成長期のスポーツ傷害

平成24年度
第2回
岡山県バスケットボール協会 医事科学委員会講習会
成長期のスポーツ傷害
倉敷平成病院
整形外科
平川
宏之
バスケットボールにみられる疾患
スポーツ外傷
 突き指
 足関節捻挫
 膝関節捻挫
(前十字靱帯 半月板損傷)
スポーツ障害
 腰痛
(腰椎椎間板ヘルニア 腰椎分離症)
 下腿痛 (シンスプリント)
 膝痛 (ジャンパー膝 オスグッド病)
本日の内容
 成長期の運動器について
 成長期の代表的な疾患
 成長期の診療背景
 部位別疾患
成長期の運動器の特性
骨端
成長期の運動器の特性
 発育・発達段階にある子供の骨は、
軟骨部分が多く、未完成な骨
 軟骨自身も脆弱で小さな外力で
障害を引き起こす
 関節の柔軟性が大きい
 筋肉・腱の柔軟性が大きい
 骨の成長に比べ、筋・腱の成長は緩やか
成長期特有のスポーツ障害
 骨端線損傷
 骨端部の裂離骨折
 骨端症
 循環障害による骨壊死
 疲労骨折
成長期特有のスポーツ傷害
 関節の柔軟性が大きい
関節捻挫は比較的少なく、あっても軽度ですむ
関節を構成している靱帯が骨より強度が
あるため、靱帯そのものが障害を受ける以前に
骨端線損傷や骨折をきたしてしまう
骨端線損傷
腓骨遠位骨端線損傷
剥離骨折 骨端症
骨の成長に比べ、筋・腱の成長は緩やか
骨に付着する筋・腱は相対的に緊張状態
骨端部の裂離骨折
下前腸骨棘裂離骨折
筋腱付着部の損傷
Osgood-Schlatter病
骨端部の剥離骨折
上腕骨内顆剥離骨折
上前腸骨棘裂離骨折
骨端症
Sever病
循環障害による骨壊死
 軟骨自身も脆弱で小さな外力で
障害を引き起こす
→ 骨幹部から血液が栄養されない
離断性骨軟骨炎
阻血性骨壊死 (Freiberg病)
循環障害による骨壊死
離断性骨軟骨炎
(外側型野球肘)
離断性骨軟骨炎
Freiberg病
疲労骨折
 発育・発達段階にある子供の骨は、
軟骨部分が多く、未完成な骨
運動に伴う骨への反復外力の結果、
疲労骨折(過労性骨障害)をきたしやすい
腰椎分離症
成長期における治療の特徴
 修復にかかる時間が成人より早い
仮骨の形成(レントゲンで確認できる)
幼児期 1週間
学童期 2週間
成人
3~4週間
 拘縮がおきにくい
学童期はあまりリハビリを行う必要がない
成長期のスポーツ傷害発生の背景
 子供の心とからだに関する知識不足
 非科学的スポーツ活動の実施
 勝敗への強いこだわり
 保護者による背部の圧力
発育期における運動の留意点
区分
体力面
ねらい
~6歳まで
主として基本的な動作の習得
運動がすきになる
小学校
主として巧みに動ける体作り
運動の楽しさや喜びが味わえる
中学校
主として動きを持続することが
できる体作り
運動が得意になる
高校
主として力強さとスピードのある
動きができる体作り
成長期のスポーツ活動の背景
 指導者のもとで活動する
 練習、試合は管理された受け身になりがち
 過密な試合のスケジュール
 体力の違う個々が同一のメニュー
成長期のスポーツ選手の心理
 痛くても指導者に言えない
 痛くてもチームメイトに練習を休むと言えない
 練習を休むとサボっているよう
 練習を休むとポジションが奪われてしまう
 病院に行くより部活が優先(部活>病院>授業)
常に不安感やストレス
受診しても...
 治療は注射と薬とシップと電気
 十分な説明がない
 ドクターストップを指示される
→ドクターショッピング
スポーツ許可がでるまで
症状が治るまで
理想とする診療とは
 予診、診察は原則本人のみで行う。
 診断はもちろん原因まで追究する。
 画像にあまり頼りすぎない。
 悪いところのみならず全身をチェックする。
 説明を保護者同伴で、本人に対して行う。
 説明、治療はできるかぎり教科書に基づいた内容で行う。
 できる限り練習を中断せず治療を行う。
同じ疾患でも治療法は一つとは限らない
 選手の背景を考慮
学年
チーム内でのポジション
大会予定
選手個人の目標
教科書に基づいた治療法の中で最短の期間で
治癒する方法をとる(手術を含め)
成長期のスポーツ傷害に対する治療の原則
 第二次性徴がおわるまで過度の筋力増強トレー
ニングは控える。筋力アップは全身運動のメ
ニューにて行う。
 柔軟性、ストレッチングは全年齢に対して十分
に行う。
 思春期の成長過程であることを大切にする。
手関節 手指
 橈骨遠位端骨折
 突き指
橈骨遠位端骨折
若木骨折
ギプス ギプスシーネ
不安定性が強い→ギプス
不安定性が少ない→ギプスシーネ
骨折部の異常可動性が消失したら除去
突き指
腰
 脊椎分離症
 椎間板ヘルニア
腰椎分離症
腰椎分離症
 原因
腰椎の過伸展による疲労骨折
 治療
亀裂型 4~6か月の硬性コルセット
スポーツ禁止
偽関節型 対症療法
10歳以下はすべり症に注意
膝
 オスグッド病
 靱帯損傷
前十字靱帯損傷
側副靱帯損傷
・
足関節
 足関節捻挫
 シィーバー病
 足関節内果疲労骨折
足関節捻挫
①
②
③
④
⑤
⑥
前距腓靱帯
踵腓靱帯
後距腓靱帯
骨間靱帯
距踵骨間靱帯
外側距踵靱帯
①と②が損傷を受けやすい
レントゲンストレス撮影
さらなる組織の損傷を引き起こす
足関節捻挫の治療
医療サイドとトレーナーサイドで意見が異なる
 3週間のギプス固定、手術
→2~3か月の復帰
 固定を行わず早期よりリコンディショニング
靱帯損傷時の関節固定のデメリット
 関節固定を行うと、プロテオグリカンが喪失し
て関節軟骨が萎縮し、滑膜由来の繊維脂肪性の
結合組織ができ関節軟骨に癒着する。
 靱帯が骨に付着している部位が弱くなると同時
に靱帯自身も断裂しやすくなる。
8~12週の固定でコラーゲンの回復に1年を要
する
できるだけ関節は固定しないほうが望ましい
足関節内果疲労骨折
10歳前後の男児に多い
明らかな原因がないのに
踵骨結節部に痛みを認める
アキレス腱の牽引が原因
予後はよい