集会で使用した資料 - 民族人権フォーラム

資料「ウイグル問題の概略」
1.ウイグルの歴史
ウイグル人はトルコ人と同じテュルク系民族の一つで、そ
の起源はモンゴル高原の北〜バイカル湖の南で、紀元前3世
紀頃にはその存在が確認されています。その後、徐々に西方
に勢力域を拡大していき、3世紀頃には現在ウイグルと呼ば
れる東トルキスタン地域に達します。日本ではシルクロード
の中継地として有名な場所です。漢末のいわゆる三国時代に
勅勒(ちょくろく)と言われた勢力はテュルクの音を漢字化し
たものです。漢代や唐代に漢人勢力の部分的で一時的な進入
もありますが、現地の民族による自治は保たれていました。
751年に唐がイスラム王朝であるアッバース朝に惨敗すると、引き続き起きた内乱の影響もあり漢人勢力は現在のウ
イグル地域も含む中央アジアから駆逐されます。以後、テュルク系民族のイスラム化が大きく進み、またテュルク系民
族も更に西へ勢力を拡大し 11 世紀末にはトルコ帝国が成立します。地域として東トルキスタンはモンゴル人の元や、満
洲人の清などの勢力下に置かれたこともありますが、やはりウイグル人を始めとする地域に住む民族の自治は保たれて
いました。ですが、清代の 1864〜1877 年に、東トルキスタンでテュルク系民族による武装蜂起と独立がおき、清の再
侵攻を受けたことで、清朝の直轄地として新疆省が 1884 年に成立し、自治権も喪失してしまいました。新疆とは新しく
手に入れた土地という意味です。1911 年に清朝が辛亥革命で崩壊すると、漢人勢力である中華民国は、清朝の旧領を全
て併呑しようと企みます。清朝藩部としての自治政権があったチベットとモンゴルは 1913 年すかさず相互承認条約を結
び、この野望に抵抗を試みますが、自治政権を喪失していたウイグルは対応が遅れてしまいます。1933 年と 1944 年に
漢人勢力に抵抗し、それぞれ東トルキスタン共和国を樹立させますが、中国やソ連の策謀により短命政権に終わってい
ます。1955 年には中華人民共和国の新疆ウイグル自治区として編入されてしまいます。独立を守ろうとしたチベットも
1950 年から中国の侵略を受け、民族の 20%が虐殺されるという悲劇が起きています。モンゴルも南モンゴルが 1947 年
に中国に編入され、今やモンゴルとは名ばかりで、この地域の 8 割以上は漢人で占められています。
2.中国侵略後のウイグル
さて、中国に侵略された後のウイグルも悲惨な状況に陥ります。
第二次世界大戦後、世界は核兵器開発競争に突入します。米ソ英
仏の無謀な核実験の結果、実験場周囲は多大な被害が発生しました。
この為、米ソは 1963 年に大気圏・水中・宇宙空間での核実験を中
止する条約を締結しました。中国が侵略したウイグルで地表での核
実験を開始したのは 1964 年です。風が北京に向かず、ウイグルの
街々に向かっている時を狙って、たびたび核実験を行い大量の汚染
物質がウイグル人たちを襲いました。その健康被害は隣国カザフス
タンにも及ぶ程でした。中国政府は、核実験による健康被害を認めず、住民に何の補償もしていません。実際にウイグ
ル人に核実験によると思われる癌が急増しており、この事実を公にしたウイグル人医師は亡命を余儀なくされています。
しかし、中国はさらに残酷な事をこの地で行っています。民族独自の文化、風習、言語に次々制限を加え、ウイグル
人という民族を抹消しにかかっているのです。抵抗すればよくて逮捕、悪ければ殺されてしまいます。この様な現状に
疑問を呈しただけの学者すら終身刑を言い渡されています。教育における主たる言語を中国語にして、ウイグル語の衰
退を図っています。イスラム教の礼拝場であるモスクへの立ち入りにも厳しい制限があり、男性がヒゲを生やしたり、
女性がスカーフを被るのにも取り締まりがあります。中国へ編入された時の漢人人口は地域の 5%ほどでしたが、大量の
移民でいまや約半分が漢人となっています。経済的にもこれらの移民が古くからの住民を搾取しており、植民地支配そ
のものです。1997 年 2 月 5 日グルジャ市で、ウイグルの若者の伝統的な集会であるマシュラップが禁止された事に抗議
したウイグル人たち数百名が殺害・処刑されました。2009 年には民族憎悪に狂った漢人群衆がウイグル人に集団リンチ
を加え惨殺する事件が起きますが、被害者がウイグル人で加害者が漢人であったので、多くは逮捕すらされませんでし
た。同年 7 月 5 日ウルムチで、これに抗議した平和的なデモに中国当局が銃撃を開始、激しい混乱状態に発展し、およ
そ 3000 名のウイグル人が虐殺されました。2014 年 7 月にも、ヤルカンドで礼拝中の女性と子供の集団を、違法な宗教
行為があったとして、中国官憲が皆殺しにしました。これに怒り抗議した地域住民数千名が、中国により殺害される事
件がおきています。このような事件が、規模の小さいものまで含めると毎日の様に起きているのです。
こういった事から、亡命を図るウイグル人は数多くいますが、逃亡先の国にも中国は圧力を加えて強制送還させたり、
劣悪な収容環境に置かせたりしているのです。
ウイグルを助けるために、皆様のご協力をお願いします。 ( 民族人権フォーラム http://mjf.asia/ )