「生徒を生かし、心を鍛える部活動経営について」 ふじみ野市立福岡

「生徒を生かし、心を鍛える部活動経営について」
ふじみ野市立福岡中学校
篠原 一浩
1 主題設定の理由
部活動は学級とは異なり、同じ集団で2年半という所属機関に属することになる。教員にとって
も学年を超えて同じ集団を見続けられる場であり、また、生徒の成長に長期間関わることができる
場である。そこで、部活動という観点から、生徒の「心」を育て、学校生活に生かす指導方法、経
営方法を考えていく。
体
本校の学校教育目標は「自ら生きる力を培う生徒」である。これは「徳・智
・体」の3つの柱で成り立っている目標であるが、そこには右のような図も重
智
ねて成り立っていると考えている。
「徳・・・思いやりのある生徒」という部分
徳
がすべての土台であることから、高い興味、関心をもって入部した部活動では
心を鍛える活動を行う絶好の機会であると考え、本研究主題を設定した。
本校野球部の活動目標は、上記の「徳・智・体」を達成していく過程で、す
学校教育目標
べてに生徒の心の在り方が関わっていると考え、
「挨拶・礼儀・忍耐」としている。野球の技術向上
よりも先の人生の中で精神面での強さは様々な部分で関わってくるため、そこに重きをおいて活動
を行っている。1年間という期間の中での目標については生徒自身が目標を決めて活動を行ってい
るが、教員が学校生活の中でも生かすことのできる「心」を育て、意図のある計画を立て、生徒の
目標と共に、
「心を鍛える」活動を取り入れている。
以下、研究内容と実践、成果、今後の課題について述べる。
2 研究内容と実践
「良い集団」とは、どのようなものか明確な答えはなく、そのつくり方にマニュアルはないが、
少なくとも生徒にとっての「心の育成」は大きく関わっているように感じる。指導者からの言葉か
けや指導方法1つで、生徒の心の成長度合いは大きく変化し、取り組む姿勢や行動に影響を与える
ことになる。これまでに練習内容等、様々な取り組みを行ってきたが、生徒の様子に違いが見られ
るものばかりとは言えなかった。そこで成果の見られた活動を以下に示す。
(1)挨拶
生徒から自発的な挨拶ができることが、思いやりを育てる。強制
的な挨拶に心の成長はない。単純に「挨拶をしろ」と指導を行って
いくと、子どもの意識は怒られるから挨拶をするといった意識にな
りがちであり、挨拶をする理由が明確ではない。
そこで、
「自分の好きなことに生かせる」とすればその意識も変わってくることがわかった。
1年生として入部してきた当初、本校野球部では挨拶の練習から行っていく。そこで上級生が行
う挨拶をまず真似てみるが、何人かはなんとなく元気のよい挨拶をするが、全員がなかなかできる
ものではない。なぜ部活動において挨拶が大事なのか、また、上級生が何を意識して行っているか
を知らないからである。しかし、その理由を上級生や教員から知ることで「意識をせずに気持ちの
良い挨拶」が1ヵ月ほどでできるようになった。
本校野球部の挨拶の仕方(ルール)とその理由を簡単ではあるが、以下にまとめた。
①声量は自分の体調に合わせ、
感謝や想いの度合いで調節する
⇒挨拶を行う相手へ「自分」を
表現する機会である
②礼は場合によって秒数制限
(1秒、3秒、5秒)
③目線は相手の目を、いない場
合は斜め45°あたりを見る
⇒チームスポーツにおける体内
⇒自分の行為や行動に自信をも
時計を全員で合わせるため行う
つためである
生徒を生かすという意味で強制ではなく、その理由をもう一度問う程度に指導も留めている。それ
が、結果的には、地域や保護者、先生方も含め気持ちよく挨拶ができる集団として成長をしている
ところである。
(2)朝の奉仕活動
週1回程度、学校のゴミ拾いや落ち葉掃きを朝練習の時間を使用
し行っている。この活動は「心を鍛える」
「学校や地域に貢献する」
「運を身につける」という3つの視点を考え行っているものである。この活動においても(1)と
同様に、できていないから指導するわけではなく、上の3つの視点
から自らを鍛え、自主的に行うことが目的である。なぜ奉仕活動を行っているのか、生徒自身にも
理解させた上で行っていくことが結果的に上記の3つの視点、それぞれの成長へつながっていくと
考えている。
(3)学校行事への積極的な参加
本校では、体育祭、合唱祭に加え、有志ソーラン節を行事として行う機会が数回ある。目的は「心
身を鍛える」
「学校へ貢献し、場を盛り上げる」という2つの視点で参加している。部活動という枠
を超え、様々な部活動に属する仲間とともに短い期間で何かを作り上げる機会は少ない。野球がで
きる環境にあることへの感謝も含め、積極的な参加を促し活動にあたっている。また、有志で行う
ものに参加できない生徒もいるため、部活動でチームに貢献できるよう同じ時間を使用し、部室の
清掃やトレーニングで自分の成長に努めている。
(4)日々の活動内容
技術の向上に加え、日々の練習へ目的意識を持たせることが大切である。どの練習にも意図があ
り教員が伝え、その意図を生徒が理解し行っていけるよう活動内容や言葉かけを考えていく。授業
と同じように日々の中で「疑問を持ち、考え、理解し、納得する」といった活動づくりを行った。
年度初めには1人1人の目標を部室へ張り出し、常に自他共に見える形をとり、練習試合では常に
テーマの設定を行い、常に何か1つの目的をもって試合に臨み、成長や達成を実感させる。また、
敗戦内容も張り出しを行い、チームとしての課題を常に見据える。道具の整理整頓を自ら律する意
味でも、自分たちで考えたペナルティを課している。
3 研究の成果
成果がでてきたと感じ取れる取組み共通している点は、何をするにも、その意図や何を意識する
のかを、まず生徒に伝え、生徒と教員が共に納得のいく活動を考え、実施していくことである。本
人の意思で「心」を鍛えていくことで、
「体」も同時に鍛えられていることは年度当初からの試合結
果でも変化が見られた。最近では勝率が上がってきている。結果として見える部分だけでは本研究
の成果を述べることはできないが、練習メニューや量を自分たちで決める機会を与えると、進んで
練習を行う姿が見られ、特に長期休みにおいては、休みことよりも練習を行いたいという気持ちが
強く表れるようになった。生徒自身が決めた今年度の目標は「楽しく勝つ野球」である。ある生徒
に聞いたところ「勝つことよりも楽しく行うことが1番ですよ」と答えていた。もちろん勝ちたい
気持ちもある。厳しい練習を行っていく場面もあるが、いかに意欲的に楽しく過ごすかを考え、乗
り越えていくことを、
生徒自身が理解し、
「心身」
共に成長へ繋げているように感じることができた。
4 今後の課題
・挨拶等、継続して行ってきているが、個人で見れば意識の薄れを感じる部分もあるため、定期
的に言葉かけを行っていく必要がある。
・教師側からの指示・指導が多いため、生徒自身で考え行動する機会を多く設定していく。
・学校行事への参加等、いかにして全員の参加を導き、自身の成長へつながる良い機会を与えて
いくかをさらに模索していく。
1学年数学の少人数指導について
ふじみ野市立福岡中学校
教諭
御菩薩池 晶
1 主題設定の理由
中学1年生の数学少人数指導を進める中で、本校の生徒は数学に対して、とても前向きで、問題
解決に粘り強く積極的に取り組んでいる。しかしその中でも数学に対して苦手意識を持っている生
徒が約60%もいるのが現状である。そのため苦手意識から諦めてしまう生徒も少なくない。
そこで、苦手意識を持った生徒には、少人数という小さな集団で細かな指導を行うことで、問題
解決できたときの楽しさをより多くの生徒に味わわせるようにする。また、生徒同士の学び合いの
精神を育成するとともに、問題を解けた生徒が、他の生徒に教えることで、生徒自身の理解をより
深め活躍の場を設ける。そして、問題が解ける楽しさを味わうことで、より多くの生徒が数学への
苦手意識を克服できるような授業展開を工夫する必要があると考えた。そこで「1学年数学の少人
数指導について」を研究課題にした。
研究の仮説
① 少人数指導を行い、生徒の問題解決ができたときの楽しさを味わわせることで、生徒の学習
意欲を高め、苦手克服を図れるのではないか。
2 研究内容と実践
(1)均等なグループによる少人数授業
均等な少人数に分けるため特別な方法はとらず、男女ともに番号順に分ける。均等割りのグル
ープを編成することで次の効果を期待する。
① 授業のなかで話し合い、学び合いの機会を増やすことができる。
② 苦手な生徒への支援が心配されるが、丸つけ法による机間指導を重視することで、苦手な
生徒にも十分な支援ができると考える。
(2)丸つけ法を行う
生徒数が通常授業より少ないので、一人一人を十分に見ることが出来ると考え、丸つけをしな
がら机間指導を行う丸つけ法に取り組んだ。学級全体だとどうしても時間がかかってしまってい
た丸つけに時間がかからず、全員の丸つけをできている。つまずいている生徒には、早い段階で
アドバイスをすることができ積極的に問題と向き合うことができた。
(3)教員間の連携
1学年5学級の数学は3人の教員で指導している。そのため、進度のずれ、教え方のずれが起
こらないように、頻繁に教科部会を開き意思統一を図っている。またそれぞれの教員が使ってい
るプリントを共有し生徒全員が同じ問題に取り組み、同じような指導を受けられる環境を作って
いる。
数学の裏では、国語の授業も少人数で行っている。そのため国語科の教員とも連携を図り、授
業内の状況や支援の必要な生徒についてなど細かい情報交換を行っている。
(4)話し合い活動の取り入れやすさ
少人数の学級内でグループを作り、そのグループ内で問題の解き方についての話し合い活動や
発表がしやすいため、他の生徒の考えや発表を聞き、話し合う場面を多く提供することで、自信
に繋がり、学習意欲の向上を図ることができる。
(5)自己評価カードの実施
生徒が意欲的に授業に取り組めるように、1時間の中で、何を学び、理解できたかどうかを自
己評価し達成度、そして課題が明確に分かるようにした。
3 研究の成果
(1)均等割りの少人数を行うことで、各クラス同じ内容、同じ進度で授業を展開することができ
た。
(2)丸つけ法を行うことで、細かく机間指導を行えるようになり、つまずいている生徒に指導す
る時間を捻出することができた。また得意な生徒の学習意欲を高めることもでき、より難しい
問題に挑戦するきっかけになった。
(3)教科部会等で細かな連携をとることで、授業の内容、進度等の統一を図ることができた。ま
た他教科との教員と連携を図ることで、学級の実態を知り、授業を円滑に進めることができた。
(4)授業の中での話し合い活動を増やすことで、話す、聞くといった言語活動の向上を図ること
ができた。また自分の考えだけでなく、仲間の考えを聞くことで、1つの課題に対し、いろい
ろな視点で考えることができた。
(5)自己評価シートを活用することで、苦手な部分を明確にすることができ、授業内での復習を
円滑に行うことができた。また挙手、発表の欄を作ることで、生徒の学習意欲の向上にも繋が
った。
生徒アンケートから
少人数の方が「先生に質問しやすい」
「発表しやすい」
「挙手したら当ててくれる」
「○をつけてく
れる」などの学習意欲が高まっている意見が上がっている。
4 今後の課題
丸付け法用いた場合、つまずいている生徒へのアドバイスに時間がかかってしまいがちなので、
ヒントを板書し自分で解く力を磨けるよう努力していきたい。また、アンケートでも図形に対して
の苦手意識が強い生徒が多いので、模型や ICT を使って実際に活動をさせて、図形の種類、図形の
計算を身に着けていきたい。
家庭科における基礎的・基本的な知識・技術の定着と実践力を身につける授業づくり
ふじみ野市福岡中学校
教諭
青木 ななこ
1 主題設定の理由
家庭科は,生活の基本である衣食住について学ぶ教科であり,学んだ知識や技術を生活の中で
実践することを目標として掲げている。その「実践力の向上」は学習指導要領や埼玉県において
も重要視されている課題であり,今回の研究にあたって,本校の生徒の「実践力」をアンケート
により調査した。
家庭分野の目標
「実践的・体験的な学習活動を通して、生活の自立に必要な基礎的・基本的な知識及び技術を習得するとと
もに、家庭の機能について理解を深め、これからの生活を展望して、課題をもって生活をよりよくしようと
する能力と態度を育てる」
「中学校学習指導要領解説 技術・家庭編」
本年度の努力点 「○習得した基礎的・基本的な知識及び技術を生活で活用する力の育成を図る」
「平成26年度 指導の重点・努力点」 埼玉県教育委員会
本校の生徒は,洗濯機の使い方がわからない生徒 34.4%,まつり縫いのやり方がわからない生
徒 24.6%,ボタンがとれても自分で縫い付けない生徒 78.3%と,知識・技術の定着が不十分であ
ることと,学んだことを実践できている生徒が少ないことがわかった。何でも買えば手に入る時
代を反映しているかのような結果となった。実践しない理由としては,➊知識・技術が定着して
いない➋実践する機会がない➌実践する意欲がないことの3つが挙げられる。これらの理由は家
庭科の授業の工夫により改善できると考え,上記のテーマを設定した。また,家庭科は年間で 70
時間(3 年生は 35 時間)という少ない時数のため,毎時間の授業や家庭と連携して実践の機会を持
たせることが必要であると考えられる。そこで,➀知識・技術の定着を図る➁実践する機会をつ
くる➂実践する意欲を向上させる授業に重点を置き,以下のような研究・実践をした。
2 研究内容と実践
B 食生活と自立
(1)第2学年「食生活と自立」における実践
①生徒に関連のある課題の設定 <意欲の向上><知識・技術の定着>
生活の自立に対して消極的な生徒には,まず課題意識を持たせることが必要であると考え
た。そこで毎時間の学習課題によって生徒の意欲を喚起させるようにした。生徒の身近にあ
るものを題材にし,
「できるようになりたい」
「どうすればいいのだろう?」と感じるような
課題を設定した。
「自分の食生活を見直そう」
「中学生の成長と必要な栄養素」
「1 日にどのく
らい食べたら良いのだろう」
「体育祭のお弁当を考えよう」
「魚の臭みを出さずに調理するに
は」といった生活の課題を明確にし,その解決に向けて自らが考えられるような学習活動を
多く取り入れた。そして終業時には必ず課題を振り返ることで学習内容の定着を図った。
②視覚教材を用い,実生活での応用ができるようにする<知識・技術の定着>
生活経験が少ない子どもたちが多いため,授業でも実物や写真等の視覚教材を用いること
で
授業と生活が繋がることを実感させ、知識や実践力の定着を図った。
食品群の分類と実物大食品カード
③実験・実習の実施<知識・技術の定着>
実験・実習のような体験的な学習活動は効果的であるが,
時間がかかることが難点である。
そこで,教室で 1 時間で行うことができる学習を取り入れた。食生活の分野では,食品添加
物が多く使用されている食品,少ない食品の食べ比べをした。加工食品に必ずと言っていい
ほど含まれている保存料や酸化防止剤,発色剤等の食品添加物は目に見えないため軽視して
しまう傾向にあるが,安全性の配慮等の面にも意識を向けるため,実物に触れる機会をつく
った。
(2)家庭での実践 <知識・技術の定着><実践する機会をつくる>
➀B 食生活と自立 「包丁カード」
2 週間に 1 回提出
➁B 食生活と自立 「愛情レストラン」春季休暇中の課題
➂C 衣生活と自立 「洗濯レポート」 夏季休暇中の課題
授業で学んだことを家庭で実践することは家庭科の目指すところであり,まさに「実践力の
定着」である。しかし,生徒が家庭で実践しない理由として,
「きっかけがない」ということ
も明らかになった。本来ならば,自らが率先して課題を見つけ,解決することが「実践力」
であるが,その段階に至っていないため,家庭での実践とし,全ての生徒に実践する機会を
与え,創意・工夫,技能の観点で評価をした。
3 研究の成果
知識の定着の面では,定期試験で向上が見られた。実際に自分で考えたこと,話し合ったこと
に関する問題は正答率が高く,知識の定着に繋がっていた。また,授業プリント等の感想から,
「家でやってみたら褒められた」
「何回も練習すると上手に切れるようになった」
,保護者からは
「普段手伝いをしないのでこれを機に一緒にやってほしい」等の意見もあり,今回の研究・実践
を継続していくことで家庭での実践の機会も増え,実践力の定着につながると考えられる。そし
て「実践力」とは,単に実験・体験することだけではなく,自分で考えたり,仲間と話し合い,
課題を解決していくことで培われる力であると改めて感じた。これからの予定としては,定期的
な調査,計画,評価の流れをつくり,常に生徒の意識や生活の変容を確認し,実態に即した授業
づくりに努めていく。
4 今後の課題
課題は三つ挙げられる。一つ目は、基礎的・基本的な知識及び技術の定着に向けて,小テスト
や家庭での課題などを利用して繰り返し学習する機会をつくることが必要である。家庭科は 3 年
間を通して学習するため,既習事項の復習を定期的に行うべきであると考える。二つ目は、話し
合い活動の充実である。本校の本年度の重点・努力点には,
「考える場面があり、話し合いができ
る授業」とある。自分の意見を発表するだけではなく,ジグソー学習法等を取り入れ,個人だけ
でなく,集団としての課題解決を目指せる態度を育成したい。三つ目は,4 年前の東日本大震災
を受け,防災に向けての関心が高まる中,家庭科で考えさせるべき問題は多くなったと感じてい
る。防災の視点をもった住居や家具の配置,布を用いたものの製作,災害時の幼児や高齢者との
かかわり等は家庭科の学習で網羅できる課題である。
子どもが 3 年間の家庭科の学習を終えた後,
自立できるような力をつけさせる,その責任と理想を常にもち,指導していくつもりである。そ
して,家庭科担当は学校に一人しかいないため,他校の先生方と一緒に勉強させていただく機会
を大切にし,今後も教科指導の資質向上に努めていきたい。
「社会科の基礎的・基本的な学力の定着を目指して」
ふじみ野市立福岡中学校
林 遼平
1 主題設定の理由
平成26年度指導の重点・努力点によれば、
「社会的事象に関する基礎的・基本的な知識、
概念や技能の確実な定着と、それらを活用して考え、説明したり、論述したりする授業の展
開に努める」ことが示されている。社会科を苦手としている生徒にとっては、
「できるように
なった」
「分かった」と実感させることが重要であり、それが苦手意識の克服にもつながると
考える。以上の理由から、本主題を設定した。
2 研究内容と実践
(1)口頭復習問題の実践
授業の冒頭に、2回に1回の頻度で実践した。教師が口頭で問題を出し、生徒は自
己評価シートの裏面に解答を記入するという方法である。ノート類は見ても構わない。
社会科に苦手意識が強い生徒は、問題慣れしていない場合が多いので、授業時間内に
その時間を確保しようという目的で行った。
(2)自己評価シートの導入
毎授業で授業の疑問点や感想などを書かせている。分からないところについては質
問に来るように言っても、次の授業準備などもあり、時間的に余裕がない生徒が多い
からである。毎回コメントを返し、質問事項についてはメモ用紙をつけて返却するな
どして対応している。
(3)ノート指導
授業では毎回プリントを配り、ノートの左側に貼らせる。板書は右側に取る。見開
き1ページで1回分の単元という形になる。ノートが余っても次の単元の板書は、新
しいページに取らせ、見やすいノートとなるように徹底させている。また、余白に教
師の解説を書き込むなど、ノートのまとめ方が上手い生徒の方法を紹介し、各自取り
入れさせるように助言した。板書を移す際も、書き出しの位置を揃えさせること、余
白をとらせることを徹底することにより、見やすいノートが作れるようになる。
(4)グラフ・主題図・分布図等の読み取り方の指導
社会に苦手意識が強い生徒の中に、グラフや主題図の読み取りが苦手という場合が
ある。どこをどう見ればよいかが分かっていないので、スモールステップで繰り返し
教えることが重要である。
「タイトルを確認すること」
「グラフなら縦軸と横軸が何を
表しているか、主題図なら凡例を確認すること」
「細かい点は考えず、大まかに傾向を
読み取ること」の3点を逐一確認することで、グラフや主題図の読み取り方が分かる
ようになってきた。
(5)記述の仕方
各単元のまとめ等で、キーワードを使用して、課題に対する結論を記述させた。記
述慣れしていない生徒には、書き出しの文は教師が設定し、後に続く文を考えさせる
方法が有効だった。
例)課題 奈良時代の人々はどのような暮らしをしていたか?
結論 奈良時代の人々の生活は、
(苦しかった)
なぜなら、 (税の負担が大きかった) から。
。
(6)地図帳の活用
地歴問わず、地図帳は使用している。地名が出てきたら、地図帳を使って場所を確
認させる。時にはノートに略地図を書かせ、地名等を書き込ませることも行った。国
名や地名は、授業で一度扱っただけでは定着しないので、繰り返し地図で確認させる
ことが重要である。
(7)討論
歴史分野において、
「聖徳太子の政策で一番重要なものは何か」というテーマで討
論を試みた。十七条の憲法や遣隋使派遣など、6つの政策に絞り、一つ選択させ、理
由を考えさせた。意見をたたかわせることにより、資料集や教科書などを隅々まで見
て反論するようになり、それぞれの政策についての理解が深まるものになった。
3 研究の成果
口頭復習は多くの生徒から回数を増やしてほしいという希望の声が上がった。繰り返し
行うことにより、知識の定着につながり自信がつくからであると思われる。また、グラフ
の読み取り方や記述の仕方については、何に注目させればいいのかを具体的に解説するこ
と、また回数をこなすことによって、読み取れるようになった生徒が増えた。ノートの書
き方などもなるべく具体的な方法を教えることにより、生徒がそれを取り入れることが出
来るようになった。討論型の授業は、地歴どちらでも活用することが可能であり、今後も
取り入れる場面を増やしていきたい。
4 今後の課題
口頭復習問題に関しては、授業の進度とのバランスを見つつ、より回数を増やしていく
必要がある。記述については、1 学期と 2 学期の中間・期末試験の記述問題の平均正答率
を分析した結果、1学期の中間試験から 69.6%、74.1%、67.6%、56.8%と次第に減少し
てしまっている実情がある。単語の知識だけでなく、資料や既存の知識を活用し、自分の
言葉でまとめる力を育んでいくことが求められる。