中国における土壌環境の現状

中国における土壌環境の現状
株式会社住化分析センター
株式会社住化分析センター(本社:大阪市、代表取締役社長:金岡昌治)は、中国にお
いて土壌環境事業を展開している。
これまで中国の土壌汚染の実態を知るための政府公表資料は数少なかったが、中国で初
めて「全国土壌汚染状況調査公報」(以下「公報」)が 2014 年 4 月に発表され、国土面積
の 16.1%が基準超過という深刻な土壌汚染の実態が明らかとなった。
「公報」は、2005 年 4 月∼2013 年 12 月にかけて、国土面積の2/3(約 630 万㎢)を
対象に土壌汚染調査が行われ、調査結果によると汚染物質の種類では、無機物(カドミウ
ム 7.0%、ニッケル 4.8%、砒素 2.7%、銅 2.1%、水銀 1.6%、鉛 1.5%、クロム 1.1%、亜鉛
0.9%)
汚染が基準超過地点全体の 82.8%を占めており、
次いで有機物
(DDT1.9%、
PAHs1.4%、
DHC0.5%)汚染となっている。土地用途別では、耕地が 19.4%と最も多い割合を占めてお
り、都市部の重汚染企業用地の典型としては、非鉄金属精錬、皮なめし、製紙、石油、コ
ークス、化学繊維・ゴム、化学工業、医薬、鉱物・金属加工、電力等の業種が上げられ、
汚染地点数比率が 36.3%となっている。
「公報」発表後、一部の環境専門家の間では「調査地点の設定密度が粗すぎる」「調査
方法が不明確である」「全ての結果を公表していない」という意見もある。中国での土地
所有権は、国家にあるため、政府主導で行われる土壌汚染調査及びその結果は、民間レベ
ルにおいては未だ不透明な状況であることは否めない。
現段階、中国においては、日本の「土壌汚染対策法」に相当する土壌環境に特化した法
律はなく、中国政府は、土壌汚染に対して、これまで各種ガイドライン、通知等により対
処し、法整備やルール策定を急ピッチで進めている。法整備に先立ち、全国各地で土壌汚
染対策に関する試行モデル事業も実施されている。
試行モデル事業の一つ、広西自治区環江県の「広西環江県大環江流域土壌重金属汚染治
理工程プロジェクト」は、重金属汚染対策向けの特別資金を活用し、2010 年から開始され
た大規模な試行モデル事業である。当該地域は、長年の鉱山採掘・加工に起因した農地の
重金属汚染があり、対策が必要な面積は約 853 万㎡、当初の計画工期は 2 年間を予定して
いた。しかしながら、大規模な土壌対策の経験がない、プロジェクトに関係するファクタ
ーが多い、技術的ハードルが高い、行政側の基準(対策目標値)が設定できない等の理由
もあり、検収に長い年月を費やし、2015 年にようやく完了した。
また、試行モデル事業は、政府による公共投資を基本としているが、政府・民間資本協
力 Public‐Private‐Partnership(PPP)モデルの土壌汚染対策事業も数多く実施してい
る。湖南省岳塘区では、2014 年に湖南省岳塘区政府と民間企業が合資会社を設立し、重金
属汚染対策プロジェクトへの投資を行い、自ら土壌汚染対策工事も行っている。
このような背景の中、中国政府は、土壌環境に対する政策として本年 5 月末に土壌汚染
防止行動計画(略称「土十条」)を発表した。「土十条」は、中国全土における土壌汚染
対策の行動計画であり、法律ではないが「土十条」において立法が謳われており、土壌汚
染関連法の制定は時間の問題である。
環境保全よりも経済成長を優先させ、世界の工場から世界の市場へ変わりつつある中国
において、負のレガシーの解消に向けた取り組みが始まっている。
(1434 文字)
土壌汚染が多い地域
(全国土壌汚染状況調査公報)
東北重工業基地
(吉林省、遼寧省、黒龍江省)
重金属汚染が
比較的多い地域
長江デルタ経済圏
(上海市、江蘇省、浙江省)
珠江デルタ経済圏
(広東省)
西南地区
中南地区
(引用:中華人民共和国 環境保護部,国土資源部「全国土壌汚染状況調査公報」に加筆)
(写真:ボーリングマシンでの土壌汚染状況調査)
■問合せ先■
株式会社住化分析センター
環境事業部(地盤環境グループ)
URL:http://www.scas.co.jp/
[東京]東京都文京区本郷 3 丁目 22-5
TEL : 03-5689-1213/FAX:03-5689-1221
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