆弱ならば
次に スペクトル系列による考察によって 定理
の条件
を満たす関手
の一意存在を証明する これによって層係数
コホモロジー群
は の脆弱分解を用いて計算すればよ
いことを示す
まず 層のつくる複体の概念を述べよう
位相空間 上の 加群の層の列
と準同型
において
が成り立つとき
体であるという これを
このとき 商層
加群の層の列
と表す
によって この複体の 次コホモロジー群
し
とおく このとき
は複
を定義する ただ
において 準同型
から誘導される
の線形写像 と
は条件
を満たし
は 加群の二重複体
になることがわかる この二重複体に例
のようなフィルター
付けが与えられているとして スペクトル系列の最初から2項目を
計算すると次が得られる
定理
上の記号を用いると次が成り立つ:
特に
に台をもつ 係数のコホモロジー群は標準脆弱分解よりももっ
と一般な分解を用いて計算することができる すなわち 次が成り
立つ
定理
を位相空間 上の
加群の層の複体
ける台の族とする
あるとする すなわち 列
は完全とする このとき
が成り立つならば
加群の層とし
を にお
が の分解で
が成り立つ
証明 定理の仮定によって
が成り立つ このとき 定理
によって
が成り立つ ゆえに
この定理によって 定理
の性質
を満たす関手
はただ一つしかないことがわかる その意味で これらの性質
を層係数コホモロジー論の公理ということがある また 層
係数コホモロジー群
を計算するためには
の脆弱分解
が求まれば十分であることがわかる
次に ある種の台の族に対して 軟層による分解を用いて層係数
コホモロジー群が計算できることを示す
まず 軟層の定義とその性質について述べる
定義
の条件
台の族 がパラコンパクト化であるとは 定義
および次の条件
を満たすことをいう:
ならば
はパラコンパクトである
ならば
の近傍で
の元であるものがある
台の族 がパラコンパクト化であることを
とがある
例
次の
であると略記するこ
が成り立つ: 位相空間 がパラコンパクトであるとき
の閉集合全体
の族 はパラコンパクト化する台の族である
位相空間 が局所コンパクトであるとき
のコンパクト
集合全体の族 はパラコンパクト化する台の族である これ
を c と表すことがある
定義
位相空間 上の 加群の層
の任意の閉集合 に対して
加群の列
が軟層であるとは
が完全であることをいう この条件は
上の任意の切断が 全体
の上の切断に延長できることと同値である また 層 が軟層であ
ることを柔軟層であるということがある
さらに 台の族 が
のとき
加群の層 が 軟層である
の任意の元 に対して 列
が完全であることをい
とは
う また 層 が 軟層であることを 柔軟層であるということが
ある
補題
は位相空間
上の 加群の層であるとする
を局所有限な
の閉被覆とする 各 に対し
が与えられて すべての
に対し
が
成り立つならば ある
が存在して
が成り立つ
補題
の部分集合
は位相空間 上の 加群の層であるとする
はパラコンパクトな近傍からなる基本近傍系をもつと
する このとき 任意の切断
れる
は
のある近傍へ延長さ
これは補題
を用いて証明できる
補題
の条件を満たす位相空間 とその部分集合
て次の
が考えられる
がパラコンパクトならば
の例とし
は任意の閉部分集合でよい
のすべての開部分集合がパラコンパクトならば
の部分集合でよい
は任意
ここで
が距離付け可能であれば
のすべての開部分集合は
を
パラコンパクトである すなわち 距離付け可能な は条件
満たす
が局所コンパクトで 第二可算公理を満たすならば
は距離
付け可能である
したがって 局所コンパクトで 第二可算公理を満たす は条件
を満たす
定理
位相空間 の台の族
群の脆弱層は 軟層である
例
例
における
定理
上の
が完全で
が
軟層であれば
上の
が
ならば
上の
加
関数の層 は軟層である
加群の層の列
加群の列
は完全である
定理
位相空間
上の 加群の層の列
が完全で
定理
上の
と
が
の台の族
軟層であれば
位相空間
加群の層 が
が成り立つ
は
とする このとき
も
軟層である
の台の族 は
とする このとき
軟層であれば 任意の
に対し
したがって 位相空間 の台の族 が
であるとき 定理
によって
軟層分解を用いて層係数コホモロジー群
を
計算することができる
上の
次微分形式のつくる層
は ポアンカレの補題に
上の定数層 の柔軟分解を与える:
よって
これを用いて 次のド・ラムの定理を証明できる
定理
ド・ラムの定理 上の記号を用いると
が成り立つ
次に 位相空間
べる
上の層
の
の部分集合への制限について述
定義
位相空間 上の 加群の層
の任意の部分集合とすると
は
になる これを の への制限という
ここで
このとき
位相である
定理
き 次の
を考える
を
上の 加群の層
の射影
位相構造と代数構造はすべて 埋め込み
から誘導されるものであることを注意しておく
が成り立ち
の位相は を連続にする最弱の
を位相空間
が成り立つ:
上の
加群の層とする このと
が脆弱であれば
弱である
の任意の開集合
の開被覆
ば も脆弱である
に対し すべての
に対し
も脆
が脆弱であれ
定理
位相空間 の開集合はすべてパラコンパクトであ
るとし
を 上の 加群の層とする このとき
が脆弱ならば
の任意の部分集合 に対し
も脆弱である
同様の定理が柔軟層に対しても成り立つ
定理
を位相空間
が成り立つ:
が柔軟層であれば
軟層である
上の
加群の層とすると 次の
の任意の閉集合
に対し
を の局所有限閉被覆とすると すべての
が柔軟層であれば も柔軟層である
も柔
定理
位相空間 の開集合はすべてパラコンパクトとし
を 上の 加群の層とする このとき
が柔軟層ならば
の
任意の局所閉集合 に対し
も柔軟層である
定理
位相空間
加群の層とする さらに
近傍 をもつとする
は
このとき
はパラコンパクトとし
は 上の
の各点は次の条件
を満たすような
に含まれる の任意の閉部分集合上の
上の切断に延長される
の任意の切断
は柔軟層である
定理
位相空間 の開集合はすべてパラコンパクトであ
るとし
を 上の 加群の層とする このとき
の任意の部分
集合 に対して
が成り立つ ここで 右辺の帰納極限は
関してとるものとする
定理
し
は
とする
し
を含むすべての開集合に
マイヤー ヴィエトリスの定理 を位相空間と
上の 加群の層とする さらに
は における台の族
と
は の閉部分集合で
を満たすと
とおく このとき
加群の列
は完全である
証明 ブレドン
第Ⅱ章
節参照
層係数の相対コホモロジー論
本節において 層係数の相対コホモロジー論について述べる こ
の節で考える位相空間 のすべての開集合はパラコンパクトであ
ると仮定する
は の任意の部分集合を表すとし
は 上の
加群の層を表すとする
定義
いま
とおく ここで 台の族
は
かつ
は
の閉集合
であるとする この
を に台をもつ 係数相対コホモ
ロジー群という また
を
あるいは
と表して 対
に関する 係数相
対コホモロジー群という
が開集合のとき
の は
になる その場合の
の定義は
カルタンによるものである
が閉集合あるいは局所
閉集合のときは 定理
の
~
において示された層係数相
対コホモロジー群
の定義は佐藤と
ダロタンディクに
よって与えられた
定理
の
において示された層係数相対コホモロジー
群の性質の他に 次の定理が成り立つ
定理
次の
切除定理
の部分集合
集合あって
で
が成り立つ:
は の部分集合で
とし
において閉じているものはすべて の閉
とする このとき
が成り立つ:
は
の部分集合とすると
加群の列
は完全である
は
の部分集合で
は完全である ここで
ことができる
注意
次の
とすると
自身も
の部分集合で置き換える
が成り立つ が任意の位相空間のとき
が
定理
の
はやはり成り立つ
位相空間
上の定理
加群の列
の閉集合であれば 上の
がパラコンパクトであれば
の
は成り立つ:
次に 層
の次元の概念を導入する
定義
層
の次元を次の
が開集合のとき
のように定義する:
上の
加群の層
に対し 長さ
のある脆弱分解
完全
が存在するとき 層
の脆弱次元が
以下であるといって
と表す
上の
加群の層
に対し 長さ
のある柔軟分解
完全
が存在するとき 層
の柔軟次元が
と表す
例
次の
が脆弱
が柔軟
定理
次の
が成り立つ: は同値である:
任意の台の族
に対して
任意の閉集合
に対して
以下であるといって
の拡張定理 任意の開集合
に対して
加群の列
に対して
加群の列
は完全である
また 次の
は同値である:
なる台の族
任意の開集合
に対して
に対して
の拡張定理 任意の閉集合
は完全である
系
次の不等式が成り立つ: 定理
次の
は同値である:
の各点
また 次の
のある近傍
に対して
は同値である:
定理
の各点
のある近傍
上の
に対して
加群の層の列
は完全とする このとき
らば
成り立つ
な
また 柔軟次元についても同様のことが
のとき この定理
は系
および定理
と同じ
である
系
次の
の射影分解
が成り立つ:
を満たす
加群の層
の直積による
が存在すれば
射影分解
が存在すれば
を満たす
加群の層
の直積による
の
次に 層係数相対コホモロジー群から誘導された導来層の概念に
ついて述べる
定義
を の部分集合とし
であるとするとき 自然な射
は
の開集合で
が定義される すなわち これは 脆弱分解
を用いて 射
によって定義されている このとき
ならば
が成り立つ したがって 族
ら誘導された層を
と表して
という
これは 佐藤の記法によれば
の層といわれたものである ここで
と定義されている
は前層をつくる これか
に台をもつ の 次導来層
と表され
は
の
分布
注意
であるから
上の層
は 上の層であると見なしてよい このとき これを 上の層と考
えたとしても 同じ記号
を用いることにする
に対し
が成り立つ したがって 導来層
て 最も興味ある情報を与える
補題
次の
が
は
のときに対し
が成り立つ:
の開集合ならば
が成り立つ
を台の族とすると
が成り立つ ここで
とする
を
の脆弱分解とすると
が成り立つ この意味で導来層の名前がある
が脆弱で
が閉集合であれば
は脆弱である
が柔軟で
が開集合であれば
は柔軟である
は関手であって 射
より射
が誘導される
系
上の
加群の層の列
が完全であれば 導来層の列
は完全である
次に
が開集合の場合を考える これは カルタンとゴドマンに
よって研究された
定理
に対して
が開集合ならば 関手
が成り立つ:
定理
が開集合で 台の族
が成り立つ:
が開集合のとき
加群の層の列
は完全である
は
とする このとき
は完全である ここで
定理
が開集合で 台の族
とき
加群の列
が
であるとする この
は完全である
系
は局所コンパクト位相空間とし
とする 台の族 は
は
とする このとき
は開集合
のコンパクト集合
加群の列
は完全である
次に
が閉集合の場合を考える これは佐藤とグロタンディク
によって研究された
定理
が閉集合で
が台の族とする このとき
とおくと
は
に同型である
はあるスペクトル系列の第二項であって その極限
のあるフィルター付けに同伴する次数付き加群
証明 いま
を脆弱分解とし 二重複体
を定義する 定理
によって
一方
ここで
が閉集合だから
ゆえに
が脆弱になることを用いた
ゆえに
より結論が従う
定理
は閉集合とし
が成り立つ:
は台の族とする このとき 次の
ならば 任意の開集合
に対し
かつ
が成り立つ
ならば
が成り立つ
次に
が局所閉集合の場合を考える
定義
が局所閉集合であるとは
の開集合
の閉集合 が存在して
と表されることをいう
系
を開集合とし
であるとする このとき
と
を閉集合として
が成り立つ
これより 定理
と定理
の結果は 台の族 が
で
が局所閉集合である場合に対しても同様に成り立つことがわかる
次に 純余次元性について述べる
定義
るとは
の部分集合
が層
に関して純
余次元であ
が成り立つことをいう
の開集合は 任意の層
に関して純 余次元である
定理
の閉集合 が層
とする このとき 任意の部分集合
に関して純
に対して
余次元である
が成り立つ
系
は の部分集合で
であるとする
は
閉集合であって 層 に関して純 余次元とする このとき 次の
は同値である:
は
は
定理
るとする
のとき
定理
対して
ならば
に関して純
余次元である
に関して純
余次元である
上の 加群の層 は
であ
は閉集合で
に関して純 余次元であるとする こ
は脆弱である
は
の部分集合とする
の任意の開集合 に
および
が成り立つ
かつ
は に関して純 余次元である
例
定理
の仮定を満たす と の例として次のも
のがある
は
の疎な閉集合とする このとき
上の
関数の層 実解析関数の層
上の正則関数の層
および
上の単独楕円型微分作用素 の解の層
は定理
の条件を満たす
この節の終りに 被覆に関する層係数相対コホモロジーの理論を
述べる
の部分集合 は閉集合または開集合とする
は
の被覆で
とする
の部分集合
は
の被覆で
となっているとする ここで
次の仮定をおく
仮定 次の
が成り立つと仮定する:
が閉集合ならば
は開被覆とする
が開集合ならば
は局所有限な閉被覆とする
定義
を
とおく ただし
式
において
しているとし
上の
加群の層とする いま
は
ならば
であるとする
とする
に交代的に依存
の元
を相対余鎖という 余境界作用素 を 関係式
によって定義する ここで
は添数 の消去を表す
が成り立つことは容易にわかる したがって
このとき
は複体をつくる このとき
とおいて それぞれの元を相対余輪体 相対余境界という このとき
とおいて これを被覆
に関する層 係数の相対コホモロジー
群という
これが 適当な条件の下に 層 係数の相対コホモロジー群
と同型になることを示す
補題
が成り立つ
同型 補題
上の
が成り立つ
定理
加群の層
が脆弱であれば
ルレイ 条件
が満たされるならば 同型
が成り立つ
これによって 層係数の相対コホモロジー群が層係数のチェック
の相対コホモロジー群によって計算できることが示された
定理
に対し 条件
を層の射とする
が満たされるならば
定理
する このとき
このとき
に対し 次の図式は可換である:
で
が
に対し 条件
を覆うと
が満たされるならば
ただし 射
は制限を表す
に対し 次の図式は可換である: